『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』から5年、ポール・トーマス・アンダーソン監督の最新作「The Mastar」(原題)が、本年度ヴェネチア国際映画祭にてコンペティション部門で正式出品され、見事銀獅子賞(監督賞)、W主演賞(ホアキン・フェニックス、フィリップ・シーモア・ホフマン)、国際映画批評家連名賞の三冠を受賞した。世界3大映画祭のひとつとして知られるヴェネチア映画祭。授賞式は、いよいよ9月8日(日本時間8日〜9日)に行われ、。北野武監督『アウトレイジビヨンド』をはじめ、世界の名だたる鬼才たちの注目作を抑える結果となった。先日の記者会見では監督自ら、サイエントロジーをモデルにしたことを公言し、9月15日のアメリカ公開を前に、ますます注目を集めております。さらに、来年のアカデミー賞レースの行方を占う映画祭と位置づけられているため、早くも来年のアカデミー賞、大本命ともいわれております。

【ポール・トーマス・アンダーソン監督】
初期短編「Cigarettes & Coffee」をブラッシュアップした「ハードエイト」で長編デビュー。1970年代の米ポルノ業界の内幕を描いた「ブギーナイツ」がヒットしただけでなく、オスカー脚本賞にノミネートされるなど賞レースに躍り出たことから一躍注目される存在となった。トム・クルーズらを起用した「マグノリア」でベルリン国際映画祭金熊賞、「パンチドランク・ラブ」ではカンヌ国際映画祭監督賞を受賞し、まだ若く寡作ながら一定の評価を得ている。さらにダニエル・デイ=ルイスが石油王を演じた2007年の『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』は全米映画批評家協会賞などを受賞している。
今回、「The Master(原題)」が金獅子賞を受賞すれば世界3大映画祭のベルリン、ベネチアの2つのグランプリを獲得することになる。

絶賛映画評、続々到着!!
既に本作を鑑賞した評論家や観客の間では、コンペティション部門出品作品のなかで最も評判がよく、中間発表では、本作が金獅子賞候補ダントツ1位と予想されています。

★★★★★ 物議を醸すテーマであるにもかかわらず、扱い方が完璧だ。もし足腰立たなくさせるような、盲目になってしまうような映画があるとしたらなら、それはTHE MASTERだろう。なんて魅惑的な、臆面もなくオールドスタイルのアメリカン・クラシックな映画なんだろう。THE MASTERは、豪勢で、不思議で、悠々とした規律で指揮されているのに、その骨には無駄な脂肪が全くついていない。
——–ザン・ブルックス / 英ガーディアン紙
 
この映画で突飛している事は二つ。まずは並々ならぬ映画的技術、これだけで上映時間中目利きを座席に貼り付けさせるのに十分。そして全く正反対の二人の男たちを演じる、ホアキン・フェニックスとフィリップ・シーモア・ホフマンによる凄まじい演技。
——–トッド・マッカーシー / 米ハリウッド・レポーター紙
 
アンダーソン独特のエキセントリックな6作目は、催眠術にかかったようなムードを持続させる浸礼のような、そしてスリリングに時には気も狂わんばかりに、期待通りに安全に収まることを拒む、堂々とした映画である。その華麗な映像テクニックと、見事に同調したフェニックスとホフマンの演技は、大反響と猛烈な論議を醸し出す事だろう。
——–ジャスティン・チャン / 米ヴァラエティ紙
 
★★★★★ これは、アンダーソンのニヒルな前作『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』ト同等だが大いに異なる、狂おしい従兄弟のような映画だ。あの映画の怪物のような主人公は、利益なしでは目的はないという男だったが、ホフマン演じる預言者は、目的を称える男。まだ一回しか観ていないのに、THE MASTERは歴史的なランドマークのアメリカ映画だと感じる。「果敢」と「並々ならぬ」などの言葉では全く不十分だ。
———ロビー・コリン / 英デイリー・テレグラフ紙

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執筆者

Yasuhiro Togawa