当館のオリジナル企画として2008年から開催している<4.26>シリーズ。チェルノブイリ原発事故が起こった4月26日に併せて原子力発電に関する映画のオールナイト上映および特集上映、当館のオーナーである本橋成一の三部作(『ナージャの村』『アレクセイと泉』『祝の島』)のアンコール上映を行ってきました。チェルノブイリの恐怖は原子力発電がある限り自分たちと暮しの隣り合わせであるということを忘れず、考え続けてゆくために継続することが何より大切であるという思いから、年1回の恒例企画としてきました。そのなかで起こったのが昨年3月11日の東日本大震災に端を発する福島第一原子力発電所の事故でした。その後の一年間で、今までとは比にならないほど原発やエネルギーに関する映画が多く上映・新規公開されるようになりました。その状況の中で当館の<4.26企画>として見ていただくべきものは何なのか、本企画の意義を自問してきましたが、原点に立ち返って考えると、チェルノブイリでも福島でも起こっていることは同じ。自分の居場所をどこに置いて、どのような選択をして暮してゆくのかということでした。チェルノブイリから26年、福島から1年。

原子力発電と隣り合わせにある現在の暮しについて考える機会を持ち続けていただきたいという思いを新たにし、チェルノブイリ原発事故で汚染された土地に済み続ける人々を映した本橋成一監督作品『ナージャの村』『アレクセイと泉』、原子力発電所建設に反対して自らの暮しを守ってきた人々を映した『祝の島』のアンコール上映を例年同様行います。また、4月28日(土)の深夜から開催するオールナイトでは、チェルノブイリ労働者の街のその後を映した『プリピャチ』、加藤鉄監督の新作『フクシマからの風 第一部 喪失あるいは蛍』を公開に先立って先行上映致します。これら5作品は原発の安全神話や被曝の危険性など科学的な見地でも、脱原発や持続可能性といったエネルギー論的な見地でもなく、ただ故郷に住み続けたいと願う、人間が大地を汚したということに自覚的な人々を捉えた作品群ともいえます。この時期に上映することにより、これからの暮しについて考える機会となることを願っています。

また、同時期に、映画館ビル1階にあるカフェ・ポレポレ坐にて、本橋成一「アレクセイと泉」写真展をおこない、26
日には本橋成一×纐纈あや(『祝の島』監督)によるトークイベントも行います。

上映作品
『ナージャの村』(1997年/118分/35mm)監督:本橋成一/音楽:小室等/編集:佐藤真
 チェルノブイリ原発事故で汚染されたベラルーシのドゥヂチ村。そこに故郷を離れず、汚染された村に残る6家族がいる。
 そこは汚染されているとは思えないユートピアのように美しい村。写真家・本橋成一の初監督作品。

『アレクセイと泉』(2002年/104分/35mm)監督:本橋成一/音楽:坂本龍一
 ベラルーシ・ブジシチェ村はチェルノブイリ原発事故によって放射能で汚染された。しかし村の泉からは放射能が一切検出されない。
 豊かな大地、奇跡の泉と共に暮らす人々を、坂本龍一の音楽と美しい映像で綴ったベルリン映画祭受賞作。

『祝(ほうり)の島』(2010年/105分/HD)監督:纐纈あや/プロデューサー:本橋成一
 瀬戸内海に浮かぶ山口県上関町祝島。豊穣な海や山の恵みに支えられた1000年の歴史を刻む島。
 1982年、島の対岸4kmに原子力発電所の建設計画が持ち上がる。効率と利益を追い求める社会が生み出した原発と、大きな時間の流れと共にある島の生活。原発予定地と祝島の集落は、海を挟んで向かい合っている。

4.26オールナイトVOL.4
2012年4月28日(土) 23:15開場/23:30開映(5:40終映予定)  前売2000円/当日2500円

『プリピャチ』(1999年/100分/HD)監督・撮影:ニコラウス・ゲイハルター
 『いのちの食べかた』(2005年)のニコラウス・ゲイハルター監督が、
 チェルノブイリ原子力発電所から約4キロメートルに位置する街・プリピャチの事故から12年後の姿をモノクロで映し出した作品。
 原発や関連施設で働く人々、許可を得て帰還した人々など、立入禁止区域であるプリピャチに生きる人々を描く。

『フクシマからの風 第1章 喪失あるいは蛍』(2011年/100分/HD)監督・撮影:加藤鉄
  <プレミア上映(2012年7月より当館にて公開!)> ★5/3(木・祝)20:50より単独での特別先行上映もございます!
 青森県六ヶ所村の核燃料サイクル施設建設計画を追い続け、青森に住み着き『田神有楽』(2002年)を作り上げた加藤鉄監督が、 提供されたカメラとテープを携え夏の福島へ向かい、そこで出逢った自然や生物と共生する人々を描く。
 蛍がクリスマスツリーのように集まる木、太陽光発電のみで暮らす村、自作のドブロクなど…福島の光景が生き生きと映し出される。

『ナージャの村』(1997年/118分/35mm)上記参照

「ナージャとアレクセイ それから」(2006年/26分/DV)製作:本橋成一
 本橋成一が『ナージャの村』『アレクセイと泉』の舞台となった村を再訪するビデオ作品。
 ナージャ一家、アレクセイ一家、村民たちのその後が見られる貴重な映像。

関連作品

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa