最新作『精神』が6月に渋谷シアターイメージフォーラムで公開を控える想田和弘監督の怒涛の快進撃が止まらない。
岡山の精神科クリニックを舞台にモザイクやテロップ処理をほどこすことなく患者や周囲の人々を捉えた想田和弘監督のドキュメンタリー映画『精神』。08年の釜山国際映画祭とドバイ国際映画祭で最優秀ドキュメンタリー賞を、マイアミ国際映画祭で審査員特別賞を受賞し、既に3冠を達成。ベルリン国際映画祭(09年)にも『選挙』に続き正式出品され、すでに世界中で話題となっている本作だが、3月31日、第33回香港国際映画祭・ドキュメンタリーコンペ部門で、優秀賞 (Outstanding Documentary Award)を受賞した。

審査員団は「観客を精神病患者の世界にいざない、彼らの極めて人間的な物語を共有することにより、現代日本社会の精神状況というより大きな問題についても考えさせてくれる」と絶賛。

同映画祭で行われた2回の上映は、いずれも発売直後に完売。映画祭の中でも最も人気の高い映画のひとつとして話題を呼んだ。釜山国際映画祭、ドバイ国際映画祭での最優秀ドキュメンタリー賞、マイアミ国際映画祭での審査員特別賞に続き、今回の受賞で早くも4冠。

また、想田監督の快挙はまだ続く。前作『選挙』(07)が、4月1日、アメリカの権威あるピーボディ賞(第68回)を受賞!
TV・ラジオなどの放送作品で優れた業績をあげた個人・団体に贈られるピーボディ賞は、“放送界のピュリッツァー賞”とも呼ばれる大変名誉ある賞。今回、08年に放送されたラジオやテレビ番組、ウェッブサイトから、36作品が選ばれた。他の受賞作品/受賞者は、人気テレビシリーズの『LOST』、北京オリンピック開会式のNBC中継とそれを演出した張芸某(チャン・イーモウ)監督、CNNによるアメリカ大統領選挙のディベート番組、巨匠アルバート・メイスルズ監督の『ザ・ゲーツ』、CBSの「60ミニッツ」など、蒼々たる顔ぶれの中、見事受賞を勝ち取ったのは快挙といえる。

選考理由として、「赤裸々な、時に苦痛なほど滑稽な、想田和弘による本作は、日本を牛耳る自由民主党に担がれた新人候補によるドタバタな選挙運動を観察したドキュメンタリーである」と述べられている。授賞式は、5月18日ニューヨークのウォルドルフ・アストリア・ホテルにて行われる。

配給会社アステアではこの受賞と想田監督最新作『精神』の公開を記念し、『選挙』の再上映も予定している

関連作品

http://data.cinematopics.com/?p=47031

http://data.cinematopics.com/?p=45450

執筆者

綿野かおり綿野かおり