むずかしく考えずに見てごらん、そこにひろがる新しい世界—

カンヌ映画祭、ベルリン映画祭、ベネチア映画祭と、世界最高峰の映画祭(三大映画祭)から選びぬかれた日本未公開の選りすぐりの映画を集め、一挙公開した『三大映画祭週間2011』(2011年8月13日/ヒューマントラストシネマ渋谷)は多くの映画ファンの賛同を得て、大好評のうちに終了。多くの人々が未知なるミニシアター作品の傑作に期待し、劇場に足を運んだ。そして、第2弾を熱望する声に答え、ついに『三大映画祭週間2012』の開催が決定!8月4日(土)より、昨年と同じくヒューマントラストシネマ渋谷にて公開することが決定いたしました。

今年の目玉作品となるのが、『8人の女たち』(02)、『しあわせの雨傘』(10)等、数々の大ヒット作品を生み出している、フランス人監督フランソワ・オゾンの日本初登場作品の「ムースの隠遁」。ドラッグの過剰摂取で最愛の恋人を亡くし、彼の子を宿したままパリから遠く離れた場所へと逃げ出し、自分を見つけていく様を描いた

大人気監督の本作は、2009年サン・セバスチャン国際映画祭審査員賞受賞作品として、特別枠での上映となります。
他には、今年のカンヌ映画祭でパルム・ドールを受賞した「アムール」(原題)のミヒャエル・ハネケ監督に「ピアニスト」「白いリボン」でキャスティング・ディレクターとしてかかわったマーク・シュラインツァーの初監督作品で、35歳の男が10歳の少年を誘拐し軟禁、“ゆがんだ”共同生活の最後の5か月間を描き、昨年のカンヌ映画祭で物議を醸し出した超問題作『ミヒャエル』(11)。6月30日に「きっと、ここが帰る場所」の日本公開を控えた、現在のイタリアで最も評価の高い監督のひとりと言われているパオロ・ソレンティーノの傑作にもかかわらず日本では公開されずにいた『イル・ディーヴォ‐魔王と呼ばれた男‐』など、三大映画祭で高い評価を得ながらも日本で公開されないままでいた作品を一挙上映いたします。

ジャンルも『アクション』から『ドラマ』『サスペンス』果ては『政治劇』までとバラエティに富み、しかも、監督のヴィジョンと個性に彩られた作品群は、鑑賞後一冊の小説を読み終えたような満足感を残してくれるだろう。この夏は、世界の隠れた傑作が織りなす、これまで観たことがない世界を体験してみてはどうだろう。

作品紹介  ※全8作品
カンヌ映画祭
■「ミヒャエル」(MICHAEL/オーストリア/96分) 2011年コンペティション選出
監督:マルクス・シュライバー 主演:ミヒャエル・フイト、ダヴィド・ラウヘンベルガー
35歳の男ミヒャエは10歳の少年を誘拐し、彼の自宅に軟禁する。彼と少年の間に芽生える奇妙でゆがんだ関係を描く共同生活の最後の5ヶ月間。
■「我らの生活」(Nostra Vita/イタリア/98分)2010年男優賞
監督:ダニエレ・ルケッティ 主演:エリオ・ジェルマーノ、ラウル・ボヴァ
建設現場で働くクラウディオは、2人の子供と愛する妻に囲まれて、幸せな毎日を送っていた。しかし、ある日突然、妻が亡くなり、彼は二人の子供を守り抜こうと奮闘する。
■「フィッシュ・タンク」(Fish Tank/イギリス・オランダ/123分)2009年審査員賞
監督:アンドレア・アーノルド 主演:ケイティ・ジャーヴィス、マイケル・ファスベンダー
学校からは放校処分を受け、友達からも相手にされない15歳の少女、ミア。ある日、母親が連れてきた男が親子二人の人生を愛に満ちたものに変えてみせると約束する。
■「イル・ディーヴォ‐魔王と呼ばれた男‐」(IL DIVO/イタリア・フランス/110分)2008年審査員賞
監督:パオロ・ソレンティーノ 主演:トニ・セルヴィッロ、フラヴィオ・ブッチ
魔王と呼ばれたイタリア首相アンドレオッティ。彼は権力に君臨し、多くの犯罪や汚職に手を染めながら、決して裁かれることはない。カンヌを驚愕させた政治ドラマ。

ベルリン映画祭
■「俺の笛を聞け」(If I Want to Whistle, I Whistle/ルーマニア、スウェーデン、ドイツ/94分)
2010年銀熊賞(審査員グランプリ)/ アルフレッド・バウアー賞
監督:フローリン・サーバン 主演:ジョルジェ・ピステラーヌ、アーデ・コンデスク
少年院の刑期をあと5日に控えたシルヴィウ。しかし、出奔していた母親が突然現れ、ここまで大事に育ててきた弟を連れ去ろうとする。心の中に吹き荒れる葛藤が、彼を突き動かす。

ベネチア映画祭
■「気狂いピエロの決闘」(Balada Triste/スペイン・フランス/107分)2010年銀獅子賞(監督賞)/オゼッラ脚本賞
監督:アレックス・デ・ラ・イグレシア 出演:カルロス・アレセス、アントニオ・デ・ラ・トレ
サーカスで‘泣き虫ピエロ’として働き始めたハビエル。そこにはもう一人、`怒りのピエロ‘セルジオがいる。サーカス団の美女を巡って始まった二人の戦いは常軌を逸した市街戦へと展開してゆく。
■「時の重なる女」(The Double Hour/イタリア/95分)2009年女優賞
監督:ジュゼッペ・カポトンディ 出演:クセニア・ラパポルト、フィリッポ・ティーミ
ソニアとグイドは出会うと、すぐに互いに惹かれあい、愛し合うようになる。ある日、グイドが警備員として働く邸宅に招かれたソニアだが、そこで二人は強盗団に襲われ撃たれてしまう。次第に明らかになる真相の行方は?

特別上映
■「ムースの隠遁」(The Refuge/フランス/88分)2009年サン・セバスチャン映画祭審査員賞
監督:フランソワ・オゾン 出演:イサベル・カレ、ルイ=ロナン・ショワジー
ムースとルイは何不自由なく暮らす幸せなカップルだったが、ドラッグが二人を蝕んでいた。ある日、ルイが死に、ムースは自分が妊娠していることに気づく。彼女は途方に暮れて、パリから遠く離れた町へと逃げだすが…

★世界三大映画祭とは、FIAPF(国際映画製作者連盟)の指定した国際映画祭のうち、ベルリン映画祭、カンヌ映画祭、ベネチア映画祭の三つを指す。
8月4日(土)より、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開

執筆者

Yasuhiro Togawa