井上靖の故郷である伊豆・湯ヶ島など、日本の美しい風景を舞台に、親子の絆と愛を描いた本作は、海外でも絶賛され、第35回モントリオール世界映画祭で審査員特別グランプリに輝きました。
人と人との絆の大切さを知った今の時代にこそふさわしい、希望に満ちた普遍の愛の物語です。
そしてこの度、下記要領にて初日舞台挨拶が実施され、舞台挨拶には、役所広司、樹木希林、宮崎あおい他、豪華キャスト・スタッフが登壇しました。女性ばかりの家族に囲まれる家長を演じた役所さんは、何と今回、紫綬褒章を受賞することになり、登壇者の女性陣から花束を贈呈するなど、とても心温まる、素敵な舞台挨拶となりました。

【初日舞台挨拶 概要】
■日時:4月28日(土)12:00〜
■場所:丸の内ピカデリー2
■登壇者:役所広司、樹木希林、宮崎あおい、南 果歩、ミムラ、菊池亜希子、原田眞人監督

【ご挨拶】

●原田眞人監督:
今日はありがとうございます。
やっとこの映画も誕生日を迎えた気がしています。

本当に色々な気持ちが交錯していて、長くなってしまいそうなので、この辺で打ち切らせていただきますが、その前に、役所さん、紫綬褒章おめでとうございます。

●役所広司さん:
今日はたくさん公開作品がある中から、この作品を選んでくださってありがとうございました。

さっき、舞台袖で待っている間に何を話そうか考えていたのですが、“わが母”の希林さんがずっと話してくださっていて、何も考えられませんでした(笑)。

この『わが母の記』が1人でも多くの方に観ていただけるように皆さん是非宣伝をしてください。

●樹木希林さん:
今、松竹の会長さんが舞台袖のところにいらっしゃるんですが、ずっと場を持ち堪えなくちゃと思い、袖で喋っていたので、私も話すことを考えられませんでした。
今日はよろしくお願いします。

●宮崎あおいさん:
今日は足を運んでくださってありがとうございました。
やっぱり初日を迎えるということは幸せなことですね。
初号の時にこの映画を観て、こんな素敵な日本映画が出来あがって、それに関わることができて、本当に幸せだと思いました。
この映画が、皆さんの心に残る映画になっていたらいいなと思います。

●南 果歩さん:
今日はお天気の良い中、映画館に来てくださってありがとうございます。
今日、久々に皆さんに会ったんですが、やっぱり伊上家は、樹木さんを中心に輪ができるんだなと思いました。

今日観ていただいた皆さんも、どんどんこの映画が育っていくように力を貸して下さい。

●ミムラさん:
私も久々に伊上家のみんなに会った時に、「この家族の一員で良かったな」、「この作品に出演できて良かったな」と改めて、嬉しく思いました。
皆さんにこれから応援していただき、この大好きな作品が世の中に広まるといいなと思います。

●菊池亜希子さん:
私の話になりますが、今日は実家から母が来てくれています。
しぐさや話すテンポが少しだけ希林さんに似ていて、何でも自由に育ててくれた母ですが、この仕事を始めた時は、頷いてはくれなかったんです。でも、今日こういう素晴らしい映画に出演をさせてもらったことで、少しでも理解して喜んでくれていたらいいなと思っています。

【質疑応答】

●MC:
モントリオール世界映画祭をはじめ、海外映画祭での評価も高く、先日の外国特派員協会の試写会でも大変好評だったそうですね。
どのあたりが、受け入れられているのだと思われますか?

●原田監督:
たぶん日本の方々も海外の方々も、この作品をご覧になって感じたことに変わりはないと思います。それに、重い内容かと思ったら笑えるという、そういったユーモラスな部分は海外の方は好きだと思いますし。ただ、認知症のことを笑いものにしているというわけではもちろんなくて、私の父親も認知症で、母親が面倒をみているのですが、とても力強く、笑い話として話してくれるんです。

あとは、肌の色や人種の違いなど関係なく、観た方それぞれが「自分も伊上家の一員になれた」と言ってくださった方が、海外でも多かったですね。嬉しかったです。

●MC:
映画の中で、息子と母という親子を演じられたのですが、この映画を通じて、何かご自身のお母様への想いを、思い出すことなどありましたか?

●役所さん:
もちろん撮影の時には樹木さんを母親だと思っていますが、台本を読んでいる時などは、ふと自分の母親を思い出しました。
忘れたいたことも改めて思い出すことが出来ましたね。

●樹木さん:
私は息子がいないので分かりませんが、実際に役所さんみたいな息子がいたらどんどん働かせようと思います(笑)。

●MC:
宮崎さんは、役所さん、樹木さんと共演されて、いかがでしたか?

●宮崎さん:
希林さんとは今回の作品で初めてご一緒させていただいたのですが、現場でどんどん体が小さくなっていったり、日によって体の大きさが変わるのを身近で見ることが出来たのは貴重な経験でした。

あとは、役に入っているのに、周りをとても見ることが出来て、「ここはこうして」という指示を出せるのは本当にすごいなと思いました。
緊張はしましたが、すごく贅沢な時間をいただいたなと思っています。

役所さんは、11〜12年ぶりくらいにご一緒させていただきました。
その時は私もまだ子供で、夏休みの宿題などをやっていたくらいで、こうして大人になって、またご一緒させていただくことになり、たくさんお話をしたりというわけではないのですが、ほっとするというか、また同じ場所に立てることが幸せだなと思いました。

●MC:
昭和という時代に、オシャレで、粋な女性・桑子を演じられていましたね。
演じるにあたって、何か気を付けられたことはありましたか?

●南さん:
本作の劇中には、小津安二郎監督などへのオマージュがちりばめられているのですが、やはり、衣装さんとメイクさんのおかげで、この昭和の時代にすっと入り込めたのかなと思っています。

また、私は『KAMIKAZE TAXI』の頃から原田監督のファンだった上に、役所さんの作品もおっかけのように拝見させていただいていたので、今回お2人とご一緒できて嬉しかったです。

それと、希林さんの娘役ということで今回やらせていただいたのですが、希林さんのお芝居や素顔に触れて、お芝居へのアプローチはもちろんいつスイッチが入ったのか分からないような、そんなふと空気を変える力を間近で見てみて、一生付いて行こうと思いました。

●MC:
伊上家の長女として、快活で、しっかりものの郁子を演じていらっしゃいますね。実際のミムラさんご自身は、映画の3姉妹の中では誰と性格が近いと思われますか?

●ミムラさん:
性格上のことは自分でも分からない部分があるんですが、実際、私も三姉妹の末っ子なので、琴子と同じ立場なんです。
あとは、祖父母の介護のことなどで、父ともよく喧嘩をしていたので、琴子の気持ちは分かりました

●MC:
映画の中では、病弱で引っ込み思案な二女・紀子役を演じていらっしゃいますね。現場での3姉妹は、どんな感じだったのでしょう?

●菊池さん:
先ほども楽屋で、3姉妹というよりは、4姉妹のようだね、という話をしていたんです(笑)。それと、今回は井上靖さんの自邸を使用させていただいていたので、それぞれの控え室などはなく、撮影で使っていない部屋が控え室のようになっていて、そこで雑談をしていました。
あとは、あおいちゃんがいつもお菓子袋を持ってきてくれていたので、「今日は何かな」って言いながら、みんなで編み物などをよくしていました。

●MC:
さて、先ほど監督からもありましたが、この度、役所広司さんが、この度の内閣府による<春の紫綬褒章>を受章されました!
この紫綬褒章は、学術、芸術、スポーツ分野の功労者に授与されるものです。

おめでとうございます。女性陣から、花束のプレゼントです!

※ここで、樹木さん、南さん、宮崎さん、ミムラさん、菊池さんから、役所さんへ花束を贈呈

役所さん、受章おめでとうございます。一言頂戴できますでしょうか?

●役所さん:
本当にありがとうございます。
宣伝部が「発表は今日にしてくれ」と言ったわけではないんですが、この『わが母の記』の初日という日に、こういった素晴らしい賞もいただくことが出来て、本当に今まで仕事をしてきた関係者やスタッフ、そして『わが母の記』の皆さんのおかげだと思っています。

それと、話は変わりますが、今日は男性が多いですね。
やはり、女優さんがこれだけ綺麗な方が多いと来てくれるんですね。
映画館に男性が来てくれると劇場の雰囲気も豊かな感じになりますね。
本当にありがとうございました。

●MC:
樹木さんも、2008年に紫綬褒章を受章されているんですね。
役所さんへ一言いただけますか?

●樹木さん:
忘れた。私が忘れてるんだから、私のことはいいから(笑)。

●MC:
そろそろお時間も迫ってまいりましたので、最後に代表しまして、役所広司さんより、会場の皆様に一言いただきたいと思います。
役所さんお願いします。

●役所さん:
今日は本当にありがとうございました。
原田監督とは若い頃に出会い、それ以来、監督とはずっと一緒に仕事をしていきたいと思ってきた方です。こうして10年ぶりに、お互い年をとったことで、また新しい映画ができたと思います。

また今回、樹木さんをはじめとして、映画を作る仲間や俳優さんが本当に素晴らしかったです。こうして女優さんに囲まれて、今まで経験したことのない華やかな現場となりました。

こういった、若い人も楽しめる、こんな映画もあるんだよってことも感じてもらえたら嬉しく思います。

いつもキャンペーンで希林さんが言ってますが、この映画は昨年2010年の3月10日にクランクアップして、翌日が大震災でした。
この映画に写っている、風景、空気、水、何も汚染されていない、きれいな日本の姿がうつっています。

そういった記憶に残る節目に、こういう映画に出会えてとても幸せです。
どうぞ皆さん、これからもこの『わが母の記』を愛していって下さい。

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執筆者

Yasuhiro Togawa