川と人間の関わりの歴史を紐解くと、
現在の環境問題、政治、生き方についての答えが見えてくる!!

ポレポレ東中野では、神奈川県中津川の生態を守る人々を追った『流 ながれ』(村上浩康監督)、長良川の河口堰に翻弄される地域住民の姿を描いた『長良川ド根性』(阿武野勝彦、片本武志監督/東海テレビ放送製作)と川を題材にしたドキュメンタリー映画を連続公開します。この二作の公開を記念して、川が登場する映画ばかりを上映するオリジナル企画<川映画特集>を開催いたします。
 川の生態系を守ろうと絶滅危惧種・カワラノギクの保護活動をするおじいさんと、川の小さな生物の研究を続ける元教師のおじいさんの二人を捉えた『流 ながれ』には、人間と自然がどう共生したらいいのかという非常に今日的な問題を描いています。文部科学大臣賞も受賞した本作は、水中撮影、空撮といった様々な技法を使い、川という生態を多面的に記録しました。

 河口堰の是非という一見政治的な問題を描いた『長良川ド根性』は、河口堰の開閉に翻弄される漁師たちを描きながら、「民意」「公益」といった正体不明の意志とは何なのかと観客に問い掛けます。農業用地が必要だと漁師の反対を押し切り河口堰を建設し、それに対応しようと文字通り”ド根性”で乱獲禁止や養殖の研究を進める漁師たちに対して、今度は環境意識の高まりを理由に河口堰を開門しようとする政治。これは一体誰の意志なのでしょうか。総意とは?民意とは?環境保護とは?様々な問題を東海テレビの熟練した技量で描き切った問題作です。

 このように公開作二作だけでも川を舞台にした映画は多くのモチーフを描いています。西部劇、戦争映画、アニメーションにドキュメンタリー。映画120年の歴史の中で、川はあらゆるジャンルの映画に登場してきました。本特集の上映作品の中でも、高畑勲と宮崎駿による初の実写ドキュメンタリー映画『柳川堀割物語』では街中を流れる水路とその暮らしの関わり合いを描き、かつて日本各地にあった水との暮らしを思い起こさせます。太平洋戦争のジャングルを描いた『シン・レッド・ライン』、オーストラリアの広大な大地と白人少女の伝説的な沐浴シーンを描いた『WALKABOUT 美しき冒険旅行』、川に潜む微生物を顕微鏡を用いて描いた『川の衛生技師』やさまざまな漁法を紹介した『那珂川の漁労』など、川についての映画というだけでこれだけのバリエーションに富んだ作品群を集めることが出来ました。さまざまな”川映画”をこの機会にご堪能頂き、人間と川との歴史に想いを馳せて頂ければと考えております。

<上映作品>
豪華キャストによる川のほとりの大河ドラマ
『紀ノ川 花の巻・文緒の巻』(1966年/166分/監督:中村登)
アボリジニの少年と大地をさまよう姉弟の物語
『WALKABOUT 美しき冒険旅行』(1971年/100分/監督:ニコラス・ローグ)
高畑勲×宮崎駿コンビによる
初のドキュメンタリー映画
『柳川堀割物語』(1987年/165分/監督:高畑勲)
郊外の川沿いを舞台にした
ファンタジックな実験的8mm映画
『にじ』(1988年/70分/監督:鈴木卓爾)
太平洋戦争・ガダルカナル島での米兵の生、
そして川とジャングル
『シン・レッド・ライン』(1998年/171分/監督:テレンス・マリック)
長良川上流・粥川の清流の暮らしを描いた巨編
『粥川風土記』(2005年/162分/監督:姫田忠義)
尾瀬の成り立ち、川に潜む微生物、漁法、川の音!
短編プログラム(計77分)
『尾瀬』(1954年/9分)
『川の衛生技師』(1966年/27分)
『那珂川の漁労』(1994年/30分)
『北上川河口のヨシ原』(1998年/11分)
【プレミア上映】
河口堰の開閉に翻弄されるド根性漁師たちの物語
『長良川ド根性』
(2012年/80分/監督:阿武野勝彦、片本武志)

※11/1(木)20:00の回上映後
 村上浩康(『流』監督)によるトークイベント開催!

<料金>
前売:
全作品共通三回券
3000円
(『流』にも使用可)
当日:
■…一般1500円/大専シニア1200円
●…一般1200円/大専シニア1000円
★…一般1700円/大専1400円/シニア1000円

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa