11月24日、JICA地球ひろばで「第4の革命−エネルギー・デモクラシー」特別上映会が行われ、NPO法人環境エネルギー政策研究所長・飯田哲也さんによる日本の再生可能エネルギーシフトの可能性について、講演が行われました。

 311の東日本大震災以降、エネルギー問題に対する世間の意識が高まったこともあり、会場は若い学生から年配の人まで、熱心な方々が数多く来場。エネルギーの分野の第一人者である飯田さんの話を熱心に耳を傾けていました。東日本大震災は日本に未曾有の被害をもたらしましたが、飯田さんは「明治維新と太平洋戦争に匹敵する、もしくはそれよりも大きな変化を起こさないといけない時が来ました」と警告。それが映画のタイトルにある「第4の革命」、すなわち自然エネルギーであり、農耕、産業、ITに続く人類史における革命としてとらえるべき事象だと切り出しました。

 しかし、原子力発電に頼らずに、自然エネルギーで100パーセントの電力を賄うということはできるのでしょうか。飯田さんはデンマークの中心部にあるサムソ島で「自然エネルギー100%アイランド」という社会実験に取り組んだ、サムソ島環境エネルギー事務所長ゾーレン・ハーマンセン氏の取り組みを例に挙げて、「彼はサムソ島に、島民出資の風力発電用の風車を作り、10年かけて電力の自給自足を実現させました。現在では、島の風車の85パーセントは地域の人の所有物。経済的なリターンと社会的なリターンが地域に戻ってくることでプラスの関係性が作れる。これこそがまさにエネルギーデモクラシーの本質です」と解説。そしてさらに「彼は世界の100人のヒーローに選ばれましたが、こういった普通の、しかし覚悟を決めた人が立ち上がることによって、世界が大きく変わる可能性を持ちえます。これまで石油と核をめぐって絶え間ない戦争がありましたが、これからは太陽が世界全体を平和にする時代が来たんじゃないかと思います」と付け加え、飯田さんによる講演は幕を閉じました。

 続く第2部では、飯田さんと、greenz.jp発行人の鈴木菜央さんとによる対談が行われました。鈴木さんが「国をあげて脱原発を宣言したドイツ、そして先述したデンマークのサムソ島など。自然エネルギーの分野では先に進んでいる彼らから我々が学べることはあるのでしょうか?」と問いかけると、飯田さんは「こういった運動には必ず中心に固有の哲学やビジョン、そして覚悟を持った人が出てきます。そういう人たちは、頭の中で生まれていく創造的なものを何とか形にしていこうと必死に努力をしていきます。そうやって小さなプロジェクトを成功させると、さらに協力者、理解者が増え、さらに大きな仕事が出来るようになります。それを繰り返して、知識と経験と積み上げていくことで信頼の厚みが増していき、世界へのネットワークが広がっていくんだと思います」とまずは一歩を踏み出すことの大切さを強調しました。

 自然エネルギーの分野では立ち遅れているように思える日本の現状ですが、「もともとドイツやデンマークでは、政府や電力会社にどんどんとデモをおこして異議申し立てをしてきた歴史があります。やはり彼らは群衆が集団化するのは怖いんですね。でも大企業の内側の個人はいろんな人がいて、中から変えようとする人もいます。ですからそういう人と個人レベルで対話を繰り返すことが大切かなと思います。実際、ドイツやデンマークでも70年代は賛成派、反対派が対立する時代もありましたが、80年代からは対話的になってきたという歴史があります」と飯田さんが解説する通り、日本における自然エネルギーへのシフトはまだまだ始まったばかり。鈴木さんも「(ドイツを脱原発に導いた)この映画が日本で上映されるということは、単に映画が日本に来たというだけでなく、(自然エネルギーへのシフトへ向けた)ひとつの大きな流れの中のきっかけだ思います。覚悟を決めた個人になって、一緒に頑張りましょう」と呼びかけると会場からは大きな拍手が起きました。

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執筆者

Inoue MidoriInoue Midori