去る5月9日、東映の名誉会長 岡田茂氏が87歳で逝去されました。岡田氏は戦後発足し新興の映画会社だった東映で数々の時代劇や任侠映画をヒットさせ、同社を業界トップに押し上げ、また、映画業界に斜陽化の兆しが見えてきてからは、撮影所の合理化などにより映画会社の近代化を推し進めるなど、経営者としてその手腕を発揮、更には東映だけでなく、業界団体である映連や映団連の会長を務め“日本映画界のドン”として映画会の発展に尽力されました。
 日本映画界に偉大なる功績を残した岡田氏に感謝と敬意を表し、氏が「私がプロデュースした中でも、もっとも力のこもった作品」と語っていた『人生劇場 飛車角』を上映。本作品の演出を務めた沢島忠監督、岡田氏と共にプロデュースを担当した吉田達さん、そして常に現場に目を光らせていた岡田氏と関わったほぼ最後のプロデューサである坂上順さんをお招きして思い出話を語っていただきます。

SCHEDULE
8月27日(土)10:30「人生劇場 飛車角」の上映
上映終了後、岡田茂氏所縁のゲスト御三方“沢島忠/吉田達/坂上順”によるトークイベントを開催

■人生劇場 飛車角
1963年東映東京
企画:岡田茂/亀田耕司/吉田達 監督:沢島忠 脚色:直居欽哉 原作:尾崎士郎 撮影:藤井靜 録音:大谷政信
照明:川崎保之丞 美術:進藤誠吾 編集:田中修 音楽:佐藤勝
出演:鶴田浩二/高倉健/佐久間良子/本間千代子/水島道太郎/梅宮辰夫/楠侑子/山本麟一/曽根晴美/田中春男/加藤嘉/
月形龍之介/村田英雄

 時代劇が衰退の一途を辿る中、新たな路線を模索していた岡田茂氏が尾崎士郎の人気小説『人生劇場』の『残侠編』に着目して映画化。義理と人情と男の悲哀を背負った鶴田浩二や、悲劇のヒロインを演じた佐久間良子の体当たりの演技、沢島忠監督のスピーディーかつ斬新な演出で大ヒットし、後に続く任侠路線の先駆けとなった記念碑的作品。

岡田茂
東映株式会社名誉会長(元社長・会長)
岡田茂氏は、大正13年3月2日広島県西条町(現・東広島市西条)生まれ。
昭和22年東京帝国大学(現・東京大学)経済学部卒業。同年東横映画㈱(東映㈱の前身)に入社。
『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』を初プロデュース。昭和26年、東映㈱設立後、28歳で京都撮影所製作課長に抜擢される。『宮本武蔵』、『人生劇場 飛車角』、『五番町夕霧楼』、『仇討』、『柳生一族の陰謀』等を企画、製作し、東映の黄金期を支えた。
同社の社長・会長通算31年間務め、業界団体である社団法人、日本映画製作者連盟(映連)・社団法人映画産業団体連合会(映団連)会長も通算30年間務め上げた。この間、豪放磊落な面と鋭敏かつ周到な面を持ち合わせ、抜群の行動力と卓越した指導力を発揮して、日本映画界のドンと呼ばれてきた。
平成23年5月9日肺炎のため東京都内の病院で死去。
昭和59年11月藍綬褒章受賞、平成7年勲二等瑞宝章受賞。

執筆者

Yasuhiro Togawa