映画のWOWOWだからこそ贈り届けたい、映画フィルムを文化遺産として後世に残していくことの意義とは—。

レンタルビデオ店に行けば映画DVDが所狭しと並び、有料放送含めたテレビでは日々おびただしい数の映画が放送されるなど、映画は巷に溢れている。しかし、映画のオリジナルフィルムはどこに存在するのかということ、また、保存の必要性を考えたことのある人はどれくらいいるであろうか。
日本においては、東京国立近代美術館フィルムセンターが中心となって映画フィルムを保存している。図書館に「司書」がいるように、映画には文化遺産としてのフィルムを収集・記録・保存・修復する「フィルムアーキヴィスト」という職業があるのだ。まさに、「映画(フィルム)を保管(アーカイヴ)する」仕事である。そして、世界の映画フィルム保存の最前線には、FIAF(国際フィルム・アーカイヴ連盟)という約70の国と地域から140もの団体が参加する国際機関があり、2009年には、日本のフィルムセンター主幹である岡島尚志氏が第12代会長にアジア人として初めて就任した。
番組では、フィルムアーキヴィストとして、日本のフィルムアーカイヴ活動を20年以上牽引し、これからも世界と向き合っていこうとする岡島氏の活動を追う。そして、2011年3月に相模原に完成するフィルムセンターの新保存庫や、実際のフィルム修復の様子、また同センターに収蔵されている明治から昭和初期の貴重なフィルムの数々などを紹介しながら、なぜ、映画をフィルムで保管する必要があるのか、その意義を解説。
例えば、VHS〜DVD〜ブルーレイと、最新技術によるメディアの“進化”は利便性を増すと捉えられがちだが、新たなメディアの登場により古いメディアが次々と淘汰され再生不能となっていくことに対し、フィルムというメディアは、映写機ひとつさえあれば、時代も場所も問わず簡易に映画をその場に再生することができる、だから、フィルムのアナログ保存は、デジタルデータによる保存よりも、実はコストが抑えられる、といった意外な事実が明かされていく。しかし、保存だけでなく、修復や上映といった活動の中で、フィルムアーキヴィストが抱える苦悩も少なくない。
そして、日本のフィルム保存の現状も決して楽観視できるものでもない。岡島氏が草案を書きFIAFが世界に呼びかけたFIAF70周年記念マニフェスト『映画を捨てないで』には、小津安二郎や溝口健二ら巨匠監督による多くの戦前作品のフィルムが残っていない日本映画界の現実を嘆く岡島氏の強い思いが込められているのだ。フィルムアーキヴィストの活動や映画への思い、仕事の意義、誇り高き人生から我々が感じずにいられないのは、まさに“映画愛”そのもの。映画を愛し、映画に支えられてきたWOWOWだからこそ視聴者に贈り届けたい、“文化遺産としての映画のあり方”を考える一本。

<番組情報>
「映画を捨てないで 〜戦うフィルムアーキヴィスト」
4/25 (月)夜10:00〜
「ノンフィクションW」毎週月曜 夜10:00 放送中

執筆者

Yasuhiro Togawa