独特な世界観の作品を作り続ける究極の映画監督、デイヴィッド・クローネンバーグ監督による最新作『コズモポリス』が、 4/ /13(土)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館他にて全国順次ロードショーとなります。

本作は、現代アメリカ文学最大の巨匠、ドン・デリーロによる同名小説を僅か6 日間で脚本化し、2012 年カンヌ国際映画祭コンペティション部門に正式出品され絶賛を浴びた、NY を舞台に資本主義社会の終焉を黙示録的に描く、極上のサスペンススリラー。散文詩のような鮮烈な語り口で、ロバート・パティンソンが演じる一人の男が生きる24 時間をリアルなダイアローグで紡ぎながら、大都市の虚無感を映し出していく。
本日4 月5 日は「ヘアカットの日」。由来は明治5 年(1872 年)の今日、東京府が女子の断髪禁止令を出したことに遡る。明治維新以降、文明開化の一環で政府が男性にちょんまげからざんぎり頭にするのを推奨したことを受け、断髪をする女性が続出したことから、それを禁じられたことに女性たちが反発して今日を「ヘアカットの日」としたのがきっかけだ。

それにちなんで、本作『コズモポリス』で劇中パティンソンの斬新なヘアスタイル画像を解禁する。大統領のマンハッタン訪問に合わせて沸き起こったデモと大渋滞で街は大混乱に陥り、彼が演じるエリック・パッカーがオフィス代わりにするリムジンは遅々として進まない。しかし、そんなことなど我関せずのパッカーは、馴染みの理髪店に髪を切りに行くことで頭が一杯。すっかり暗くなった頃、ようやくそこにたどり着いたパッカーは、話好きの主人と昔話に花を咲かせながら髪を切ってもらう。しかし、パッカーの警護主任がいないことに気付くと主人の態度は一変。なぜかとんでもない勢いで髪にハサミを入れ始め、もはや整えようのない、頭皮が見えそうなほどの斬新な髪型になってしまう。自分を狙う暗殺者の影に怯え、散髪が終わらないまま、拳銃を手に外へと飛び出し、物語はクライマックスに向けて一気に加速していく。

金融業界で成功を収め、資本主義の申し子とされながらも、虚無感に囚われ生きる実感を持てずにいるパッカーだが、劇中4 度も“髪を切りたい”という内容の台詞が出てくるほど、整髪への異常な執着を見せている。
実際、高倉健が毎日同じ床屋で髪を切っているのは有名な話で、韓国映画『大統領の理髪師』では主人公が大統領府理髪師として日々官邸に通い、大統領の髪を切っていた。一方、ネイルに足繁く通う女性も多かったりと、自分の一部を頻繁に整えたいという願望や、足繁く通える場所や出会える人を持つことは、ステータスやファッションの一言では片付けられない、“人生の一部”と言えるのかもしれない。『コズモポリス』でクローネンバーグはそのシーンに何を込めようとしたのか、映画館でぜひ確かめて欲しい。

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執筆者

Yasuhiro Togawa