石井光太氏原作の壮絶なルポルタージュ本を元に、『踊る大捜査線 THE MOVIE』シリーズ(脚本)、『容疑者室井慎次』(脚本・監督)、『誰も守ってくれない』(脚本・監督)の君塚良一氏が東日本大震災の内側とその知られざる真実を描いた物語を監督。
モントリオール世界映画祭出品が決定!
作品への想いのコメントが届きました。

≪作品への想い≫
●主演:西田敏行さん
<映画化オファーに対し> 
最初にルポの本を読ませていただいた時、「これを映像化するというのは大変難しいことだろう」と思いました。ご遺族の方々の心情を考えると、劇化するというのは「果たして正しいのかどうか」という判断には非常に迷いました。ニュースの映像などで冷静な被害状況や数値は伝わってくる中、被災された方々の本当の気持ちや真実は、逆に劇化することによって“事実”とは違う“真実”が引き出せるのではという想いが沸き立ってきました。そういった想いがだんだんと大きくなり、この作品の映画化のオファーに対し「これは映画化しても良いものだろう」と、決心に変わりました。

<出来上がった作品をご覧になって> 
作品を観終わった今、「この作品を作って良かった」と思っています。
亡くなられた方々の尊厳を生きている方々が守ろうとする想いを表現したつもりですし、出来上がった作品を観て、そういった「日本人の死生観」を描いたドラマといっても過言ではないと思っています。

<役者として> 
被災地に対し、一体何ができるのだろうとずっと考えていたのですが、歌手の方は「歌」で、僕は役者なので「芝居」でできることをしようと。これに出演してくれた役者さんみんながそういう思いで現場にいてくれたのだと思っています。

●君塚良一監督
未曾有の災害に直面し、立ち向かった人たちの姿を多くの人に伝えたい、災害や被災地への関心を薄れさせてはいけない、その思いを胸にこの映画を作りました。被災者の心の傷みを忘れず、真実をありのままに描きました。あの日、日本で何が起きたのかを世界に伝える機会を与えていただき、感謝します。震災で亡くなった人の尊厳を守った日本人の良心を伝えることが、この映画の役目です。
                           
●製作:亀山千広 ㈱フジテレビジョン 常務取締役 総合メディア開発映画事業局長
<映画化に至るにあたり>
フジテレビを含めた報道機関はこの震災を風化させたくないということを念頭に日々取材をし、報道してきました。しかし、最前線のカメラでも捉えきれない被災者の方々の姿があったことも事実です。震災被災者の方々、ご遺族のお気持ちを思えば、映画化についてはためらったこともありますが、ずっと取材をしていた報道スタッフに言われた「遺体安置所での出来事などについては残念ながら僕らが伝えきれなかったことです。」という言葉でこの作品を作る決意をしました。
この作品を製作するうえでご遺族の方々にはご理解をいただきたいと原作の石井さん、監督が現地・釜石市に入り、皆さんから「思い出したくはないけれど、このまま風化させたくない。伝えてほしい。どうか忘れないでもらいたい。」というお言葉をいただき、テレビ局の映画部門である我々が今作るべきものはこの作品だという決意はさらに固まりました。

●原作者:石井光太さん
<原作が映画化されると聞いたときは>
正直な話、嬉しいという気持ちとどうなるんだろうという気持ちがありました。君塚さんから誠意を持って事実に基づいてきちんと作りたいという話をいただいたので、それであれば僕の方でも取材などで協力して一緒に作っていきたい、というお話をさせていただきました。
君塚さんも実際に釜石市に行かれて、僕がご紹介した被災者の方やご遺族の方に一緒にお会いしたことがありましたが、僕以上に丁寧にお手紙を出されたりしてとても親交を深めてらっしゃったので、僕とは違う思い入れを持って映画を作られたのだと思います。

<映画をご覧になった感想は>
僕の本を読んだだけで作ったのではなく、被災者の方やご遺族の方とお会いになった実体験があったから、それがすごくいい意味でストレートに映像に出ていたのだと思います。
映画を観て感じたところはすべてに対して丁寧だということですね。例えば、遺族の方が出棺するときに「ありがとうございます」と言う場面であったり。実際にご遺族の方はそういう態度を取っていたんですけど、感情を描きたくなるところをぐっと我慢して、そういうところを一つ一つものすごく丁寧に描くことによって、感情を露わにするところを映し出すよりももっともっと何倍もご本人たちの思いを伝えていると思いました。そこが一番感動しました。

2013年3月公開予定

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執筆者

Yasuhiro Togawa