11月3日福島県会津若松市で開催された東北映画祭 2011in会津 若松。被災地に映画で感動を届けている移動映画館MoMOなども参加している。
4日にはその移動映画館MoMOで、永島敏行が主演をしている牛狂いの父と牛嫌いの娘の絆を描いた映画『花子の日記』が上映された。
上映前には永島敏行が登壇し、作品の紹介と自身も深く関わる農業での風評被害の問題を熱く語った。

—会津はお久しぶりですか?

永島(以下省略):2年ぶりぐらいです。「獅子の時代」(NHK大河ドラマ/1980年)で菅原文太さんの弟、大竹しのぶさんが妹という形で、会津藩をやっておりました。会津は僕の中で一つの故郷、そういう思いがあります。

—「花子の日記」はどういう経緯で出演なさったんですか?

一昨年、松本監督という、とても離島好きで、離島を舞台にして映画を作っている若い監督が自分で台本を書いて、そこで僕は和牛の子供を育てる和牛生産者の役なんですが、セイシを巡る戦いと言っていますけれど、非常に親子を上手く描いているんです。韓国の親子と日本の特に男親と娘、韓国の男親と娘、その対比をするんですね。非常に韓国は濃密な関係であるし、日本は愛情を持っているんだけれども、表現がお互い下手でギクシャクしてしまう。それを、世界に誇る日本の国宝みたいな和牛のセイシを巡る闘いを軸に、横線は親子関係なんですね。親子映画ですね。

—今回は酪農ですが、永島さんは非常に農業に精通していらっしゃる。そういう思いもあって酪農の映画に?

それもあったんじゃないかな、と思いますね。実は、僕は20年位前に行った秋田で十文字映画祭を始めまして、そこをきっかけで米作りや何かをやらせてもらうようになって、農業に関心を持つようになって、8年前くらいから全国の生産者に直接東京に来てもらって農業・漁業・酪農やなんかを知ってもらって売り買いする青空市場を展開しているんです。会津若松からも出てもらってますし、南会津からも出てもらってるんですけれども、そういう意味では、僕は役者としても農業に関わったことで、役者ってなかなか広いようで狭い世界じゃないですか。ものを知っているようで上辺だけであったりもあるんだけど、僕は農業を自分で体験することで、自分の中の引出しというのを深められたのかな、と思いますね。

—少し映画とは離れますが、会津を盛り上げていこうということで、このような映画祭をやらせていただいています。僕らは東京ですが、東日本大震災後、風評被害というのがありますが、どういうお考えがありますか?

困った問題ですよ。僕は青空市場で月に1,2度のイベントじゃ農業の思いを伝えられないと思いまして、去年から八百屋も始めたんです。素晴らしい生産者がいて、その生産者のものを売っていこうと思って。地震があって、原発の事故がありました。正直、福島だけではなく、関東の野菜がほとんど売れなくなりました。この間、お盆に東京で「大丈夫ですよ」という証明書付きの福島の伊達の桃を売ったんですけど、500個売れたんですよね。それも安売りしないでくれ、という形で。正規よりちょっと安いけれども叩き売りはしない!福島応援をする場合にみんな応援しますと言いながらものすごく安値で売るじゃないですか。僕は「ふざけるな!」と思いますね。適正価格で買ってくれないと応援にも何にもならない、と思うんです。きちっとした値段で買ってもらわなきゃいけない。それと共に誰が東京を支えているんだ。東京の食は誰が支えるんだ、と思いますね。八百屋をやっていて、「西のものをはありませんか?」って言われるんです。もちろん僕らは西のものもいれているんですけれども、新鮮なものを食べてもらおうと思ったら、やはり東京近郊から野菜なんかは手に入れるんです。そういう意味では1千何百万人いる東京の自給率って、たった1%ですよ?何かあったら10万人しか食べられないところで、そういう意味ではたった1%ですよ。それを支えるのが東京の周りの町、農村地帯だったり漁村であったり、酪農であったり、林業だと思うんですよね。そこをきちんと理解してもらはなきゃいけない。その為には、国がきちんとした数字を出して、グレーじゃなく、分かってもらうしかないと思うんです。

—これから「花子の日記」を観る皆さんに一言お願いします。

松本監督が離島を描く、そこに非常に日本の持っている豊かさがあると思うんです。ものはないかもしれないけれども、そこに人がいる豊かさ、文化の豊かさ、美しさがあると思うんです。撮影したところは舞台になっている小豊島(おでしま)ではなく、手島というところなんですけれども、世界に誇れる美しさだと思うんですよね。そこに食文化があって文化がある。僕は日本の一番の宝は農村地帯、漁村地帯、地方だと思うんです。そういう意味では、映画になる題材が多く転がっているし、これから映画というものは、日本の地方を描くことで世界に発信していけると思うんです。そういう意味では、「花子の日記」では、何もない小さな島だけれども、そこに住んでいる人々の営みを観てほしい、そんな映画です。

—会津、そしてあと2日ある本映画祭へのメッセージをお願いします。

映画ですごく変えられることは中々ないかもしれないけれど、映画がきっかけになって、その土地なんかが変わっていくことがあると思うんです。映画が、その土地の産業や人たちと結びついていくことで何かを変えられることは可能ではないかな、と思うんです。僕らの責任は映画や何かを通して地方を輝かせていくことだと思っています。福島でこういう映画祭が行われることで横のつながりができることを望んでいます。これからも福島を応援していきたいと思いますし、福島の美味しいものをもっと食べていきたいと思います!

【映画「花子の日記」について】
2010年さぬき映画祭優秀企画賞&準グランプリをW受賞!
2011年ゆうばり国際ファンタスティック映画祭ではコンペティション部門に選出!
11月26日よりオーディトリアム渋谷にて公開!
出演:倉科カナ、永島敏行、金守珍、SORA、水野美紀
監督・脚本:松本卓也 / 配給:株式会社アクティブ・シネ・クラブ
2011/カラー/105分 ⓒ2011「花子の日記」製作委員会
オフィシャルWEB : http://hanakononikki.com

執筆者

有城裕一郎有城裕一郎