名優ウォーレン・オーツ『ガルシアの首』× 鬼才モンテ・ヘルマン『断絶』
闇に葬られた幻の傑作が、
製作39 年目にして35mm ニュープリント日本初公開。
スクリーンに叩きつけられた負け犬たちの意地が、今ここを荒野へと変える!!

原作・脚本は、ジム・トンプスン、デイヴィッド・グーディス、ライオネル・ホワイトらと並んでカルト的な人気を誇る、奇妙な味わいのクライム・ノヴェルを得意としたパルプ作家チャールズ・ウィルフォード。
 低予算映画の帝王ロジャー・コーマンが、“闘鶏”という斬新なテーマに観客が飛びつき大ヒットするものと確信して製作したのが本作。『断絶』(71)の興行が惨敗に終わり、ハリウッドから干されていたモンテ・ヘルマン監督に、復活のチャンスを与えたのだった。その結果、映画で描かれることはめったにない闘鶏の世界を背景とし、ヘルマンの盟友ウォーレン・オーツ演じる一風変わった男を主人公とする、他に類を見ないロードムーヴィーができあがったが、結果はまたもや興行的大惨敗。本作は、コーマン製作作品でたった2 本しかない赤字作品のうちの1本となってしまった。
 コーマンは製作費を回収するべく、別作品からヌード場面とカーチェイス場面を入れて再編集、タイトルも「BORN TO KILL」、「WILD DRIFTER」など次々と変更され、しまいにはポスターに描かれたウォーレン・オーツが斧を振りかざすことになる(そんな場面は存在しないにも関わらず)。ちなみに今回上映の版は、もちろんコーマンによる改竄版ではない。
 そして、自作の興行的失敗が続いたヘルマンは、この後ついにヨーロッパでの映画製作を余儀なくされることになる。だが完成作は、ジョナサン・ローゼンバウムやトム・ミルンなど一部のうるさ型批評家から賞賛された。

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執筆者

Yasuhiro Togawa