本年度アカデミー賞主要4部門ノミネート!
【作品賞】【主演女優賞】【助演男優賞】【脚色賞】
<ジェニファー・ローレンス> <ジョン・ホークス>
サンダンス映画祭グランプリ&脚本賞2冠!

インディペンデント映画の新たな傑作と絶賛され、
全米の賞レースを沸かせた心揺さぶる人間ドラマ
サンダンス映画祭でグランプリ&脚本賞の2冠に輝き、第83回アカデミー賞では作品賞、主演女優賞、助演男優賞、脚色賞の4部門にノミネート。世界の主要映画賞で合計46部門もの賞を獲得した『ウィンターズ・ボーン』は、極めて小さな予算規模のアメリカ映画としては破格の成功を収めたヒューマン・ドラマである。とりわけ全米の賞レースでは、過酷な境遇を生きるごく普通の人々に光を当てた『フローズン・リバー』『プレシャス』に続くインディペンデント映画の傑作と絶賛を博し、2010年の各種年間ベストテンにも軒並みランクインを果たした。
ミズーリ州在住の作家ダニエル・ウッドレルの同名小説に基づくこの映画は、同州の山間部の村に住む少女リー・ドリーの物語。リーは青春まっただ中の年頃の17歳だが、心を病んだ母親の代わりに年少の弟と妹をかいがいしく世話し、その日暮らしの生活をどう切り盛りするかで頭がいっぱいだ。もはや生活資金も食べ物も底をつきかけたとき、さらなる決定的な難題が持ち上がる。とうの昔に家を出たドラッグ・ディーラーの父親ジェサップが警察に逮捕された揚げ句、自宅と土地を保釈金の担保にして行方不明になってしまったのだ。やむなくリーは家族を守るために自ら父親捜しに乗り出すが、ならず者だらけの親族や友人たちはまったく協力してくれず、露骨な妨害工作さえ仕掛けてくる。家を立ち退くリミットまで、残された時間はわずか一週間。まさしく命懸けの冒険に身を投じたリーは、その果てにいかなる真実を探り当てるのか……。
アメリカ映画の未来を担うスター誕生を告げる
ジェニファー・ローレンスの凛々しい輝き!
『ウィンターズ・ボーン』が観る者の目を釘づけにするのは、アメリカ社会から見捨てられたかのような山村の厳しい現実だ。大自然の凍てつく風景、あちこちに投げ出されたガラクタや錆びついた車、痩せこけた動物たち。そこで繰り広げられるのは、ひたむきで恐れを知らぬ少女の真実を追い求める旅。心の荒んだ大人たちに幾度となく罵声を浴びせられ、時には理不尽な暴力に打ちのめされようとも、主人公リーは決してくじけずにあきらめない。愛する家族と一緒に居続けるために、自分の未来を切り開くために。さながら地獄巡りのごとき小さなヒロインの冒険は、非情な掟に縛られた村に風穴を開け、閉ざされた闇の世界に希望の光を差し込ませていく。これは、そんな驚くべき奇跡をたぐり寄せる少女の成長物語なのだ。
あまりにも切実でリアルな感動を呼び起こすこの映画の凛々しさ、力強さは、アカデミー主演女優賞候補に名を連ねたジェニファー・ローレンスによって吹き込まれた。1990年生まれのローレンスは、『あの日、欲望の大地で』(08)で主役のシャーリーズ・セロンとキム・ベイシンガーを食うほどの存在感を発揮し、メジャー大作『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』(11)に抜擢されたことも記憶に新しい若手注目株。映画の舞台となった地域のアクセントを学び、その環境に溶け込むようにして撮影に臨んだという渾身の役作り、そして少女の感情の揺らめきを豊かに伝える表現力は、アメリカ映画界の次世代スターの誕生を強烈に印象づける。

注目の新進女性監督が力強く紡ぎ上げた、
少女の成長と希望。そして“生きる”ことの物語
苦難にさらされた人間がいかに生き抜いていくか、という根源的なテーマに真正面から取り組んだのは、これが長編2作目となる新進女性監督デブラ・グラニックである。ミズーリ州でオールロケを行い、高解像のレッド・カメラによる撮影を実施。プロの俳優と現地住民を混在させたキャスティングなどで地域密着のリアリティにこだわったグラニック監督は、コミュニティを蝕む貧困や薬物中毒といった社会問題、独特の生活風習や伝統文化を分け隔てなく映画にとり入れていった。また少女がたったひとりで父親失踪のミステリーの解明に挑むという形をとった本作は、不穏なサスペンスやノワールなムードにも彩られ、観る者を引きつけてやまない。
主人公リーの行く手をさえぎる村人たちを、ただならぬ迫力で演じた脇役たちも忘れられない。『君とボクの虹色の世界』(05)、『アメリカン・ギャングスター』のジョン・ホークスと『プレッジ』(01)、『チェンジリング』(08)のデイル・ディッキーは、独立系作品を対象とするアメリカの代表的な映画賞であるインディペンデント・スピリット賞の助演男優賞&助演女優賞をダブル受賞。なかでもリーの伯父ティアドロップに扮し、アカデミー助演男優賞にもノミネートされたホークスの鬼気迫る演技は圧巻のひと言である。

10月29日(土)TOHOシネマズシャンテ 他全国順次公開

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執筆者

Yasuhiro Togawa