北は北海道から南は沖縄まで。128館の独立系映画館が投票に参加! 2011年のベストテン作品決まる!
今年は、『ブラック・スワン』が人気を独占!

北は北海道から南は沖縄まで。全国の映画館スタッフの投票によりスクリーンで観てほしい映画のベストテンを決める、日本で初めての映画賞「映画館大賞」が2009年に発進し、この度は、第4回目を迎えることとなりました。
今年の「映画館大賞2012」は、2010年12月から2011年11月末日までの公開作品を対象に全国128館の独立系の映画館が投票に参加して下さり、ベストテンが決定いたしましたのでお知らせいたします。
 特別部門の「あの人の1本」は、映画監督の李相日さん、劇画家・声楽家の池田理代子さん、俳優の佐野史郎さんのご参加により、それぞれの最も印象に残った1本が選ばれ、今年は『ブラック・スワン』が圧倒的な人気ぶりを見せつけました。特集上映・リバイバル上映された旧作のうち最も鮮やかに蘇った1作を決める「蘇る名画」は、映画監督、新聞記者、研究者それぞれのお立場で映画に携わられている3名の方に鼎談形式で1本を選んでいただきました。

*独立系映画館とは ミニシアター、街なか映画館、地域型シネコンなど、個人経営、NPOまたは地域資本による映画館を総称する呼び名です 

◆映画館大賞とは・・・
日本全国の街角で365日観客に映画を届ける映画館スタッフが選ぶ、日本で初めての映画賞です。2011年に封切られた作品の中から、洋画/邦画、メジャー/インディペンデント、自館での上映の有/無の区別なく、純粋に「映画ファンにスクリーンで観てもらいたい」作品を、情熱とこだわりを持って映画をセレクト・上映している映画のソムリエたちが、選びます。

◆映画館大賞2012ベストテン作品 (以下20位まで)
1位『ブラック・スワン』 ダーレン・アロノフスキー監督
2位『英国王のスピーチ』 トム・フーパー監督
3位『冷たい熱帯魚』 園子温監督
4位『大鹿村騒動記』 阪本順治監督
5位『八日目の蝉』 成島出監督
6位『キック・アス』 マシュー・ヴォーン監督
7位『ソーシャル・ネットワーク』 デヴィッド・フィンチャー監督
8位『ステキな金縛り』 三谷幸喜監督
9位『ゴーストライター』 ロマン・ポランスキー監督
10位『トランスフォーマー/ダークサイド・ムーン』 マイケル・ベイ監督

11位 モテキ 12位 海炭市叙景 13位 一枚のハガキ  14位 猿の惑星:創世記15位 ブルーバレンタイン  16位 未来を生きる君たちへ  17位 コクリコ坂から18位 バーレスク  19位 サウダーヂ 20位 ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2、
ブンミおじさんの森 (同点)

◆特別部門
■「あの人の1本」 (各界の著名人が選ぶ、2011年に最も印象に残った1本)

李相日さん (映画監督)
『ブラック・スワン』  ダーレン・アロノフスキー監督
「もう監督の人非人っぷりが最高です。肉体的にも精神的にも極限まで追いつめられたナタリー・ポートマンの恍惚が疼きますね。彼女が苦しんで苦しみ抜いて、果ては快感に捕われる瞬間を見事に視覚化させるセンスと技術は脱帽です。“狂気”という一番難しい映像表現を成し得たのは、やっぱりダーレン・アロノフスキー監督の徹底したサド体質にあるんでしょうねぇ。見習いたいです」

池田理代子さん (劇画家・声楽家) 
『ブラック・スワン』  ダーレン・アロノフスキー監督
「『ブラック・スワン』は、買い物に出た際に封切りになったことを知って、すぐに映画館に飛び込みました。私も歌を歌っていますので、舞台に立つ者の恐ろしさ、怖さ、その緊張感がよく判ります。世界的なオペラ歌手でも舞台袖で、信頼できる方に背中を押していただかないと舞台に出られないと言います。主人公が舞台に立つことに対する緊張感のあまり幻想を見てしまう気持ちはよく判りますし、主演のナタリー・ポートマンがそのあたりを上手に演じて素晴らしかったです。バレリーナは首を伸ばして足を外に向けて歩くので街でもすぐに判りますが、ナタリー・ポートマンは減量をされて、まるで本物のバレリーナになりきっていましたね」

佐野史郎さん (俳優)
『不惑のアダージョ』 井上都紀監督
「なんてったって、映画は色っぽくなきゃいけない。「昨年観た映画でお気に入りの1本」を振り返った時、まっ先に、この井上都紀監督の『不惑のアダージョ』が浮かんだ。抑え込んだエロスが、にじみ出るようにしてスクリーンを覆う。更年期を迎えたカソリックのシスターがストーカーまがいの信者につきまとわれたかと思うと、踊りのピアノ伴奏を頼まれたバレエ教室のダンサーにときめく。あるいは、崩壊しかけている家族に愛の手をさしのべようとすると、思わぬ形の結末を呼び込んでしまうこととなる。この映画は全編に音楽が重要な役割を果たしている。しかも主演の柴草玲さんは、一流のミュージシャン。この手の設定で俳優が演じる時は、手元のヨリ(手のアップ)は、大抵吹き替えだが、オルガン、ピアノのプレイは、もちろん自分で演奏し、音楽監督も兼ねている。ダンサー役の西島千博さん、橘るみさんも本物のバレエダンサー。“ホンモノ”の映画なのだ。もちろん、登場人物すべてが、本物の人間。全てが、あらわに映し出されている。怖い。音楽あり、踊りあり、家族の絆、禁断の恋…一見、マニアックな設定の単館系映画作品と受け止められかねないが、実は映画の王道を歩む作品なのだ。ところで、井上都紀監督の一作目の短編映画『大地を叩く女』も数々の賞を受賞したが、こちらも本物のドラマーをはじめ、バンドマンたちがホンモノの演奏を聴かせ、魅せてくれる。そのドラマーのGRACEとは僕も一緒にバンドをやっていて、その縁でこの『不惑のアダージョ』のことを教えてもらったのだが、観終わって、柴草玲さんの色香にヤラれてしまった私に、GRACEは「今度、紹介しますよ」と言うのだ。私は会うのが怖ろしくてその誘いを断り、未だに会わずに済んでいる。“ホンモノ”は怖い!」

◆特別部門
■「蘇る名画」 (特集上映・リバイバル上映された旧作のうち最も鮮やかに蘇った1作)
『河口』 中村登監督(1961/松竹) 
神保町シアター 特集上映 「女優とモード 美の競演」より

選定者/小林聖太郎さん(映画監督)、鈴木隆さん(毎日新聞映画記者)、大久保清朗さん(映画研究者)
選定理由/
様々な切り口を持った名画座の特集上映の中から、映画の衣裳に注目した「女優とモード 美の競演」を、視点の面白さ、センスの良さで選びました。いつの時代も映画の底力を上げるのは、各部門のスタッフの力。1950〜60年代の日本映画を中心としたこの特集では、撮影所システムの下、衣裳部をはじめとするスタッフがどれだけ優れた力を発揮していたのかがわかります。中村登監督の名作でありながらあまり知られていない『河口』は、実業家の愛人から画商に転身した女性の物語。岡田茉莉子扮するヒロインの多彩なファッションはもちろん、小津安次郎の「キャメラ番」として知られる厚田雄春による、小津映画の時とは異なる自由なカメラワークも必見です。

公式サイト
http://www.eigakanshugi.com/eigakantaisho/

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro TogawaYasuhiro TogawaYasuhiro Togawa