1932年カナダに生まれ、23歳のときに発表したデビュー・アルバム『ゴルトベルク変奏曲』でクラシック界に衝撃を与えた美しき天才ピアニスト、グレン・グールド。1964年以降、コンサートは開催せず、レコードのみを発表し、1982年に50歳という若さで逝去した。
グールドといえば真夏でも手袋とマフラーを手放さず、異様に低い椅子に座り歌いながら鍵盤を叩くといった、エキセントリックな言動ばかりが取りざたされる。
だが、「楽曲を分解し、別の形に組み直したかのような前例のないアプローチ」と評されるように、並外れた演奏技術と高い芸術性を持つ彼のピアノ演奏に人々は魅せられ、没後30年経とうとしている今でも残された彼の録音物により新たなファンを獲得し続けている。

これまで、彼の音楽家としての才能を描いた映像作品は数多くあったが、本作『グレン・グールド 天才ピアニストの愛と孤独』は、彼の知られざる内面に焦点をあて、グールドを愛した女性たちの証言でその謎に迫る。
グールドのデビュー当時の恋人フランシス・バロー、人妻である画家コーネリア・フォス、ソプラノ歌手ロクソラーナ・ロスラックなど、これまで公の場でグールドについて語ったことのなかった人々へのインタビューと、未公開の映像や写真、プライベートなホーム・レコーディングや日記からの抜粋などを通して、伝説の人物としてではなく、ひとりの人間としてのグレン・グールドに焦点を当てたドキュメンタリーである。

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執筆者

Yasuhiro Togawa