裁判員制度が始まり、何時自分が人を裁く立場になっても不思議でない時代がやってきた。そんな中、知っているようで知らない裁判の現実をエンタテインメント化した映画『裁判長!ここは懲役4年でどうすか」が11月6日、公開となった。裁判所を舞台にした映画と言えば『十二人の怒れる男』『告発の行方』『評決のとき』『フィラデルフィア』『それでもボクはやってない』などたくさんあるが、今までスポットが当たることがなかった傍聴人を主人公にしたのがこの映画だ。

原作は北尾トロのベストセラー『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』(鉄人社/文春文庫)。月刊『裏モノJAPAN』に連載された裁判傍聴記で、ライターである北尾が実際に法廷に通い続けて出会った公判やそれにまつわる人々が描かれている。
法廷は、お堅い法律用語に彩られたガチガチの世界ではなく、人間ドラマの坩堝。そこに集う、裁判官・検察官・弁護人・被告人・被害者・傍聴人、すべて人間なのだから、各人の主張、やる気の有無、個性が加わると、取り合わせ次第で信じられないようなグルーヴ感が生み出される。

映画の中で登場する数々の珍エピソードは、原作にあるように実際にあった出来事だ。「PEACE」仕様のキャラクタートレーナー着用で謝りまくるひき逃げ犯、傍聴席を埋める女子高生にはりきる裁判官のネチネチ痴漢テクニック解説、ヤクザの「兄貴、頑張って!」大合唱など、こんなのネタだろう!と呆れるものほど実話という凄まじさ。

主人公・タモツ役は、バナナマン・設楽統が観察者の本領を発揮。タモツの温度の低いツッコミには誰もが共感し、裁判の醍醐味にのめり込んでいくだろう。法廷を妄想SM劇場と化するクールビューティーな検察官に片瀬那奈。芸風の暑苦しさ全開で被告人として花を添えるバナナマン・日室勇紀。劇中ドラマ『愛と正義という名のもとに』の神業リアクション芸の弁護士役に斎藤工。宝塚風リアクションが冴える熟女ホルモン過剰なトンデモプロデューサー役に鈴木砂羽。タモツをディープな裁判傍聴の世界へ誘うダンディなベテラン傍聴マニア役に蛍雪次郎。その他、堀部圭亮、前田建、モト冬樹、平田満といった多彩な役者が脇を固める。

監督は、ホラー『怪談新耳袋』シリーズや爽やかフェティシズムの幻惑体験ドラマ『紺野さんと遊ぼう』、ちょっぴりビターな傑作青春映画『ソフトボーイ』と振れ幅の広い仕事ぶりの豊島圭介監督。公判における美人鬼検察官の女王様的仕事ぶりにお得意のサディスティック演出が冴え渡る。

他人の人生を高見の見物していたタモツと傍聴マニア達だが、息子の放火犯の冤罪を訴える母親との出会いで、傍聴人ならではのやり方で裁判に関わることを決意。裁判を優位に運ぶために、「裁判官マニア」「弁護人マニア」「公判データマニア」といった得意分野を活かした活動を開始する!
果たして有罪率99.9%のこの日本で、逆転無罪を勝ち取ることはできるのか!?注目の人間ドラマの行方と判決は、劇場で傍聴人として目撃せよ!

●公開表記
『裁判長!ここは懲役4年でどうすか』
公式サイト http://dosuka.jp/
配給 ゼアリズエンタープライズ
配給協力 マコトヤ

●公開日程
11月6日からシネ・リーブル梅田、
11月13日から京都みなみ会館、
11月20日からシネリーブル神戸 にて公開

Wrote : デューイ松田

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa