政治的な前衛映画監督たちを被写体にしたドキュメンタリー・シリーズ『美が私たちの決断をいっそう強めたのだろう』の第一弾となる本作は、1960年代に若松孝二とともに鮮烈な映画を次々と世に生み出し、若手芸術家の筆頭として注目されるも、やがて革命に身を投じた足立正生のポートレートである。フィリップ・グランドリュー監督が2008年の初来日時に足立正生と対面し、意気投合したことが制作のきっかけになった。

フィリップ・グランドリュー監督は、パリのポンピドゥセンターや、シネマテーク、コペンハーゲン・ドキュメンタリー映画祭で特集上映が組まれるなど、ヨーロッパでも異色の前衛監督として知られている。

足立正生は、1960年代に若松孝二の若松プロに参加し、『堕胎』『略称・連続射殺魔』『赤軍−PFLP・世界戦争宣言』などを監督。その後、日本赤軍として国際指名手配されレバノンで逮捕勾留後、日本に強制送還された。2007年、日本赤軍メンバーの岡本公三をモデルにした『幽閉者 テロリスト』を35年ぶりに監督している。

本作では、足立正生が語る映画と革命についての言葉を、グランドリューが撮影する独特の詩的映像に定着させることに成功している。足立正生は本作の中で、自らの過去を振り返り語る。「革命なのか映画なのか、僕にとって全く一つの事だった」と。

なお、映画のタイトルは、ドストエフスキーの「美が世界を救うだろう」という言葉と、足立正生監督の『幽閉者 テロリスト』の中で岡本公三がパレスチナの風景を回想し語る「その美しさのせいで俺たちの決断も一段と強まったのかもしれない。なにもかもが戦いに向かうには、静かで美しすぎる風景だった」という台詞からインスパイアされて付けられた。
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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa