文豪・谷崎潤一郎は、とりわけ官能文学に優れ、そのデカダンで耽美的な文体、フェチシズム・同性愛などの衝撃的な題材と驚くべきストーリーは、普遍的な魅力を放ちつづけている。日本映画に与えた影響も計り知れず、『痴人の愛』、『卍』、『鍵』、『白日夢』など、何度も映画された作品も少なくなくない。
なかでも『刺青』は、谷崎が明治43年(1910年)に発表した処女作であり、刺青師が“光輝ある美女の肌”に“己の魂を刺り込む”までを描いた傑作短編だ。過去には1966年の増村保造監督×若尾文子版などが有名だが、21世紀に現代の物語として甦ったのが佐藤寿保監督×吉井怜版の『刺青』(2005年)、瀬々敬久監督×川島令美版の『刺青 堕ちた女郎蜘蛛』(2006年)だった。
 そして2009年、再び現代の“文芸官能ロマン”として甦ったのが、この“刺青シリーズ”の第3弾『刺青 背負う女』と第4弾『刺青 匂ひ月のごとく』。

第3弾『刺青 背負う女』のヒロインには、ユニチカマスコットガール出身で、映画『ビートキッズ』などに出演経験のある井上美琴。第4弾『刺青 匂ひ月のごとく』のヒロインには、『ヤンキー母校に帰る』でデビューし、映画『東京フレンズ THE MOVIE』(2006年)、ドラマ『きらきら研修医』(2007年)、舞台『CALL』(2009年)など女優として幅広く活躍している井村空美が演じる。

設定は現代でも、墨を刺すシーンでは変わらぬ“谷崎エロティシズム”をあふれさせる。

『刺青 背負う女』
2009年6月6日よりユーロスペースにてレイトショー
『刺青 匂ひ月のごとく』
2009年6月27日よりユーロスペースにてレイトショー

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa