沖縄の小さな弁当屋の隣に建てられた、手作りのスタジオ「あじさい音楽村」—
最期まで若者に希望を遺したかったひとりの男と、彼を信じた若者たちの、感動の実話

「あじさい音楽村」—それは、美ら海水族館で有名な沖縄県本部町にある、全てが無料の音楽スタジオ。現地で弁当屋「あじさい弁当」を営む仲宗根陽(なかそねひかる)さんが、夢を持つ高校生たちを応援したい一心で借金をして作りました。ここから多くの高校生バンドがプロとして巣立つまさにそのとき、仲宗根さんは志半ばで病に倒れます。自らの余命を知りながらも懸命に若者を信じ愛し続けた仲宗根さんと、彼から”生きること””夢を追いかけること”を教えられる若者たちの姿は多くの人の心を打ち、NHKでドキュメンタリーとして放送され、書籍「僕らの歌は弁当屋で生まれた・YELL」にまとめられました。本作『天国からのエール』は、この感動の実話の映画化です。

仲宗根陽さんをモデルにした主人公・大城陽を演じるのは、『青い鳥』『自虐の詩』『歩いても歩いても』『ジェネラル・ルージュの凱旋』など幅広い作品に出演し、唯一無二の存在感を放つ俳優、阿部寛。不治の病と闘いながら若者たちを叱咤激励する、熱さの中に不器用な優しさをにじませる難役に挑みます。陽の妻・美智子を演じるのは、映画・ドラマで活躍、来年のNHK大河ドラマ「江〜姫たちの戦国〜」への出演も話題の演技派女優・ミムラ。太陽のような明るさで夫を支える献身的な妻を演じます。陽に背中を押され、「あじさい音楽村」でプロを目指す高校生バンド”ハイドランジア”の紅一点、ボーカル&ギターを担当するアヤには、『最後の忠臣蔵』『サマーウォーズ』など話題作への出演が相次ぎ躍進目覚ましい桜庭ななみ。監督は、『ゼロの焦点』『眉山』『タッチ』など、犬童一心監督作品で助監督を手がけた、熊澤誓人。本作で期待の長編監督デビューを飾ります。脚本は、「ラブジェネレーション」などのヒットドラマを生み、「アットホーム・ダッド」「結婚できない男」「白い春」など、阿部寛主演作品も数多く手がける尾崎将也と、新星・うえのきみこ。

10月13日にクランクインし、実際に「あじさい音楽村」がある沖縄県本部町でのオールロケを敢行。11月上旬のクランクアップ、2011年の完成・全国公開を予定しております。

●阿部寛 よりコメント 

大城陽のモデルとなった仲宗根さんは特別な存在だったのか、いや、ひょっとしたら自分も彼のような気持ちになれたかも知れない・・・常に自問自答しながらこの役を演じています。仲宗根さんに近しかった方々から、彼の人柄やその生き様を伺ったり、以前放送された「あじさい音楽村」に関するドキュメンタリーを何度も繰り返し見て、自分の中でご本人のイメージを膨らませてきましたが、実際、彼が生活していたこの町に来てみて、初めて掴めた部分が多いです。何よりも凄いと思ったのは、彼が亡くなって1年経った今も「あじさい」の若者たちの中に常に「他人を思いやる心」や「礼儀を大切にする心」が根付いて生きていること。この精神が映画を観た一人一人の中にも伝わっていけばよいと思います。仲宗根さんの10数年お弁当を作ってこられた手さばきを表現するため、撮影の2週間前から料理のプロの方から指導を受けたり、大きな「フライパン」を用意してもらい、自宅に持ち帰りゴーヤチャンプルを左手1本で返す練習を繰り返しました。監督・スタッフ・キャストをはじめ、みんなが一丸となって、この沖縄の穏やかな気候の中、心に沁みる作品にしたいと、日々、頑張っています。

●ミムラ よりコメント

まず実際の場所をお借りして撮影できることに深く感謝しています。
この土地のもつ空気感に大いに助けてもらいつつ、一人でも多くの人の心に「あじさい」の明るく力強いパワーが届くよう、私も微力ながら尽力したいと思います。

●桜庭ななみ よりコメント

初めて台本を頂いて読んだ時、夢を持ってそれに向かって打ち込む姿に感動しました。演じるにあたり、この物語で私の演じる比嘉アヤは、ギターボーカルで、一つの夢に向かって進んで行くのですが、日々成長していく様や気持ちの変化を伝えられるようにしたいと思いました。
同時に、私はギターを弾いたことが全く無く、撮影前や空き時間に練習を重ねて、少しずつ音が出せ、指先の皮が剥ける事が嬉しく感じました。
阿部さんとは2日間くらいしかお会いしていないのですが、先日私の18歳の誕生日を現場で祝って頂いた時に、お誕生日の歌を阿部さん含め皆さんで唄って下さって、本当に嬉しかったです。

●監督:熊澤誓人 よりコメント

沖縄県で弁当屋の地下に音楽スタジオを作り、若者に無料開放している人がいると伺い、「何故弁当屋でロック?」と興味を抱きました。そして、実際にスタジオを作った仲宗根さんとお会いしました。何かに真剣になれる場所を作りたい。そんな仲宗根さんの思いが、スタジオを使う若者達にも伝わり、「にぃにぃ」と呼ばれている仲宗根さんの表情が、父親の表情に見えて、若者達と仲宗根さんがまるで大きな「家族」のように感じました。今回は、実際に「あじさい音楽村」で撮影をさせていただくので、仲宗根さんの築き上げたもの、そこでともに生活した人の思いを、「家族」というテーマを中心に、どこまで表現できるか、と楽しみにしています。阿部さんは、作品全体をとらえた目線で物事を考えている方。とてもお話ししやすい方だと思っています。ミムラさんは、明るくて、すべてを照らしてくれる、とても暖かい方。桜庭さんは、清らかで元気があり、表情がとても豊かな人です。

●仲宗根陽さんの妻:仲宗根美幸さん よりコメント

沖縄のテレビで放送されたあじさい音楽村の映像を見て「とても感動したので、是非映画化したい…」とお話を頂いたのは、2009年7月でした。「俺の映画をつくりたいみたい…」「俺の役は阿部寛さんを考えているみたいよ〜」と、照れ笑いしながら、私に伝えてくれました。その時、主人はガンの余命宣告を受けていましたが、日常は元気に過ごしていました。家族の為に、あじさいの為に、何か残せるなら…との想いで映画化の話を前向きに考えてくれたと思います。「どんな映画になるのかなぁ〜」「ケンカのシーンが多いかもなぁ〜」「一緒に映画館で見ようね」と家族で会話しながら、とても楽しそうな主人の姿を想い出します。しかし映画化の制作決定を待たず、2009年11月15日、主人は他界しました。映画化のお話とほぼ同時に、本の出版のお話をいただき、ガンの痛みをこらえながら何時間も何日も取材を受け、2010年7月に「僕らの歌は弁当屋で生まれた・YELL」が出版されました。そして、映画化が決定し、主役も念願の阿部寛さんに決まり、夢の様な話が現実になりました。この映画の制作に携わる全ての方々へ、お礼と感謝を申し上げます。主人もきっと「天国からエール」をおくりながら見守っていると思います。

◆「あじさい音楽村」創設者:仲宗根陽(なかそねひかる)とは?

1967年1月21日沖縄県国頭群本部町生まれ。高校を自主退学後、海上自衛隊に勤務。18歳で上京し運送会社を興す。10年後運送会社を手放し、故郷の本部町で「あじさい弁当」を始める。98年、弁当屋の地下に借金をして手作りの音楽スタジオ「あじさい音楽村」を創設。すべてが無料の音楽スタジオは高校生を中心に大人気となる。やがて、プロを目指す若者が増え、有限会社あじさいミュージックを設立。数々のアーティストをメジャーデビューさせる。2005年8月、腎臓がんと診断される。再発を繰り返しながら、08年1月に余命3カ月と宣告される。同年から本部町観光大使に就任。同年、「あじさい音楽村」の功績が認められ第1回沖縄タイムス地域貢献賞を受賞。2009年11月15日逝去。享年42歳。

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執筆者

Yasuhiro Togawa