重症の化学物質過敏症の女性早苗さんと、その命をつなぎとめた木村秋則さんの育てた林檎の話を3年半にわたってカメラを回し続けた渾身の作品「いのちの林檎」の公開日が2013年7月13日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショーと決定いたしました。

阿部サダヲ・菅野美穂主演で話題を呼んでいる「奇跡のリンゴ」のモデルである木村秋則さんの無農薬林檎に助けられた女性との感動的な交流を描きながら、いかに今の私たちの生活が危険な化学物質に汚されているかを伝える問題作でもあります。

いのちの林檎を何故作ったか

<監督:藤澤勇夫>

日本人は、今回の震災でやっと放射能の恐ろしさに気付きました。
しかし身近な化学物質の怖さにまだ気付いていません。
原発からの放射能を逃れ環境難民となった人達同様、映画の主人公の早苗さんも化学物質から逃れて環境難民となって逃げまくります。
その様子は、化学物質との戦争のようだと僕は感じました。

早苗さんに初めて会ったのは2007年の1月でした。横浜の大きなショッピングモールの7階の駐車場。海に面した吹きさらしで空気の良さそうな所でした。会って2分もしないうちに、早苗さんが急にうずくまってしまったのです。「キーキーィっ!」という鋭い悲鳴が聴こえるので鳥が迷い込んで来たのかと思ってあたりを見回しました。
まさか早苗さんの声とは気付きませんでした。早苗さんの苦しむ姿を見て「こんな事がホントにあってもいいのだろうか」と胸に痛みが走りました。化学物質過敏症の恐ろしさを感じ、こんなことが起こってはいけない、こんな恐ろしい現実を皆に知ってほしいという気持ちが映画を作らせたのだと思います。
早苗さんにとって一分一秒が化学物質との闘いです。その闘いとともに生きて、どんなに辛くても<私は生きるんだ>という早苗さんの明るさを描きたいと思いました。
こんな怖い映画はない。こんな美しい映画もない。
僕はそんな映画を作りたかった。

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執筆者

Yasuhiro Togawa