本年度カンヌ映画祭・監督週間で、回を追うごとに会場に観客が殺到した、ミケランジェロ・フランマルティーノ監督の長編第2作、『四つのいのち』が、今週末の4月30日(土)より、シアター・イメージフォーラム他全国にて公開する運びとなりました。
映画評論家のおすぎさんが、数あるGW映画の中で「震災を経験した今だからこそ観るべき映画」として『四つのいのち』を挙げました。

おすぎ 『四つのいのち』、「こんな時だからこそ、この映画を見てほしいの。」

3月11日に起きた東日本大震災は、多大なる被害をもたらし、今多くの日本人に様々な課題が突きつけられている。そんな中、人間と自然との共生をテーマにした映画『四つのいのち』が今週末の30日より公開される。
舞台は南イタリア・カラブリア地方。山羊の群れを追う年老いた牧夫は、ある日、静かに息を引き取る。次の日、仔山羊が誕生する。初めての放牧で群れからはぐれてしまった仔山羊は、山中の大きな樅の木の下で眠りにつく。季節は流れて春になると、その大木は切り倒され、村の祭りの象徴として使われる。そして祭りが終わると、伝統的な炭焼き職人によって木炭へと生まれ変わる──。
人間、動物、植物、炭(鉱物)と「四つの生命」が連なっていく様子が、セリフを一切排して緩やかなに綴られていく。人間だけが自然界のなかで特別なわけではなく、4つの要素はみな同列であるという思いを込めたフランマルティーノ監督は「今、もう一度人間以外のものとのつながりをみつけたいと多くの人が考えていると思います。自分たちは切り離されていて、孤独で、すべての中心だという考え方がいかに不幸であるかと感じているのではないでしょうか。そういうことを考えるきっかけにこの作品がなればと思います」と語っている。
映画評論家のおすぎは本作を見て「穏やかな空気が溢れる不思議な映画に、心が落ち着きました。こんな時だからこそ、この映画を子供たちに見せたいの」と、震災の映像をテレビで見て、被災した人たちのことを思って疲弊した心に、安らぎを与える映画であると評した。
「最初は“何を言いたいの?”と考えたわ。」と語るも「今回の大震災を体験して、この映画を見て感じたのは、人間は地球をいじめちゃダメってこと。自然の中で人間が生きる原点を見せてもらいました。」(JUNON5月号より抜粋)と、この映画が訴えるメッセージをかみ締めている。
3月11日以降、多くの日本人の価値感が揺らぎ、これからどのような社会にしていくか、ひいてはこれからの地球のあり方について思索を巡らせる上で、『四つのいのち』は一つの示唆を与える映画であるだろう。

『四つのいのち』は4月30日よりシアター・イメージフォーラム他全国順次公開。

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執筆者

Yasuhiro Togawa