今なお多くの映像作家に影響を与え続けるフランス映画界を代表するルイ・マル監督のデビュー作『死刑台のエレベーター ニュープリント版』が、10月9日よりシアター・イメージフォーラム他にて公開される。
この作品で主演をつとめ一躍スターダムへと駆け上がり、今やフランスの国宝級の女優となったジャンヌ・モローにパリの凱旋門近くにある彼女の自宅を訪ね、ルイ・マル監督没後15年の今年、久しぶりにスクリーンによみがえる同作について初めて話を聞いた。

「ルイ・マル監督にはとても感謝しています。アメリカなど、世界中で公開された『死刑台のエレベーター』がきっかけとなって、私も国際的なキャリアに踏み出すことができたのは彼のおかげです」と、この作品がモロー自身の女優人生の中で極めて重要な作品として位置づけられることを語った。

『死刑台のエレベーター』は“ジャズの帝王”ことマイルス・デイビスが初めて映画音楽を手がけたことで有名だが、「『死刑台のエレベーター』の撮影現場で、マイルス・デイビスに会ったのは一度だけです。それは録音の夜でした。夜の11時に始まり、朝の4時に終了したんです。そこで私がしたのは飲み物を作って出すことだけでした」とマイルス・デイビスとのわずかな思い出を名残惜しんだ。

モローはルイ・マル監督作品『恋人たち』『鬼火』『ビバ!マリア』にも出演しているが、「ルイ・マル監督はとても要求が高い人だったと言えます。彼の仕事を本当に評価しています。4本の作品に出演しましたが、どの作品にも入り込むことができました。彼がヌーヴェルヴァーグに弾みを与えたと、私は思っています」と今年で没後15周年を迎えたルイ・マルを称え、「彼の作品8本が日本で再公開されるという素晴らしい出来事を知り、彼にとっても、その才能にとっても、とても嬉しく思います」と同時上映される他ルイ・マル8作品も改めて観てほしいと日本の観客にメッセージを送った。

今年で女優生活62周年を迎えたモローは今後の女優活動については、「オデオン座の二つの舞台に立ちます。一つは、フランスでとても有名な歌手のエチエンヌ・ダオーと共に、今年11月に生誕100周年を迎える詩人で作家のジャン・ジュネにオマージュを捧げた舞台に立ちます。そしてイスラエルの映画監督アモス・ギタイの母親にオマージュを捧げた舞台にも立ちます。2011年に製作されるギタイ監督の新作映画にも出演します。またこの冬には、日本でも、とても有名なマルグリット・デュラスを演じた映画作品「デュラス 愛の最終章」などで今までに何度も一緒に仕事をしたことのあるジョゼ・ダヤン監督の新作に出演します」。
舞台に映画にと、フランス映画界の頂点に立つ齢82歳の大女優はまだまだ躍進し続ける。

シアター・イメージフォーラムでは、『死刑台のエレベーター ニュープリント版』の公開に併せて、連日モーニングショーでルイ・マル監督の代表作『恋人たち』、『地下鉄のザジ』、『鬼火』、『好奇心』、『ルシアンの青春』、『ブラックムーン』、『さよなら子供たち』、『五月のミル』 を日替わり上映することも決定している。

《2010年8月31日(日本時間)》

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=48813

執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa