前作『東京公園』では第64回ロカルノ国際映画祭・金豹賞(グランプリ)と審査員特別賞を受賞するなど、国内外で圧倒的な評価を得る青山真治監督が、田中慎弥の芥川賞受賞作品「共喰い」を映画化することが決定しました。

芥川賞受賞会見も話題となった、文壇に衝撃を与えた「共喰い」の作者・田中慎弥は、今もなお故郷・山口県下関にこだわり創作を続けています。また下関と関門海峡を挟んで対岸に位置する福岡県北九州市門司出身の監督・青山真治も北九州を舞台にした『Helpless』、『EUREKAユリイカ』、『サッドヴァケイション』の“北九州サーガ3部作”を完成させ、本作も北九州での撮影を敢行。二人の共通点といえる土着的な世界観のなかでの人間の葛藤を細かに捉え、リアルな姿を浮き彫りにするという作家的特性が見事に合致し、日本映画界に新たなる痕跡を残す傑作になることを予感させます。

主演の遠馬役に、史上最年少の「仮面ライダー」としてデビューし、現在TBSドラマ「サマーレスキュー〜天空の診療所 」に出演するなど、いま最も注目を集める若手俳優・菅田将暉。ヒロイン千種役には新鋭・木下美咲が大抜擢されました。
父親の愛人役に、山下敦弘監督の映画やポツドールの舞台などで幅広く活躍する篠原友希子。乱暴な父親役に、日本映画界に欠かすことのできない名バイプレ—ヤ—・光石研、実母役に圧倒的な存在感を持つ実力派女優・田中裕子を迎えて、2012年9月クランクイン、来年の夏ロードショー予定です。

≪原作者: 田中慎弥コメント≫
自分の作品が映画化されるのは初めてです。
決して万人受けするストーリーではないと思いますが、そのように限定された世界が映画によってどのように広がってゆくのか、原作者として、読者として、観客として、楽しみにしています。小説の「共喰い」こそが一番だと私は思っています。映画に携わる人たちは、「共喰い」は映画のための物語じゃないか、と考えていることでしょう。勝負です。

≪監督: 青山真治コメント≫
脚本家の荒井さんにどうだろう、とメールを戴き、一読の感想はズバリ、これを他人に撮られたくない、でした。文章から立ち上る土地の匂い、人間関係、何もかも勝手知ったる世界のような。原作が田中氏にしか書けない小説だったように、本作も自分にしか作れない映画になってほしい。こんなことを願うのは久しぶりです。

≪主演: 菅田将暉コメント≫
原作を読んだ時、文字から生活風景や街並み、人間の欲や業にあふれたくすんだ世界が頭の中に飛び込んできて、純粋に映像化が楽しみでした。オーディションで青山監督にお会いし、「この作品に出たい、この監督とお仕事させていただきたい」という思いがより強くなりました。だから今回選んでいただいたことに心から幸せを感じています。
今までの菅田将暉を知ってくださってる方には想像もつかない、イメージをガラッと変える作品になると予感していますが、こういった濃厚で生々しい世界観を持つ作品への挑戦が役者として、男として深さをもたらしてくれる転機だと信じ、命を懸けて遠馬を演じたいと思います。

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執筆者

Yasuhiro Togawa