原案・脚本・監督を手掛けるのは、西川美和。オリジナル脚本・監督デビュー作『蛇イチゴ』(第58回毎日映画コンクール・脚本賞受賞)では【家族】。続く長編2作目『ゆれる』(第59回カンヌ国際映画祭監督週間に正式出品)では【兄弟】。長編3作目の『ディア・ドクター』(第33回モントリオール世界映画祭コンペティション部門正式出品)では【ニセ医者】をモチーフに、<嘘>があぶり出す<真実>の人間の絆を、鋭い眼差しと深い心理描写で描いてきた気鋭の女性監督が、最新作に選んだのは【夫婦】。

 東京の片隅で小料理屋を営んでいた夫婦は、火災ですべてを失う。自分たちの店という夢を諦めきれない二人が選んだ再出発の手段は”結婚詐欺”。妻は女たちが抱える孤独を探し出して計画し、そこに夫が入り込んで実行する。まっとうではないとわかりながらも、やり直すためには金が必要。しかし、嘘の繰り返しはやがて、夫婦の間に、騙した女たちとの間に、さざ波を立て始める。歯車の狂った夫婦が、たどり着く先とは・・・。二人だけの≪本当の夢≫を求め、女たちに≪偽りの夢≫を売る夫婦の、優しくも切ない【愛】の物語。

 主人公となる夫婦の妻・里子を演じるのは、『ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ』で第33回日本アカデミー賞・最優秀主演女優賞、第83回キネマ旬報ベスト・テン・主演女優賞ほか数多くの賞に輝き、昨年の第34回日本アカデミー賞・優秀主演女優賞を受賞した『告白』以来の主演作となる、女優・松たか子。そして、夫・貫也を演じるのは、映画『舞妓Haaaan!!!』で第31回日本アカデミー賞優秀主演男優賞受賞、『なくもんか』やTVドラマ「マルモのおきて」(CX)では主演を務める等、映画・テレビ・舞台・音楽と幅広いジャンルで活躍する阿部サダヲ。
 西川美和は自らの原案を基にオリジナル脚本を執筆、長編4作目の監督作へ挑みます。時代を切り取る気鋭の女性映像作家と、俳優たちが創り出す”新しい日本映画の誕生”に、ご期待下さい。

■西川美和(原案・脚本・監督)のコメント
これまで自分がやってきていない「関係性」にトライしようと思ったのですが、普段からこと「夫婦」というのは奇妙だな、いびつだな、面白いな、と、どこの夫婦を見ても思っていまして、今回はそれに挑戦してみることに致しました。
松たか子さんは天性の品、阿部サダヲさんは天性の愛嬌、それに惹かれて出演をお願いいたしました。おふたりの組み合わせで夫婦をやってみて一体何が起こるのか、私もさっぱりワカリマセーン。たいへん楽しみです。
夫婦と並んで描こうと思ったのは女の人です。自分は男を書く方が筆が楽なので今までそうしてきたんですが、書いてみると今までいかにさぼって来たかがわかりました。女は難しいですが、何層にもコクがあって面白いです。男の人が女を好きな理由が少しわかった気がします。
灯りの消えた暗い東京に漂う「誰も見たことのない女たち」を描きたい。まあどうなるかはわかりませんが、志は高く、です。

■松たか子(市澤里子役)のコメント
西川監督の作品には、「今」という空気が強烈に漂っていながら、登場人物達が無気力になっていない、生命力があると思います。阿部サダヲさんは大好きな俳優さんなので、御一緒できるのがとても楽しみです。「夫婦」として、苦楽を共にして、この夏をこの作品に捧げたいと思います。

■阿部サダヲ(市澤貫也役)のコメント
夢売るふたりって、スゴイいいタイトルですよね。元々、色んな人に成り済まし願望みたいなものが強くて俳優を始めたとこもあるので、結婚詐欺の話って聞いてワクッてしたけど、台本読んだら全く自分が想像する詐欺師じゃなかった(笑)でも西川監督が脚本、演出という事ですから初めてお仕事するけど勝手に信用しちゃってます。同様に、松さんも勝手に信頼、尊敬してます!いつかご一緒出来たらと思っていたお二人なので大変光栄です。一生懸命、貫也だけに成り済ましたいと思います!よろしくお願いします!

■佐々木史朗(企画/オフィス・シロウズCEO)のコメント
ずいぶん前のことですが、旧皇族であると称する男女が礼装でおごそかなパーティを催し、有名人など多くの来客と寄付を集めたというニュースがあって気になっていました。とんでもない嘘のほうが人は夢を見たり、自分もそれがほんとうのことだと思ったりするのかね、と西川くんに話していたら、実は西川作品のプロデューサーだったエンジンフイルムの安田さんから「いつか結婚詐欺の話をやったら」といわれたことがあるんですよ、と云いだして、そこから詐欺をはたらく夫婦の物語までは一直線でした。
ドラマの軸はふたりの関係のありようをどう描くかで「そういえば「夫婦善哉」という映画があったね」「夫婦犯罪ですか、ははは」だったはずが、いつもの西川くんの取材力と人間観察力で、松さんと阿部さんという希望どおりの俳優さんを得た人間像は奥行きを増し、脚本は二人ならではの表情を持ちはじめ、魅力を放ちはじめ、勝手に動きはじめて私は困惑するばかりです。
これから先はカメラのレンズの向こうで、スクリーンの上で何が起きるのか、それを見極めたいと思っているのですが。

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執筆者

Yasuhiro Togawa