2年に一度の山形国際ドキュメンタリー映画祭の年がやってきました。
いまだ事態の収束が見えない原発の不安と、多くの人々の復興に向かうエネルギーとが渦巻く東北という地で、私たちは今年も山形国際ドキュメンタリー映画祭を開催します。

“アジア初の国際ドキュメンタリー映画祭”として、1989 年から隔年で開催されてきた本映画祭も今年で12 回目を迎えることになりました。

公式サイト http://www.yidff.jp
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(1)【開催概要】
名称: 山形国際ドキュメンタリー映画祭2011    
会期: 10月6日(木)~13日(木) 8日間 
会場: 山形市中央公民館(アズ七日町)、市民会館、フォーラム山形、山形美術館
料金: ●前売券 1回券:1,000円 3枚つづり券:2,500円 10枚つづり券:6,000円
共通鑑賞券(公式カタログ引換券付き):10,000円
●当日券 1回券:1,200円(60歳以上の方:1,000円)3枚つづり券:3,000円 10枚つづり券:8,500円
共通鑑賞券(公式カタログ引換券付き):12,000円
●高校生以下無料
チケット発売日: チケットぴあ8月1日(月)

映画祭のプログラム:
■ インターナショナル・コンペティション   上映作品決定!!
□ アジア千波万波 (7月中旬頃、作品決定予定)

(以下6月20日現在、7月末、タイトルと詳細決定予定)
□ ニュー・ドックス・ジャパン
□ シマ/島2011—キューバ特集
□ テレビドキュメンタリー特集
□ やまがたと映画 
□ こどもと映画 
□ 回到一圏/日台ドキュメンタリーの12年後
□ 東日本大震災について考えるプログラム 

(2)【インターナショナル・コンペティション2011 決定作品】
山形映画祭第1回目からのプログラム。世界中から長編を対象に募集し、101の国と地域から応募された1,078本から厳選。バラエティに富む世界の最先端の表現が凝縮した珠玉の15本が決定しました! 今年は、17ヶ国の国々が製作に関わっています。

★下記、邦題はすべて仮タイトルです。

1 「失われた町のかたち」Images of a Lost City 
アメリカ・ポルトガル/2011/ポルトガル語/カラー/ビデオ/92分
監督:ジョン・ジョスト Jon Jost
● デジタル・ビデオの先駆者がリスボンを撮る●
 ポルトガル、リスボンの街角。坂のうえにある石畳の広場のベンチに腰かける女性たち。バイクにいたずらする少年たち。坂を行き来する人々。けだるく、ものうい光と風。路面電車。サッカーに興じる子供たち。長く伸びた樹々の影に重なるギターの響き。何の変哲もない日常の風景ではあるが、美しくしかしどこか切ない。ジョン・ジョストが15年の歳月をかけて撮り続けた「失われた町」に捧げる映像詩に隠された思いとは。本映画祭では1989年に『プレーントーク&コモンセンス』(1987)、1997年に『ロンドンスケッチ』(1997)、2001年に優秀賞を受賞した『シックス・イージー・ピーセス』(2000)、2003年に『ウイ・ノン』(2002)を上映した監督。

2 「阿仆大(アプダ)」Apuda 
中国/2010/中国語/カラー/ビデオ/145分
監督:和淵(ホー・ユェン) He Yuan
●中国雲南の少数民族の年老いた父と息子の暮らしから●
 中国雲南省北部。少数民族ナシ族の農夫阿仆大(アプダ)は、老いて体の自由のきかなくなった父親と二人暮らしをしている。暗い室内で薄明かりをたよりに、父が服を着て、煙草に火をつけ、床の上に起き上がるのを助ける。阿仆大自身は、父の介護のかたわら、果樹の手入れや水汲みにいそがしい。時には近所の老人が来て、不人情な息子の愚痴をこぼす。山の奥深い村に生きる父子を、悠揚たるリズムと深みのある映像で見つめ、生と死のドラマを映し出す。

3 「アルマジロ」Armadillo 
デンマーク/2010年/デンマーク語、英語/カラー/35mm/101分
監督:ヤヌス・メッツ Janus Metz
●アフガニスタン前線で戦う兵士たちに肉迫●
 アフガニスタンのPKO活動のために派兵されたデンマークの兵士たちに肉迫、最前線基地アルマジロ・キャンプでの緊張感に満ちた日々を綴る。タリバンとの交戦もはらんだテンションの高い日常のなかで過ごすうち、兵士たちは次第にアドレナリン中毒に陥っていく。テレビドラマ製作の経験もあるヤヌス・メッツ監督の、スピード感に満ちた語り口。兵士たちとともに銃撃戦のなかでカメラを回し続け、兵士たちの興奮状態を浮かび上がらせる。

④「密告者とその家族」The Collaborator and his Family 
アメリカ・イスラエル・フランス/2011年/ヘブライ語、アラビア語/カラー/ビデオ/84分
監督:ルーシー・シャツ、アディ・バラシュ Ruthie Shatz, Adi Barash
●イスラエル・パレスティナ紛争に翻弄される一家●
 密告者として長年イスラエルに通じていた父親が、その裏切り行為のためにパレスティナを追われ、妻と5人の子どもたちを連れてテルアビブに移り住む。イスラエルの保護を求めてやってきたにも関わらず、正式な滞在許可を与えられないまま、一家は絶えず不安定な生活を余儀なくされる。パレスティナでは裏切り者とされ、イスラエルからも切り捨てられた家族が、次々に起こる事件に翻弄される日々をスリリングに描く。YIDFF’05アジア千波万波『ガーデン』監督作品。

⑤「日は成した」Day is Done 
スイス/2011年/ドイツ語/カラー/ビデオ/111分
監督:トーマス・イムバッハ Thomas Imbach
●チューリッヒの自宅窓から見つめ続けた自伝的記録●
 郊外に聳え立つ煙突、飛び立つ旅客機、階下の路上で見られるさまざまな出来事など、アパートのベランダ越しに眺められた風景が、15年以上の歳月にわたり記録される。その一方、留守番電話に残されたメッセージが監督の私的生活を断片的に物語る。時にコマ落としで加速される日常風景の映像と、監督の生活を示唆する声。両者は時の流れの中で重ねられて世界のひとつの断面を浮き彫りにする。タイトルはニック・ドレイクの歌曲による。

⑥「殊勲十字章」Distinguished Flying Cross?
アメリカ/2011年/英語/カラー/ビデオ/62分
監督:トラヴィス・ウィルカーソン Travis Wilkerson
●親子で語るベトナム戦争の思い出話から●
 ベトナム戦争にヘリコプター部隊で従軍した初老の男が意気揚々と思い出話をしている。その語りを、左右に配置された2人の成人した息子が聞いている。向こうみずな悪ふざけとしておもしろく語られる戦争体験が、宗教画の↑ ような画面の構図と小説のような章立ての構成に括られて次第に印象が変わっていく。当時の兵士が戦場で撮ったカラーフィルムと、現地で流れていたかもしれない賑やかな歌謡曲が織り込み、語りとのさらなる不協和音が響く映画の冒険。YIDFF’99の『加速する変動』の監督。監督と父親と弟が出演。

⑦「川の抱擁」The Embrace of the River 
ベルギー・コロンビア/2010年/スペイン語/ビデオ/73分
監督:ニコラス・リンコン・ヒッレ Nicolas Rincon Gille
●コロンビアの大河の神秘と現実●
 コロンビア西部から、カリブ海に注ぐ全長1540キロのマグダレナ川。川沿いの住民は、日々の糧と同時に水の事故をももたらす川に宿る精霊モハンに畏敬の念を抱きながら生きてきた。神秘的な深い霧の中、葉巻や地元の蒸留酒をモハンに捧げ豊漁を祈願する人々。滔々と流れる川の流れに乗って語られるモハンとの遭遇談。それらはやがて、虐殺によって解体された遺体の部位が流れてくるという数々の証言によって、コロンビアが抱える現実と結びつく。川を、生と死、人間と精霊との交差点として見事に融合させ、息子や兄弟を亡くした女性たちの強い怒りと深い悲しみを静かに悼む。

⑧「監督失格」KANTOKU SHIKKAKU (“Director Disqualified”) 
日本/2011年/日本語/カラー/ビデオ/112分
監督:平野勝之  Hirano Katsuyuki
●急逝した人気女優への立ち切れぬ思い● 
 2005年、34歳の若さで女優・林由美香が逝った。本作は、1997年公開の東京から北海道礼文島への自転車二人旅ドキュメンタリー『由美香』の想い出から、その死に立ち会う瞬間、その後の映画の撮れない数年間、由美香への監督自身の恋心をストレートに吐露した、恋愛映画である。作品をコントロールしようとする監督と、むきだしの心でぶつかってくる由美香との破綻すれすれの攻防戦が、つねに映画の均衡を揺さぶるのが魅力的だ。そう、女優・林由美香との関係に終わりはない…。YODFF’99「白~THE
WHITE」上映。

⑨「ネネット」Nenette 
フランス/2010年/フランス語/カラー/35mm/70分
監督:ニコラ・フィリベール Nicolas Philibert
●植物園で飼われているオランウータンの視点から●
 パリの植物園で飼われているボルネオ生まれのオランウータン、ネネットはご高齢の40歳!人気者の彼女は、誰よりも長く植物園に住んでおり、ガラス越しに自分の檻を通り過ぎる何百という老若男女に見つめられる毎日を過ごす。そんなネネットとオランウータンたちの映像に、園のスタッフや訪問客の声がオーバーラップし、いつしか観客もネネットに見つめられる70分を体感する。YIDFF’93『音のない世界で』『ぼくの好きな先生』ニコラ・フィリベール新作。

⑩「遊牧民の家」Nomad’s Home 
エジプト・ドイツ・アラブ首長国連邦・クウェート/2010年/アラビア語、英語/カラー/ビデオ/61分
監督:イマン・カメル Iman Kamel
●因習をつき破るエジプトのベドウィン女性と共に●
 シナイ半島の荒涼とした砂漠で女性起業家として生きるセレマと出会う辺境への旅。モーセ山近くの水の枯渇した村で、初めて最初に学校に通った彼女は、夫に支えられながら因習と立ち向かい、ベドウィン女性たちに経済力と教育をもたらそうと試みている。監督のパーソナルな視点から語られる女性たちの営みは、エジプトで生まれ育ち、住いを転々とし、現在はドイツに住まう監督自身の<遊牧>民としてのいつしか人生とポエティックに重なり響き合う。

⑪「光、ノスタルジア」Nostalgia for the Light 
フランス・ドイツ・チリ/2010年/スペイン語/白黒、カラー/35mm/90分
監督:パトリシオ・グスマン Patricio Guzman
●天文学の聖地チリ・アタカマ砂漠の砂粒に消えた人々●
 世界中の天文学者が集まる、標高3,000メートルの高地のチリ.アタカマ砂漠。監督パトリシオ.グスマンは幼い頃の天文学への憧れを語りながら天文学の聖地であるアタカマを紹介、さらにここがピノチェト軍事政権下の弾圧の地であることを明らかにする。永遠とも思われるような天文学上の時間と犠牲者の遺骨を捜し求める遺族たちの止まってしまった時間。チリの歴史を描き続けるグスマン監督の、諦観に満ちた語り口と圧倒的な映像が際立つ。

⑫「星空の下で」Position Among the Stars 
オランダ/2010年/インドネシア語/カラー/ビデオ/111分
レナード・レテル・ヘルムリッヒ Leonard Retel Helmrich
●笑いや涙ありインドネシアのある一家のホームコメディ
 インドネシアの家族を12年間追い続けた三部作の完結編。両親を亡くし叔父一家と暮らす孫娘を訪ねて田舎から出てきた祖母を中心に、定職がなく闘魚に興ずる叔父とそれを嘆く妻との夫婦喧嘩、反抗期を迎えた孫娘の大学進学問題などがテンポよく映し出される。宗教間の衝突や貧富の格差、世代間の意識のずれを巧みに折り込みながら、家族を想う庶民の日常を、疾走するカメラワークでドラマチックかつユーモラスに描いた作品。

⑬「飛行機雲(クラーク空軍基地)」Vapor Trail (Clark) 
アメリカ・フィリピン/2010年/英語、タガログ語/カラー/ビデオ/264分
監督:ジョン・ジャンヴィト John Gianvito
●フィリピンの米軍基地跡地に残される毒と傷●
 朝鮮、ベトナム、湾岸戦争を通して米軍の重要拠点だったフィリピンの基地跡地では、化学物質の土壌汚染による住民の深刻な健康被害が出ていた。本作は、苦しむ被害者と家族の話を丁寧に聞きとるだけでなく、支援する活動家の闘いとその壮絶な個人史にもカメラを向け、フィリピン現代史で繰り返される社会的不公正の構図と虐げられてきた者の尊厳に光をあてる。さらに19世紀末の対米戦争の歴史を写真で織り交ぜ、支配関係の根深さを分析する。土本典昭監督へのオマージュ。

⑭「何をなすべきか?」What is to be done? 
フランス/2010年/アラビア語/カラー/35mm/152分
監督:エマニュエル・ドゥモーリス Emmanuelle Demoris
●エジプト・アレキサンドリアの路地裏に生きるコミュニティー●
 エジプト、アレキサンドリアのスラム街マフローザ。迷路のような細い路地にカメラは入り込み、そこに暮らす人びとの息遣いと、緩やかな時の流れへと観るものを誘う。家の浸水に悩まされる老人、夜の街で歌い踊る若者たち、モスクで説法する雑貨屋の店主。お茶や煙草を片手に彼らが語る人生と情熱、世界との関わり方に静かに耳を傾ける。そこには生きる歓びがある。

⑮「5頭の象と生きる女」The Woman with the 5 Elephants 
スイス・ドイツ/2009年/ドイツ語、ロシア語/白黒、カラー/35mm/93分
監督:ワディム・イェンドレフコ Vadim Jendreyko
●ドストエフスキーの名翻訳家が体現する文学の力●
 高潔なる知性を鋭い眼差しに宿す老翻訳家。実直に仕事に打ち込む彼女の手には戦争の記憶が深い皺となって刻まれている。ウクライナで生まれ、第二次大戦初期にドイツへと移住し、自ら「5頭の象」と称するドストエフスキーの長編5作の翻訳によって世に知られてからも、自身の過去への問いかけは続いていた。移住後はじめて訪れた故郷への旅の中で、それはウクライナの激動の歴史となって立ち現れる。一人の女性が歩んだ半生にひっそりと寄りそう静謐な映像が、文学の力によって高められる人間の尊厳をたおやかに描き出す。      
 
 
 (3)【山形美術館】
今年の山形映画祭で初めて山形美術館が会場に加わります。
当美術館は、民間主導で県と市が全面協力するという財団法人で運営されており、県民の美術館という理念に基づき活動してきています。改築時には、多層民家風の3階建て新館も加わり、作品収集や展覧会を行ってきています。

(4)【映画祭ボランティアの募集】
山形映画祭の運営には多くのボランティアが参加しています。2009年の映画祭では山形県内をはじめ全国から246名がさまざまな場所で活躍してくれました。今年もいよいよ募集が始まります。

主な活動
事前広報: 開催までの映画祭の告知です。
会場: 映画祭の運営の最前線。映画祭のイメージはここで決まります。
語学: 海外ゲストのアテンド、山形滞在中のおもてなし。
「デイリー・ニュース」取材・編集: 期間中毎日発行する新聞の記者です。
司会進行: 上映後の質疑応答などの進行です。
音声同通機器操作: 上映時の機器の操作が主です。
市民賞運営: 市民投票の運営です。
香味庵クラブ: 参加者と市民との交流の場の運営です。
レセプション: ウェルカム、さよならパーティなどの企画運営です。

以下の日程でボランティア説明会を開催します。
山形  7月16日[土]14:00~、19:30~(2回)
7月21日[木]14:00~、19:30~(2回)
※どの回も内容は同じです。
会場 山形市市民活動支援センター(山形駅西口 霞城セントラル23F)
※遠隔地の方は事前にご相談ください。
問い合わせ phone: 023-666-4480 (映画祭山形事務局)
東京 8月上旬予定
問い合わせ phone: 03-5362-0672 (映画祭東京事務局)

(5)【東京イベント:エルメスとのコラボレーション】

『ドキュメンタリーフィルムから見た世界(仮題)』 at メゾンエルメス「ル・ステュディオ」
A World through Documentary Films at Maison Hermes ≪Le Studio≫

この秋、山形国際ドキュメンタリー映画祭ではメゾンエルメス「ル・ステュディオ」と共同で、東京・銀座での映画上映を開催することになりました。

メゾンエルメスは、フランスの老舗メゾン、エルメスの旗艦店であり、2001年銀座にオープン。建築設計はレンゾ・ピアノ氏。10階に予約制のプライベートシアター「ル・ステュディオ」があります。
ヒューマニズムに根付いた芸術文化支援活動を一貫して担ってきたエルメスの方針に基づき、「ル・ステュディオ」では、独自の映画プログラムを通して映画文化を花開かせてきました。
今年、エルメスは、その魂ともいえる職人たちの人生を追った『Hearts & Crafts(邦題未定)』を発表します。この上映とあわせ、山形国際ドキュメンタリー映画祭の作品が今秋「ル・ステュディオ」に登場致します。

① YIDFF2011映画祭直後にゲストを迎えた新作の東京凱旋上映 
来日ゲストを迎えたトークイベント

② YIDFF過去の名作セレクション
山形ドキュメンタリーフィルムライブラリーより

③ エルメス製作の映画上映
『Hearts & Crafts』 監督: Isabelle Dupuy-Chavanat&Frederic Laffont/2011/52分

④ <パリの職人と手仕事特集> エルメス・セレクションのドキュメンタリー 

日時: 2011年9月末~10月 詳細は下記ウェブサイトにて発表いたします。
http://www.art-it.asia/u/maisonhermes
会場: メゾンエルメス10Fル・ステュディオ
〒104-0061 東京都中央区銀座5-4-1 

お問合せ: エルメスジャポン株式会社 コミュニケーション部 
Tel: 03-3569-3640  fax: 03-3569-3642

執筆者

Yasuhiro Togawa