10月8日(土)より公開となるアクタン・アリム・クバト監督の最新作『明りを灯す人』。
政府の混乱により、文明の発展を望むように得られない中央アジア・キルギスの現状と、そんな中でも未来への希望を捨てずに、「いつか風力発電で村中の電力を賄う」夢を持ち続ける主人公“明り屋さん”の姿を描いた本作。
タイトルにもある“明り”は、文字通りの電気を意味すると同時に、未来への発展を願う“希望”も意味していると言えます。
一方で、日常生活の利便性を重視し、文明の発展を突き進んだ日本。その結果の一つとして原発事故により明日への安心すら揺らぐ生活を今、余儀なくされています。
「近代化・文明の発展」という点で、進み過ぎてしまったとも言える日本は、対極にあるキルギスから何を学べるのでしょうか。村人のことを第一に考え、ひたむきに想いを貫こうとする「明り屋さん」の姿は、これからの日本人のあるべき姿として、一つのヒントになるのではないでしょうか。
被災地や福島第一原発近くまで自ら赴き、原発報道でのメディアのあり方について講演なども行っている映画監督・作家の森達也さんや、先入観やまわりの環境に惑わされることなく個人にとって本当に必要なものを判断する、「断捨離」の発案者、やましたひでこさん他、たくさんの方々が本作に共感し、コメントをお寄せ下さいました。

「明りを灯す人」コメント  (敬称略・順不同)

もちろんこの映画は、福島第一原発が事故を起こす前に制作されている。その意味では、日本の電力行政に対しての
批判や風刺など込められているはずがない。でもやはり、今のこの状況では、痛切なメッセージとなって胸に突き刺さる。
森 達也——映画監督・作家(毎日が発見9月号より)

村人たちが強いられる貧困と続く暴力。そして、ラストシーンの電球の灯り。それは、理不尽の中、かすかに見えてくる希望。
明り屋さんの想いが受けつがれていくかのように。
やました ひでこ——断捨離

この映画で切り取られているキルギスの風景や暮らしには、昔ながらの生き方の知恵が脈々と受け継がれている。
彼らの生きざまにみられる品格は、時空を越えて共感を呼ぶだろう。
小長谷有紀——国立民族学博物館 教授

小さな家庭の中に明りを灯していく主人公の目線が、とても優しく心に響きました。
鶴田真由——女優
何げないキルギスの日常を描いているのかと思ったら、その奥に人類にとっての進歩と人間の幸せは同じなのだろうかという
本質的な問いかけに気づいて、はっとさせられた。
きむらゆういち———絵本作家
明りを灯す人 ストーリー
キルギスの小さな村の電気工。村人たちは彼を“明り屋さん”と呼ぶ。村人たちの暮らしを第一に考え、どんな些細な用事でも彼は
自転車でかけつける。そんな明り屋さんの夢は、風車を作って村中の電力を賄うことと、息子を授かること。
そんな中、ラジオから政治的混乱のニュースが流れ、私腹を肥やそうと都会から価値観の違う者がやってくる。穏やかな時間が流れる
田舎の村にも変化が起きようとしていた・・・。

公式HP:http://www.bitters.co.jp/akari/

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執筆者

Yasuhiro Togawa