劇場スピーカー破裂やロバート・デ・ニーロへの出演オファー、ナイン・インチ・ネイルズ主題歌決定など、様々な話題を捲いたニューヨーク・トライベッカ映画祭でのアメリカ初上映ワールドプレミア。この4月25日の上映直後、アメリカの配給会社3社から熱烈オファーが入り、滞在中の塚本監督は各社と急遽ミーティングを持ち、協議を重ねていた。そして、5月12日から開幕したカンヌ映画祭でも、さらに2社のオファーを受け、合計5社がアメリカ配給権をめぐり、競い合うという、日本映画ではかつてない事態となった。
そのカンヌ会期中、5月21日、日本公開のまさに前日に、アメリカの配給会社が決定した。
北米配給権を勝ち取ったのは「IFC FILMS(=Independent Film Channel)http://www.imdb.com/company/co0015762/」。
米メディア・コングロマリットのRAINBOW MEDIAの系列会社であり、劇場配給網はもとより、ケーブルテレビとVODの強固なネットワークを持ち、99年の設立以来100本以上の良質な作品を世界中から集めている会社である。
ラース・フォン・トリアー、ガス・ヴァン・サント、ケン・ローチ、フランソワ・オゾン、マイケル・ウィンターボトム、ギャスパー・ノエ、など、名前を上げたらきりがないほどの錚々たる世界の監督たちの作品を配給している。
最近ではスティーブン・ソダーバーグ監督、ベニチオ・デル・トロ主演の『チェ』2部作公開で、全世界的な大ヒットを飛ばした。

アメリカ公開は、2010年秋以降、現在調整中。
このニュースは、会期中のカンヌを駆け回り、全世界の配給会社からオファーが殺到している。日本映画において、アメリカの配給が決定するという事は、作品のステイタスが間違いなく上がることであり、世界各国の配給会社もそれに呼応し、全世界での公開が保障されたようなものである。すでに、ドイツ、オーストリア、スイス、ロシア、ギリシャ、ブラジル、そしてアジア圏では香港、台湾と、10数カ国、瞬く間に決定した。
本作は全編英語で製作された作品であり、アメリカ公開を念頭に置き製作。09年7月の米サンディエゴでの製作発表会見を皮切りに、数々の世界の映画祭からの招待を受け、話題を振り撒いたが、ここに当初から計画していた“アメリカ上陸”が本決定し、さらにはそれに続き、世界各国の観客に向けて駆け巡るという事が、この瞬間に決定したのだ。

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執筆者

Yasuhiro Togawa