祝リバイバル公開!を記念して、今活躍中の映画監督たちから、ユーモアを交えつつ監督独自の視線から清順作品を語る、個性豊かで熱いメッセージが届きました。観る者を虜にして放さない鈴木清順監督の世界は、今見ても尚健在であることを証明しています。
同内容のコメントが全文掲載されたバイバル公開のちらしは、今週末(11/19(金))から都内劇場にて配布。ぜひお手にとってみてください!!

コメント全文
*青山真治 (『東京公園』)
六十年代に日本映画の古典が終焉を迎えて以後の最高傑作は、おそらくこの三部作だ。それはいわゆる監督個人の「美学」というような相対的な理由ではない。終戦から二十五年を経て、その地点から戦前を冷徹に見据えた「魂」の、沈黙の絶叫。痛ましくも揺るぎなきこの「魂」を体験することが、さらに三十年が経った現在、なおさらに「遅れてきたものの新しさ」を輝かせ、より確実にこの国に覚悟を強いる。決して忘れられない「参りましょう」という少女の誘いに、いまどう応えるか。震えながらそれに戸惑う。

*石井裕也 (『ハラがコレなんで』)
『ツィゴイネルワイゼン』を18歳の時に観ましたが、意味が分かりませんでした。でもいま観ると、当時の自分の脳内を思い出します。この映画のように自由で、ハチャメチャで、何かを求めていた。やっぱり、10代の時に観ていて良かったと思いました。

*入江悠 (『劇場版・神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』)
清順映画の前では、ただ呆然と立ち尽くすしかない。こんなカッコいい映画がこれから日本映画史に生まれるだろうか。今はできるだけ誠実に絶句しようと思うばかりだ。

*大根仁 (『モテキ』)
僕は完全なるノーマルですが、高校時代に大井町武蔵野館で「ツィゴイネルワイゼン」「陽炎座」の二本立てを観て原田芳雄と松田優作に勃起しました。いや、正確には鈴木清順に勃起したのです。心のどこかでまだその勃起は収まっていません。

*大森立嗣 (『まほろ駅前多田便利軒』)
あえて言葉にすると艶っぽく、耽美で、儚くて、戯れている。
唯一無二であり、戯れている。そのせいなのか、とにかくものすごく格好いい。

*沖田修一 (『南極料理人』)
浪漫三部作に出てくる女の人たちに、実際会ってみたくなる。それでちょっと怖い思いをしてみたい。でも、出てくる男たちほど、色気ないから、たぶん相手にされない。

*鈴木卓爾 (『ゲゲゲの女房』)
ぬきさしならない女と男の狂気と呼吸を、おかしみを含ませ、粋な塩梅で繋いでみせる、清順監督の映画宇宙。この三つの映画はおそらくいつまでも、映画の愉しみと謎を湧き上がらせ、観る者の精神に深い影を落とし続けるでしょう。

*瀬々敬久 (『アントキノイノチ』)
いま、鈴木清順の映画を見ると自分の脳ミソはどうなるんだろう?考えただけでワクワクする。伝説なんてくそくらえ。いつの時代にとっても清順映画は新しい。

*富田克也 (『サウダーヂ』)
映画全盛の時代、あまりに自由な映画を作り続けたが故に撮影所を追われた男がいた。十余年の苦難を乗り越え、その人は、自由という芸術が本来持つべき姿そのものの様な美しい映画を作り上げる。
そして、全映画界を巻き込んだ長い闘争の果てにテント小屋上映は開始された—。鈴木清順。私たちはこの自由な魂を今一度、この時代に問い直すべきなのだ。

*深川栄洋 (『神様のカルテ』)
あれは、子供の頃に見た怖ろしい夢だった。そこから逃げ出したくてもがいていた虚しい世界。いつからか、その時間こそが美しく、快感だと知りました。いつまでも浸かっていたい鈴木監督が見た僕の三つの夢。

*前田弘二 (『婚前特急』)
狂気と根底に激しく流れる美意識。いつだって軽々と理屈をとびこえ、偏りがちな僕らの価値観をぶち壊す。
同時に、この世には知らないことがたくさんあるし、いろんな可能性があるんだって思えて勇気をもらいました。

*松江哲明 (『トーキョードリフター』)
“エロス”と”ロマン”を真に再生出来るのは、映画館のスクリーンと闇だけなのだ。今回の上映はそれを体感する絶好の機会だと思う。

*真利子哲也 (『イエローキッド』)
見世物として映画が持っていた淫靡な魅力を発揮させた鈴木清順の映画は、時が過ぎても目に沁みるほど匂い立っている。いま観ても相も変わらず鮮烈なツィゴイネルワイゼン、陽炎座、夢二。これぞ、日本映画の真髄か。

*三浦大輔 (『ボーイズ・オン・ザ・ラン』)
今、この時代に、『ツィゴイネルワイゼン』のような映画がつくられることはないと思う。それには諸々の理由があるが、とにかく、もう観れないのだから観ておくべき作品には違いない。

*山下敦弘 (『マイ・バック・ページ』)
ジャンルや枠を取っ払い、的確な線で映画自体をぼやかし、観た人の夢や記憶に侵入する恐ろしい映画…、いや艶っぽい映画…、いや笑える映画…、とにかく強烈に映画です。

*横浜聡子 (『ウルトラミラクルラブストーリー』)
このぼんやりとした終末の中で久々に観た清順監督の映画。そこは、現実と非現実を浮遊する豊かで潔癖な、イメージの海。想像、創造は、人間にしかできない。私の身体に、人間であることの小さな誇りと喜びが染みた。清順監督の映画は、黒煙立ちこめるどん詰まり中の、ほんの一瞬の、清らかな息継ぎでありました。

今年で88歳を迎える映像仙人・鈴木清順監督の“浪漫三部作”が、祝米寿!というメモリアルな時期に一挙リバイバル公開が決定!
7月に逝去した原田芳雄は主演作『ツィゴイネルワイゼン』はじめ三部作全てに出演、ギラギラした野性味溢れる魅力を大スクリーンで堪能できる絶好の機会!
<清順美学>と呼ばれる独自の映像美で、60年代から熱狂的ファンを生み続ける映画監督・鈴木清順。その圧倒的評価は日本だけに留まらず、ウォン・カーウァイ、ジム・ジャームッシュなど多くの映画人からリスペクトを得ている。その傑作群の中でも『ツィゴイネルワイゼン』(80年)、『陽炎座』(81年)、『夢二』(91年)の三作品は “浪漫三部作”と呼ばれ、鈴木清順監督の絢爛たる映画術の成熟が頂点を極めた代表作だ。
今年7月19日に惜しまれつつ逝去した原田芳雄(享年71歳)が主演した『ツィゴイネルワイゼン』は、野性味あふれる魅力で演じた原田氏の代表作であり、当時、ベルリン国際映画祭・審査員特別表彰を始め、国内の映画賞をも独占した不朽の名作だ。現在各地で行われている追悼番組や特集などで必ず取り上げられている。また原田氏は“浪漫三部作”すべてに出演しており、清順監督と成し遂げた偉業をたたえるとともに、スクリーンの中でいきいきと輝く姿を堪能することが出来る。
ニュープリントでふたたび大スクリーンに甦る三作品の一挙公開は、前回の企画「DEEP SEIJUN」から、およそ10年ぶりとなる。発表から三十年の歳月が過ぎた今なお観ても色あせない魅力を放ち、日本映画界が誇る最高傑作と言っても過言ではない。絢爛豪華で観る者を虜にして放さない清順ワールド——日本人ならば一度は観ておきたい! 艶やかな映像世界に酔いしれる至極の映画体験を、ぜひこの機会に味わって頂きたい。
 2012年1月中旬より、渋谷ユーロスペースほか、全国順次リバイバル公開!
※ニュープリントでの公開は東京はじめ一部の地域限定となります。
“浪漫三部作”初のブルーレイ化! ブルーレイ&DVD BOXが2011年12/21リリース!(発売・販売:ポニーキャニオン)

執筆者

Yasuhiro Togawa