◆世界文学に未踏の領域を拓きつづける詩人、吉増剛造◆
日本を代表する詩人として国際的な尊敬を集め、今なお現代文学の最前線を走りつづける吉増剛造は、先鋭的な言語がその限界地点で言語以外のものと接する場所に絶えず身を置いてきた。60 年代から始められた自作の朗読は、音楽や現代美術との多彩なコラボレーションを展開しながら未曾有の言語/身体パフォーマンスへと昇華し、世界各地で熱狂的な反応を呼び起している。また、80 年代以降は写真家としての活動を本格化させ、国内外で個展や写真集の出版も多い。

◆ 50 年余の詩的実践の涯に出現した〈未開の庭〉のキセキ◆
映画への深い造詣、そしてジョナス・メカスやアレクサンドル・ソクーロフら世界的な映画作家との交友でも知られる吉増剛造が、ついに自らデジタルビデオカメラを携えて特異な「ロード・ムーヴィー」の制作を開始したのは2006 年。程なくして「gozoCine」と名付けられた作品群は、すべて詩人自らの手で撮影・録音・編集され、50 年余に及ぶ詩人の軌跡を新たな角度から照らしだすとともに、「映画」に未踏の領域を開く試みとして、言語とイメージの現在へ苛烈な問いを投げかけている。

◆言語とイメージの根源へと下降する新たな旅が始まる……◆
武蔵野の古井戸からブラジルの蟻塚へ、エッフェル塔から大阪・通天閣へ、横田基地から熊野の浮島、アリゾナの砂漠へ……。所縁の土地を再訪しながら詩の根源へと螺旋状に下りていく旅は、同時に泉鏡花、萩原朔太郎、折口信夫、中上健次、島尾ミホ、ベケット、イェイツ、ツェラン、デュラス、デリダ、ドゥルーズらの言葉を多様に響鳴させる。そしてまた、「奥の細道」を辿る旅がカルナックの環状列石へ、柳田國男の「海上の道」がフランク・ロイド・ライトの「夢の建築」へと通じ、さまざまな領域を横断した光と物質の共振を開示する。

◆文学と芸術の現在を問う、至高のロード・ムーヴィー集!◆
2009 年2 月には、シリーズ19 作品を収録したDVD+Book『キセキgozoCine』(オシリス)が、まったく新しい「書物」への挑戦として刊行され、各方面で大きな驚きをもって迎えられた。さらに山形国際ドキュメンタリー映画祭(2009 年10 月)、恵比寿映像祭(2010 年2 月)などで、それぞれ数作が上映されたのに伴い、その反響は静かに広がりつつあり、映画館でのロードショー公開を待望する声も高まってきた。

◆予告する光、来たるべき映画の幕を開ける夏の夜の夢……◆
そして今夏、現在まで5 年間にわたって制作されたgozoCine の全作品(52 篇)が、ポレポレ東中野を舞台に新たな「映画体験」として、レイトショーで一挙上映される。各日4 〜 10 篇を組み合わせた日替わりの計21プログラムで、gozoCine の世界に日々さまざまな対角線が引かれていくことになる。

吉増剛造(よします・ごうぞう)
1939 年東京生まれ。慶應義塾大学国文科卒業。在学中から詩作を始め、第一詩集『出発』(1964 年)以来、先鋭的な現代詩人として国内外で活躍。詩集『黄金詩篇』(高見順賞)、『オシリス、石ノ神』(現代詩花椿賞)、『螺旋歌』(詩歌文学館賞)、『「雪の島」あるいは「エミリーの幽霊」』(芸術選奨文部大臣賞)他多数。写真集『表紙』(毎日芸術賞)など。

◆YouTube にて予告篇on air http://www.youtube.com/watch?v=14S8scyG-BU
 (吉増氏自ら編集の予告篇。「予告する光」で検索するとすぐにヒットします)
◆上映期間中のトークゲストや関連イヴェントの詳しい情報は、下記で随時告知いたします。
 ポレポレ東中野 http://www.mmjp.or.jp/pore2/
 「予告する光」Official Site http://gozocine.info/
 「予告する光」Blog http://gozocine.seesaa.net/
 「予告する光」Twitter @gozocine
◆チケット情報
 当日=一般1500 円(大・専・シニア割引あり)
 前売=1回券1300円/3回券3600円/21日間フリーパス10500円
 前売1回券、3回券は、ポレポレ東中野劇場窓口、チケットぴあ、渋谷ユーロスペース、オーディトリウム渋谷、渋谷シアター・
 イメージフォーラム、テアトル新宿、新宿武蔵野館、新宿K’sCINEMA、下北沢トリウッド、神保町岩波ホール各館で発売中。

執筆者

Yasuhiro Togawa