哀しみを背負い、北と南を行き来する運び屋“プンサンケ”
男は何を届けようとしているのか——。

正体不明の男は、38度線を飛び越えソウルとピョンヤンを行き来し3時間以内に何でも配達する。運ぶのは、離散家族の最後の手紙やビデオメッセージ。北朝鮮製の煙草・豊山犬を吸う男は、その銘柄から“プンサンケ”と呼ばれていた。ある時、亡命した北朝鮮元高官の愛人イノクをソウルに連れてくるという依頼が舞い込む。境界線を越えるうち、互いに言い知れぬ感情を抱くようになる二人。イノクを引き渡したプンサンケは、依頼者の韓国情報員に拘束され、卑劣な拷問を受ける。「おまえは北と南、どっちの犬だ」。さらにソウルに潜伏していた北朝鮮の工作員までもが介入し、イノクに危険が迫る。北と南の思惑に利用され全ての道が閉ざされたプンサンケは、北朝鮮の工作員と韓国情報員を一人また一人と密室に閉じ込めていく。密室で対峙する北と南。そして、投げ込まれた拳銃…。愚劣な人間の正体が暴かれ、予測不可能な衝撃が幕を開ける。

世界三大映画祭を制したキム・ギドクが分断国家に放つ痛烈なメッセージ
全キャスト、スタッフが無報酬での参加を即決!

韓国映画界の異端、キム・ギドクが3年の沈黙を破り脚本に託したのは、北と南の不条理な現実に向けた辛辣なアイロニー。世界唯一の分断国家に鋭く切り込んだ脚本に心打たれた主演俳優のユン・ゲサン、キム・ギュリをはじめとする全ての俳優とスタッフは、無報酬での参加を決めた。監督はキム・ギドクの『絶対の愛』『ブレス』で助監督を務め、初の長編『ビューティフル』がベルリン国際映画祭に招請され世界から注目される新進気鋭のチョン・ジェホン。38度線を行き来するプンサンケの無言の叫びが今、分断の歴史を揺るがす。

8月18日(土) ユーロスペース公開、銀座シネパトスほか全国順次公開!

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執筆者

Yasuhiro Togawa