現在、ヒューマントラストシネマ有楽町にて絶賛公開中の『彼女が消えた浜辺』のアスガー・ファルハディ監督が、最新作『ナデルとシミンの離婚』の制作許可を取り消された。(26日付イラン各紙による)

ファルハディ監督は19日テヘランであった国内映画祭の授賞式で「国外に逃げた映画監督や俳優が、再びイランに戻って活動できることを望んでいる」と語った。これをイランの文化・イスラム指導省は「不適切な発言をした」として問題視し、発言の撤回を要求したが、ファルハディ監督は応じなかった。このため同省は24日に最新作の制作許可の取り消しを決定。撮影は全体の20%まで進んでいたところだった。

ファルハディ監督は、濃密な心理サスペンスを描いた『彼女が消えた浜辺』では第59回ベルリン国際映画祭最優秀監督賞(銀熊賞)受賞しており、その圧倒的な演出力は世界的に認められている。
また同作のセピデー役を演じた主演女優のゴルシフテェ・ファラハニーは、『ワールド・オブ・ライズ』(2007)でレオナルド・ディカプリオと共演し、世界的にブレイク。1979年のイスラム革命以来、初めてハリウッドに進出を果たすという快挙であったが、イラン当局の反感を買い、現在はパリに暮らしている。
イランの文化活動、とりわけ映画製作の現場では規制が強まっており、活動の困難な状況がうかがえる。

アスガー・ファルハディ監督 プロフィール
 1972年、イランのイスパハン生まれ。2003年に長篇映画「砂漠で踊る」(原題)で監督デビュー。04年長篇第2作「美しい街」(原題)で国内のファジル国際映画祭審査員特別賞を受賞。06年の第3作「水曜日の花火」(原題)はファジル国際映画祭の最優秀監督賞を始め3つの賞を受賞し、海外でもシカゴ国際映画祭で最優秀作品ゴールドヒューゴ賞、フランスではナント三大陸映画祭で脚本賞、スイスのロカルノ国際映画祭でも賞を受賞した。
 第4作『彼女が消えた浜辺』は初めて日本で劇場公開された、記念すべき作品である。

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執筆者

Yasuhiro Togawa