2008年9月19日に急逝した市川準監督。市川監督は、人を、町を“観る喜び”に満ちた、数多くのCM、映画を生み出した稀代の映像作家でした。このレトロスペクティヴでは、『BU・SU』 (87)から『あしたの私のつくり方』 (07)までの作品の中から、可能な限りフィルムで観ることができる作品を15作品上映します。また各作品の上映前に、“サントリー・オールド”シリーズ、“大日本除虫菊・金鳥”シリーズをはじめとする市川監督のCM傑作選の上映を予定しています。また、全日、これまで市川作品を支えてきた関係者によるトークショーを予定。初日には、故・市川監督の奥様にご来場いただき、ご挨拶をいただくことになっています。関係者だけでなく、これまで市川準監督の作品を愛していた観客の皆さんと市川監督の“お別れの会”になればとも関係者一同願ってやみません。その死によって、市川作品の再評価の機運は高まっているということができかもしれません。3/21からの追悼上映、4/11からの渋谷ユーロスペース、梅田ガーデンシネマでの『buy a suit スーツを買う』の公開だけでなく、2月末には、初の本格的な書籍である『市川準』が河出書房新社から刊行。高崎映画祭では追悼プログラムが組まれ、遺作である『buy a suit スーツを買う』がクロージング作品として上映されます。3月には、衛星放送と日本映画専門チャンネルが共同企画として追悼番組を製作、市川作品の連続放送も予定されています。また、海外の国際映画祭でもレトロスペクティヴ、『buy a suit スーツを買う』の上映が決定しました。ひとりでも多くの新しい観客の皆さんに市川作品を楽しんでいただければ、こんなに嬉しいことはありません。

■各作品の上映前に、”サントリー・オールド”シリーズ、”大日本除虫菊・金鳥”シリーズをはじめとする市川監督のCM傑作選の上映を予定

■ 全日、これまで市川作品を支えてきた関係者によるトークショーを予定。

■ 初日には、故・市川監督の奥様にご来場いただき、ご挨拶をいただくことになっています。

■上映作品
『BU・SU』1987
上映日:3/21(土)11:45〜・上映前に故市川準監督夫人・市川幸子さんによるご挨拶がございます。
(16mm版上映)1987年/95分/製作:東宝映画、アミューズ・シネマ・シティ/配給:東宝東和
脚本:内舘牧子/主題歌:原由子「あじさいのうた」/出演:富田靖子、大楠道代、伊藤かずえ、高嶋政宏
海辺の街に育った麦子は、ひとり叔母を頼って上京した。性格が”ブス”な麦子は、芸者の見習いとなったのだ。初めてふれる東京。同級生たちの”いじめ”。ひとりの少女が、様々な経験を重ねる中で自分の殻を打ち破って成長していく姿を描く、市川準監督の映画デビュー作。

『会社物語 MEMORIES OF YOU』1988
上映日:3/22(日)14:00〜 3/26(木)14:00〜
1988年/99分/製作:松竹、日本テレビ、SEDIC、坂本事務所/配給:松竹
脚本:鈴木聡、市川準/出演:ハナ肇、西山由美、犬塚弘、安田伸、桜井センリ、石橋エータロー、伊東四朗、谷啓、植木等
定年を迎える会社員・花岡。その孤独。人生の希望を失いかけた彼に、同僚が若い頃情熱を傾けたジャズのコンサートをやろうと持ちかけた…。本当のことを言えない人々の表情の、雄弁さに、注意を注ぎ続けること。クレージーキャッツのハートをプレゼントすること…。

『ノーライフキング』1989
上映日:3/23(月)11:45〜
1989年/106分/製作:ニュー・センチュリー・プロデューサーズ、新潮社、サントリー/配給=アルゴ・プロジェクト
原作:いとうせいこう(新潮社刊)/脚本:じんのひろあき/音楽:はやしこば、鈴木さえ子/出演:高山良、中村伸郎、イッセー尾形、嶋田久作
「外に出てみて下さい。リアルですか?」テレビゲームにのめり込み、現実とゲームの世界が反転し、虚構がリアルに転じる子供たち。では、”リアル”とは何なのか? 子供たちにとっての”リアル”をアイロニカルに描き出した作品。 

『つぐみ』1990
上映日:3/26(木)16:15〜 3/27(金)11:45〜
1990年/105分/製作:松竹富士、全国FM放送協議会、山田洋行ライトヴィジョン/特別協力:FM東京/配給:松竹
原作:吉本ばなな(中央公論社刊)/出演:牧瀬里穂、中島朋子、白島靖代、真田広之
西伊豆の海辺。ひと夏を過ごす少女たち。わたしの心の帰るところは、あの頃、”つぐみ”のいた日々だけに、ある…。かけがえのない日々、かけがえのない時間…いつ消えてしまうかもしれない、”かけがえのなさ”を描いた傑作。

『病院で死ぬということ』1993
上映日:3/25(水)14:00〜 3/26(木)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:岸部一徳さん)
1993年/100分/製作:中高年雇用福祉事業団、オプトコミュニケーションズ、スペースムー、テレビ東京/製作協力:主婦の友社/制作:近代映画協会/配給:オプトコミュニケーションズ
原作:山崎章郎(主婦の友社刊)/出演:岸部一徳、塩野谷正幸、石井育代、七尾伶子、山内明
ガンの告知を受けた入院患者と家族。ターミナルケア(末期医療)に取り組む医師や看護婦の姿を、定点観測するかのように見つめ続ける異色作。そして、物語の間に挿入される市井の人々の四季の暮らし。生きているということ…。

『東京兄妹』1995
上映日:3/22(日)11:45〜 3/24(火)16:15〜
1995年/92分/製作:ライトヴィジョン/配給/ギャガ・コミュニケーションズ=ライトヴィジョン共同配給
脚本:藤田昌裕、鈴木秀幸、猪股敏郎/出演:緒形直人、粟田麗
妹は兄を想い、兄は妹を想った。ふたりの時間は永遠のようだった。しかし、妹は別の男を愛し始める…。記憶の中にある失われた故郷「東京」。その片隅に生きる兄妹の姿を静謐な映像の中に描き出し、海外からも賞讃を浴びた。

『トキワ荘の青春』1996
上映日:3/21(土)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:小林達比古さん/撮影、橋本泰夫さん/録音) 
3/25(水)11:45〜
1996年/110分/製作・配給:カルチュア・パブリッシャーズ/製作協力:オプトコミュニケーションズ、近代映画協会
脚本:市川準、鈴木秀幸、森川幸治/出演:本木雅弘、大森嘉之、古田新太、生瀬勝久、鈴木卓爾、阿部サダヲ
昭和30年代、手塚治虫が住み、明日を夢見る若い漫画家、石森章太郎、赤塚不二夫、藤子不二雄らが青春時代を過ごした実在のアパート”トキワ荘”。彼らの笑い、涙…。寺田ヒロオを軸に、ただひたすらに漫画を愛した若者たちの物語。

『東京夜曲』1997
上映日:3/21(土)16:15〜 
3/25(水)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:大島征夫さん/クリエイティブディレクター ほか)
1997年/87分/製作:衛星劇場、近代映画協会/配給:松竹=松竹富士
脚本:佐藤信介/挿入歌:高田渡「さびしいといま」/出演:長塚京三、倍賞美津子、桃井かおり
男が商店街に帰って来た。優しく迎える妻。妻が想いを寄せる青年。そして、男のかつての恋人…。街はざわめきはじめ、愛のセレナーデが流れはじめる。人の心の機微と東京の風景が紡ぎ出す大人の愛の物語

『大阪物語』1999
上映日:3/23(月)14:00〜 
3/24(火)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:クリエイティブディレクター石井達矢さんと”ゆかいな仲間たち”)
1999年/120分/製作:吉本興業、関西テレビ放送、電通、近代映画協会、エス・エス・エム/配給:東京テアトル=「大阪物語」製作委員会
脚本:犬童一心/出演:池脇千鶴、南野公助、沢田研二、田中裕子、ミヤコ蝶々
大阪を舞台に描いた売れない漫才夫婦と14歳のその娘の物語。男とか女とかちょっと分かりかけた多感な年頃。ごっつうしんどい夏でした…。8代目三井のリハウスガールに選ばれた池脇千鶴の映画デビュー作。

『ざわざわ下北沢』2000
上映日:3/27(金)14:00〜 
2000年/105分/製作:パグポイント/企画:シネマ・下北沢、市川準事務所/配給:シネマ・下北沢
脚本:佐藤信介/出演:原田芳雄、北川智子、小澤征悦
オール下北沢ロケ。下北沢に住む人々の人間ドラマ。古いものと新しい物が入り混じって、老若男女、いろんな人々が狭い街で、肩を触れ合いながら過ごしている町。人々の息づかいが聞こえてくる…。

『東京マリーゴールド』2001
上映日:3/23(月)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:周防義和さん/音楽) 3/24(火)14:00〜
2001年/97分/製作:東京マリーゴールド製作委員会、電通、テンカラット、オメガプロジェクト、シィー・スタイル/配給:オメガ・エンタテインメント
原作:林真理子(紀伊國屋書店刊『東京小説』より)/音楽:周防義和/出演:田中麗奈、小澤征悦、斎藤陽一郎、寺尾聰、樹木希林
まるでマリーゴールドのように、1年限りで終わってしまうユリコの切ない恋…。「まだまだ撮り残している(東京の)アングルや場所がある」と、林真理子の短編小説「一年ののち」を基に期間限定の恋を描いた作品。

『竜馬の妻とその夫と愛人』 2002
上映日:3/26(木)11:45〜 3/27(金)16:15〜
2002年/115分/製作:東宝映画/配給:東宝 東宝・博報堂提携作品
原作・脚本:三谷幸喜/音楽:谷川賢作/出演:木梨憲武、中井貴一、鈴木京香、江口洋介
三谷幸喜が2000年東京ヴォードビルショーのために書き下ろした舞台劇を「笑えるものを真剣に映画で」と映画化。竜馬暗殺から13年後の横須賀を舞台に、亡き竜馬をめぐって4人の男女が繰り広げる一大騒動を描いた笑えるスクランブル・ラブ・コメディ!

『トニー滝谷』2005
上映日:3/22(日)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:広川泰士さん/撮影) 3/23(月)16:15〜
2005年/75分/製作:WILCO/配給:東京テアトル/配給協力:スローラーナー/協力:ジェネオン・エンタテインメント、セルロイドドリームス
村上春樹「トニー滝谷」(文藝春秋社刊『レキシントンの幽霊』)より/音楽:坂本龍一/出演:イッセー尾形、宮沢りえ/ナレーション:西島秀俊 
「トニー滝谷の名前は、本当にトニー滝谷でした。」トニーの孤独。そして、ひとを愛することの喜びと、愛するひとを失う切なさ…。念願のキャストで、村上春樹の同名短編小説を映画化した透明感溢れる傑作。

『あおげば尊し』2006
上映日:3/22(日)16:15〜 3/27(金)18:30〜・上映前トークあり(ゲスト:テリー伊藤さん)
2006年/82分/製作:AZOTH/配給:スローラーナー
原作:重松清(新潮社刊)/音楽:岩代太郎/出演:テリー伊藤、薬師丸ひろ子、麻生美代子、加藤武
厳格な教師だった父が死ぬ。それを、自宅介護をしながら戸惑いながら受けとめようとする家族。そして、死の意味が分からない少年。父は黙ったまま、最期の授業をする…。『病院で死ぬということ』に続き、市川監督は再び現代の”死”と”家族”を見つめる。

『春、バーニーズで』WOWOW 2006 ※初の劇場特別上映
上映日:3/21(土)14:00〜
ビデオ上映/放映日:2006・2・19/120分/製作:WOWOW
原作:吉田修一(文藝春秋刊)/出演:西島秀俊、寺島しのぶ、栗山千明、倍賞美津子
30代の平凡な会社員・筒井と翻訳家の妻。一見平和なのに、裏側には危険を孕んだ現代の夫婦関係。筒井は、ふとしたはずみに、もう一つの時間へ、すべて捨てようとしている自分に気付く…。社会からの浮遊感、存在の危うさを描いたギャラクシー賞テレビ部門月間賞(’06.2)に輝いた。 

『あしたの私のつくり方』2007
上映日:3/24(火)11:45〜 3/25(水)16:15〜
2007年/97分/製作:日活、博報堂DYメディアパートナーズ、ソニーミュージックエンタテインメント、スカパー・ウェルシンク、講談社、朝日新聞社、テレビ朝日/配給:日活
原作:真戸香(講談社刊)/脚本:細谷まどか/出演:成海璃子、前田敦子、石原真理子、石原良純
学校では目立たず、いい子であろうとする寿里は、日南子に架空の物語、人気者”ヒナ”のハッピーな物語をメールで送る。”本物の自分”と”偽りの自分”。でも、彼女たちは、自分たちの”現実の物語”を生きなければならない…。

■ 関連書籍
『市川準』定価 本体2000円 河出書房新社・編
数多くのヒットCMを手掛けた名ディレクターであり、国際的評価の高い映画を発表し続けた監督・市川準、初の本格的な書籍。作家、俳優等寄稿、インタビューで構成、人間・市川準の魅力に迫る。付/映画・主要CMデータ

各界寄稿・インタビュー
よしもとばなな、三谷幸喜、岩井俊二、犬童一心、天野祐吉、安西水丸、川本三郎、樹木希林、桃井かおり、イッセー尾形、本木雅弘、富田靖子、西島秀俊、周防義和、堀井博次……。

企画:市川準事務所/ユーロスペース/スローラーナー
後援:市川準監督 お別れの会事務局

期間:3/21(土)〜27(金)
会場:渋谷ユーロスペース(92席)
東京都渋谷区円山町1‐5(渋谷・文化村前交差点左折)tel.03-3461-0211 http://www.eurospace.co.jp/

関連作品

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執筆者

Yasuhiro TogawaYasuhiro Togawa