1/15(土)、映画『にくめ、ハレルヤ!』が大阪市・九条のシネ・ヌーヴォXと神戸市・新開地の神戸アートビレッジセンターで公開初日を迎え、舞台挨拶が行われた。

『にくめ、ハレルヤ!』は、「若手映像作家に映画を撮らせるチャンスを!」と、2005年に始まった大阪市の映像文化事業であるCO2(シネアスト・オーガニゼーション・大阪エキシビション)の第2回助成作品の1本だ。
阪神・淡路大震災で両親を亡くし、祖母と共に叔父の家に引き取られた主人公。認知症の祖母から、あの日瓦礫の街にサキという妹がいたと聞かされ、嫌応なしに震災の記憶と向き合うことになる。ふとしたことで知り合った少女・沙樹と逃避行を始める、というストーリーだ。出演は苧坂淳、藤本七海、特別出演として絵沢萠子。

舞台挨拶に登壇した板倉監督は「この映画は震災を再現したものではありません。舞台は震災から10年後、震災の面影がなくなった街の中で、再び震災に向き合わざるを得なくなった主人公がさまよう姿が描かれています。復興した街と主人公とが決定的にズレている事が描かれているんですが、この映画ではズレているということを一つの大事な視点にしています」

「震災当時、僕は中学生で大阪南部の街に住んでいました。揺れを経験して怖かったという思い出はあるんですが、その後TVで写された映像や、実際に震源地で近い所で経験された方の体験談では全く違っていました。この映画で描かれているズレと、僕と実際に震災を体験した方とのズレはとても似ていると思います。その差を埋めるためにこの映画を作ったと言えるかもしれません」

「この作品は神戸や大阪のロケで出来上がりました。その場所の風景や人の営みに支えられてできたものなので、今回上映できることで、そこに住む方々に撮ったものをお返しできるチャンスを得ました」と語った。

上映館の一つであるシネ・ヌーヴォで初日と2日目の観客の方々に感想を伺ったところ、
60代の女性は「ちょっと難しいところもあるんですが、いい映画でした。映像も凄かったです」
大阪芸大の学生である20代の女性は、「震災の時は沖縄にいたのでニュースでしか知りません。でも実際に体験すると、この映画のように子供はもちろん大人でも深いところで影響を受けるだろうなと思います」
朝日新聞の夕刊に掲載された板倉監督のインタビューを見て足を運んだと言う40代の男性は「震災のような体験は、後を引くといいますか、亡くなった人のことをいつまでも思ったり、妄想に至るような怖さもあると思います。ドキュメンタリーではなくこういう形で映画になって、色々な表現があるんだなぁと思いました」
別の40代の男性は、「構成の面で課題はあると思う。もっと凝縮されている方が良かったが、ロケーションは良かった。廃墟になったフェスティバルゲートや神戸の遊園地の映像などは凄い。主人公の空虚な感じも良く出ていたと思う」

全国ロードショー公開される作品と違って、万人が平均点をつけることはないかもしれない。
しかしインディペンデント映画ならではの作り手の熱意と、「何か」を掴み取り、映画にしようとする確固とした意思が溢れるこの作品。
震災と向き合うことになる時期であり、2/21(月)〜27(日)の日程で開催される第7回CO2の前哨戦としても興味深い。
この機会に劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。

(Text:デューイ松田)

公式サイト:http://www.shikounorappasya.or.tv/nikume/

上映情報
■シネ・ヌーヴォX
1/15(土)〜1/21(金)11:00/12:40/14:20
1/22(土)〜1/28(金)18:40/20:20
1/29(土)〜2/4(金)11:00

■神戸アートビレッジセンター
1/15(土)〜21(金)16:45
※18(火)は休映

執筆者

デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田デューイ松田