中国残留日本兵の悲劇を描いた傑作ドキュメンタリー「蟻の兵隊」が異例のロングラン・ヒットとなった池谷薫監督の最新作。震災からひと月後に陸前高田を訪れた撮影チームは、そこで佐藤直志というひとりの老人と運命的な出会いを果たす。復興への夢を語る彼の姿に見惚れた池谷は、前作に引きつづき孤軍奮闘する”ガンコ老人”を追うことを決意。寄り添うように撮影を重ね、困難に屈しない“日本人の底力”を情感豊かに描きだしていく。撮影期間1年6カ月。東京〜岩手往復の走行距離は5万キロに達した。頑強な肉体と茶目っ気たっぶりのユーモア。枯れた中にも残り香のように漂う男の色気。観るものをとりこにする佐藤の姿は、戦争や災害から立ち直ってきた”日本人”とは何なのか、人が生きていくとはどういうことなのかを静かに語りかけてくる。

本作は、2013年2月より、渋谷シアター・イメージフォーラムほかにて公開を予定しております。個から社会を見つめる作風に定評のある池谷監督が、津波で壊された家の建て直しに奮闘する佐藤直志さんの人間力を追ったドキュメンタリーです。

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執筆者

Yasuhiro Togawa