このたび神保町シアターでは、作家・居酒屋評論家の太田和彦さんセレクションの“これぞ酒場映画”決定版21本を特集上映致します。
どれも昭和の名匠たちが紡いだ名品揃いです。

映画に酒場はつきものです。人は何かを背負って居酒屋の暖簾を分け、酒場のドアを押す。問わず語りに、居酒屋主人、バーのママに心をうちあける。悩みも、愚痴も、野心も、欲望も。秘めたる恋も、せつない胸も。映画に酒場が欠かせないのは裸の心を描けるからです。男と男が、男と女が、女と女が酒場に入るのは、必ず自分の心を見せたいとき、酒の力を借りて告白したいとき。そんな場面を映画が見逃すはずがありません。

—太田和彦(作家・居酒屋評論家)

今回はマキノ正博監督の戦前の大日本麦酒PR映画「泡立つ青春」が目玉です。こちらの上映時には、ビール配布サービスも行います。
他に、大日本麦酒の広告宣伝も兼ねた、戦前のミュージカルコメディ「ほろよひ人生」
若尾文子が初々しくも快活なおにぎり屋の若女将に扮する「東京おにぎり娘」
山本富士子、京マチ子が銀座を舞台に火花を散らす吉村公三郎監督「夜の蝶」
大衆酒場に集う人びとを哀感を込めて描いた傑作・内田吐夢監督「たそがれ酒場」
実在の銀座のマダムを演じる高峰ヒデコの美しさが際立つ成瀬巳喜男の名作「女が階段を上がる時」など、巨匠、名匠たちが紡いだ名品揃いです。
どれも昭和の男と女の切ない関係がお酒と共に蘇ります。
映画の後に一杯飲みたくなる企画です。

【特別イベント】
◎ビール会社PR映画『泡立つ青春』
(マキノ正博監督/1934年/出演=保瀬薫、室町歌江、衣笠八重子/サッポロビール㈱提供)
★8月21日(土)の9月4日(土)の20:00〜、 9月10日(金)21:00〜よりビール無料プレゼントあり
【上映作品リスト】
≪一週目≫8月21日(土)〜8月27日(金)「人情酒場劇場」
1、音楽喜劇 ほろよひ人生 *東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
(監督=木村荘十二/1933年/出演=徳川夢声、藤原釜足、千葉早智子)
2、父子草(ちちこぐさ=ルビ)(監督=丸山誠治/1967年/出演=渥美清、淡路恵子)
3、洲崎パラダイス 赤信号(監督=川島雄三/1956年/出演=新珠三千代、三橋達也)
4、東京おにぎり娘(監督=田中重雄/1961年/出演=若尾文子、川口浩)
5、新・夫婦善哉(監督=豊田四郎/1963年/出演=森繁久弥、淡島千景)
6、泣き濡れた春の女よ(監督=清水宏/1933年/出演=岡田嘉子、大日方伝)
7、朧夜の女  *東京国立近代美術館フィルムセンター所蔵作品
(監督=五所平之助/1936年/出演=飯塚敏子、徳大寺伸)

≪二週目≫8月28日(土)〜9月3日(金)「居酒屋のある風景」
8、非情都市(監督=鈴木英夫/1960年/出演=三橋達也、司葉子)
9、大阪の宿(監督=五所平之助/1954年/出演=佐野周二、乙羽信子)
10、居酒屋兆治(監督=降旗康男/1983年/出演=高倉健、加藤登紀子、大原麗子)
11、居酒屋ゆうれい(監督=渡邊孝好/1994年/出演=萩原健一、山口智子)
12、新 居酒屋ゆうれい(監督=渡邊孝好/1996年/出演=舘ひろし、鈴木京香)
13、とんかつ大将(監督=川島雄三/1952年/出演=佐野周二、津島恵子)
14、たそがれ酒場(監督=内田吐夢/1955年/出演=津島恵子、野添ひとみ)

≪三週目≫9月4日(土)〜9月10日(金)「酒場と、男と女」
15、女が階段を上る時(監督=成瀬巳喜男/1960年/出演=高峰秀子、森雅之)
16、花影(監督=川島雄三/1961年/出演=池内淳子、佐野周二)
17、斑女(はんにょ=ルビ)(監督=中村登/1961年/出演=岡田茉莉子、山村聡)
18、夜の熱帯魚(監督=井上梅次/1969年/出演=野川由美子、香山美子)
19、夜の牝 花と蝶(監督=西河克己/1969年/出演=野川由美子、宍戸錠)
20、夜の蝶(監督=吉村公三郎/1957年/出演=京マチ子、山本富士子)
21、女は夜化粧する(監督=井上梅次/1961年/出演=山本富士子、川口浩、森雅之)

お問い合わせ先:神保町シアター
TEL 03-5281-5132 / FAX 03-5281-5134

執筆者

Yasuhiro Togawa