『小林政広監督作品・海賊版BOOTLEG FILM』
74分/135㎜/シネマスコープ/B&W

☆1998年第11回東京国際映画祭”シネマプリズム”正式出品作品
☆1999年第52回カンヌ国際映画祭”ある視点”部門公式出品作品

<INTRODUCTION>
[死んだ女への出口なき愛…]
男の友情、嫉妬、そして裏切り…。
ひとりの女をめぐる男の生き様をおもしろ哀しく描いた、シュールかつ繊細な世紀
末ロードムービー。オリジナル脚本は本作品監督でもある小林政広が書き下ろし、
歯切れのよい会話劇と、心の繊細な動きを見事に捕らえ厚みのある人間ドラマに仕
上げています。

また定評あるストーリー展開とスピード感が、見るものを巻き込んでいく、映画的
かつ日本では数少ないエンターテインメント作品です。男二人組を演じるのは、個
性豊かな実力派の柄本明と、若い女性を中心に人気を集めている椎名桔平。

小松立夫演じる柄本は、不器用ながら人間味溢れる魅力と男の哀しさを、また会田
清司演じる椎名桔平は、一途でまじめなキャラクターをそれぞれ演じ、生き生きと
したコンビネーションの良さは、ほかの映画では見ることが出来ないふたりの新し
い一面を見せています。

この物語の舞台となったのは北海道増毛町。映画『駅−Station』の舞台や、名曲
『石狩挽歌』誕生の地であることでも有名です。無駄ひとつない景色と古き良き街
並みは、モノクロームの映像とダイナミックなシネマスコープの画面を際立たせて
います。音楽はフォーク界の巨匠、高田渡が担当。かつて小林監督がフォークシン
ガーとして活躍していた頃の師でもある高田の音楽は、小林の映像にあたたかさと
不思議な安らぎを与え、見る者の心に浸透していきます。

デビュー作『CLOSlNG TIME』に続き2作目となる本作品『海賊版=BOOTLEG FILM』は
前作同様、自ら製作をも務め、独自の映画表現にこだわった作品です。現在、日本
での映画製作に対するすべての既成概念を越えた…すなわち海賊版的作品とも言い
かえられます。映画への情熱を切ないまでにも感じることでしょう。

<STORY>
北の町を、一台の草が走り抜けて行く。
乗っているのは、小松立夫(柄本明)と会田清司(椎名桔平)のふたりである。
立夫は、リストラ寸前のヤクザ。清司は、ポリス。
この相反する職業のふたりは、親友同志でもある。

ふたりは、死んだ女、文子の葬式へと向かっている。
文子は、清司の元、妻であった。
そして、立夫にとっては、愛人であった。
ふたりは途中、文子の思い出話に花咲かせるが、それも束の間のこと…。
そんな時に出会ったのが、若いカップル、洋二(北村一輝)と順子(舞奉)であった。
ふたりは、友人の結婚式の帰り道で、立夫たちと偶然出会い、トランクに納められ
ていた死体(それは何と、立夫の弟なのだ!)を見てしまう。

車に死体を乗せていることを知らなかった清司は立夫を責め立てる。
焦る立夫は、とにかく洋二と順子を始末することを決める。
しかし、そう簡単に人を殺せるわけがない。清司は腰抜けのヤクザだと立夫をけな
す。その言葉に逆上した立夫は、一人殺すも、二人殺すも同じと意気揚々と順子に
銃を向け、順子と洋二を殺してしまう。

立夫は三人の死体を処分するべく車を走らせる。一方、清司は文子の実家へと向か
う。次第にふたりは、それぞれの文子への思いのなかで、すれちがい、嫉妬しあい、
死んだ女への愛の出口が見つからないまま、反発しあう。
そして、お互いの、文子への最後の愛を見せる。

<STAFF>
ブロデュース・脚本・監督:小林政広
音楽:高田渡
撮影監督:佐光朗
照明:木村匡博
録音:瀬谷満
ポストプロタクションプロデューサー・編集::金子尚樹
ラィンプロデューサー:佐々木正則
制作:山本充宏
助監督:女池充
アシスタントプロデューサー:岡村直子
制作協力:北海道増毛町

<CAST>
小松立夫:柄本明
順子:舞華
礼子:中野若菜
明子:高仁和絵
北川文子:環季
洋二:北村一輝
会田清司:椎名桔平