哲学的テーマ、膨大なダイアローグの“封印”を宣言!
より娯楽性の強い、全く新しい押井作品の誕生!

「GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊」(95)、「イノセンス」(04)など世界的に高い評価を受ける押井守監督(55)の最新作「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」が、4年ぶりの長編アニメーション作品として2008年に劇場公開される。
原作は、総著作発行部数800万部を突破し、若い世代から熱狂的な支持を受けるベストセラー作家・森博嗣氏による全5巻完結の人気シリーズ。 物語の舞台は、ありえたかも知れないもうひとつの現代。主人公は、思春期の姿のまま、永遠に生きることを宿命づけられた≪キルドレ≫と呼ばれる子供たち。大人たちが作った「ショーとしての戦争」を戦うキルドレたちが、常に死を意識しつつも、今目の前にある現実を受け容れ、日々を精一杯生きる姿を描いている。

「僕は今、若い人たちに伝えたいことがある。」 監督 押井 守

私は昨年の夏、55歳になりました。
 映画監督としては、若くも、年寄りでもない。まだまだ、やりたいことは山ほどあるのですが、世間一般で言えば、壮年と言われる齢を生きている事を、自覚するようになりました。いつの間にか、周りが若いスタッフばかりになり、大人になったひとり娘と向き合うことが多くなった事が、その理由かもしれません。

 今、映画監督として何を作るべきか。私は、今を生きる若い人たちに向けて、何かを言ってあげたいという思いを、強く抱くようになりました。
 彼らの生きるこの国には、飢餓も、革命も、戦争もありません。衣食住に困らず、多くの人が、天寿を全うするまで生きてゆける社会を、我々は手に入れました。しかし、裏を返せば、それはとても辛いことなのではないか──と思うのです。望んで天国に逝った男が数日で飽きてしまった、という寓話がありますが、欲しかったものを目の前にした瞬間、そのものの本質が立ち現れる。人間とは、贅沢なものです。
 私はこの歳になって、ますます生きることの難しさを実感し始めています。そして、これから人生の実相を知ることになる若者たちへ向けて、何か伝えるべき事があるのではないか、と考え始めたのです。

 私は、この永遠にも似た生を生きなければならない現代人のおかれた状況そのものが、若者を中心とした、様々な痛ましい事件の本質的な理由なのではないかと考えています。
 親が子を殺し、子が親を殺す時代。何の理由もなく、若者が自らの命を絶つ時代。物質的には豊かだけれど、今、この国に生きる人々の心の中には、荒涼とした精神的焦土が広がっているように思えてなりません。

 そんな時代を生きる若者たちに、何を言ってあげたら良いだろう?

「スカイ・クロラ」の主人公たち「キルドレ」は、生まれながらにして、永遠の生を生きる事を宿命づけられた子供たちです。彼らは寿命で死ぬことがありません。普通に暮らしている以上、永遠に思春期=アドレッセンスな姿のままです。
 映画の舞台は、あり得たかもしれないもうひとつの現代。キルドレたちは、大人たちが作った、我々が生きる現代社会の写し鏡のような「ショーとしての戦争」を戦っています。
 彼らは、戦闘機のパイロットとして、大空で美しく戦う事を選びます。常に死を意識し、味方であろうが敵であろうが、他者に敬意を払って全力で戦う。その生き様は、とても美しい。彼らは、大人になれないのではなく、大人になることを選ばなかった。大人になって、何かを解ったようなふりをして、将来に夢や希望を持って生きようと声高に叫ぶよりも、今目の前の現実を受け容れ、日々を精一杯生きる事の方が、美しい生き方だと考えているからです。

 ニートやフリーター、渋谷のセンター街で座り込む少女たち。親を殺した少年。彼らを、大人の目線で見下し、まるで病名のような名前を与えても、何の本質にも至りません。
 彼らが何故、そういう生き方を選ばざるを得なかったのか。彼らが生きなければならない現代と、これからの未来は、一体どのような世界なのか。今こそ、彼らの心の奥底から聞こえる声に耳を澄まし、何かを言ってあげるべきだと思うのです。

 この映画は、主人公のモノローグと共にクライマックスを迎えます。

 それでも……昨日と今日は違う
 今日と明日も きっと違うだろう
 いつも通る道でも 違うところを踏んで歩くことが出来る
 いつも通る道だからって 景色は同じじゃない
 それだけではいけないのか
 それだけのことだから いけないのか

 これが、この映画のテーマであり、若い人たちに伝えたいこと。
 たとえ、永遠に続く生を生きることになっても、昨日と今日は違う。木々のざわめきや、風のにお     い、隣にいる誰かのぬくもり。ささやかだけれど、確かに感じる事の出来る事を信じて生きてゆく──。そうやって世界を見れば、僕らが生きているこの世界は、そう捨てたものじゃない。同じ日々の繰り返しでも、見える風景は違う。その事を大事にして、過酷な現代を生きてゆこう。
 僕はこの映画を通して、今を生きる若者達に、声高に叫ぶ空虚な正義や、紋切り型の励ましではなく、静かだけれど確かな「真実の希望」を伝えたいのです。

 その為に私は、近年培ってきた演出手法を封じ、「イノセンス」とはまったく違うシナリオ・演出法をもって、この映画を、若い人へ向けたエンターテインメント作品として作ろうと決意を新たにしています。勿論、勝算はあります。

 この映画に、多くの方々が賛同し、共に汗を流して下さる事を願ってやみません。

【主要関係者のコメント】

<森 博嗣 原作「スカイ・クロラ」シリーズ著者>

 「スカイ・クロラ」のアニメ化のオファがあったのは、もう3年以上前のこと、2作目を書いた頃でした。僕はいつも「映像化できないものを書こう」と意識しています。そんな中でも、この「スカイ・クロラ」は、最も映像化が難しいだろう、と自分では考えていました。少々マイナなうえ、誤解されそうなテーマです。映像化すれば、まったく別のものになるのでは、という心配もありました。しかし、飛行機が綺麗な空を飛び回る映像だけでも是非見てみたいものだ、と思い、話を進めていただくことを決心しました。
その後に、監督が押井守氏だと聞いて、とても驚きました。同時に、「ああ、押井守ならば大丈夫だろう」と安心したしだいです。彼の作品をほとんど見てきましたし、特に「アヴァロン」の映像美には感銘を受け、「この人は美を知っている」と感じていたからです。
 今は一人の押井ファンとして、楽しみに完成を待ちたいと思います。

<奥田 誠治 日本テレビ放送網株式会社 映画事業部長>

押井守監督のアニメーション映画の映像的な質の高さ、内容の深さについては、世界的に高い評価があることは言うまでもありません。今回の自分の役割は、その押井監督に、より広い世代にアピールするエンターテインメント作品を作ってもらうこと。そして、それを興行的にも大成功に繋げることの2つだと思っています。おかげさまで、押井監督の新しい挑戦に共感して、日本を代表する多くのメディア関係企業が続々と製作委員会に集まってくれています。
委員会各社と協力し、2008年、世界中に大旋風を巻き起こすように、そして押井監督を「男」にするために全力を尽くします。

<石川 光久 株式会社プロダクションI.G 代表取締役社長>

押井監督とプロダクション I.Gが、アニメーション作品を作り続けてきて、今年で20年目になります。私たちは今、21年目の作品にあたる「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」を、新生I.G元年の作品と位置付け、最高のスタッフと環境で制作しています。テーマはひとつ。本作に関わって下さる全ての方々、そして来年、劇場に足を運んで下さる観客の皆さん一人ひとりがみんな、ハッピーになること。日本のアニメーションの歴史に、必ずその名を残すだろう作品が今、現場で生まれようとしています。ご期待ください。

<ウィリアム・アイアトン ワーナーエンターテイメントジャパン株式会社 代表取締役社長>

“Mamoru Oshiiが、プロダクション I.Gで制作するアニメーションを日本のワーナーが配給する”という出来事は、米国バーバンク本社でも大変な驚きと喜びで受け止められています。日本が世界に誇るクリエーターの最新作を配給できることは、我々に与えられたとても名誉ある使命であり、その期待に答えられるよう全力でこの「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」に取り組んで行きたいと思っております。

日本テレビ/プロダクション I.G 提携作品
ワーナー・ブラザース映画配給
「スカイ・クロラ The Sky Crawlers」
2008年全国ロードショー

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