氷の接吻/eye of the beholder

1999年/アメリカ/スコープ・サイズ/ドルビーSRD/1時間47分
字幕:戸田奈津子/配給:日本ヘラルド映画

<INTRODUCTION>
 コニャックを片手にジタンのタバコをくゆらせるエレガントな女。胸には魚座の
ペンダントが揺れている。やがて服を脱ぎ、しなやかな肉体を露にした彼女は、何
の疑いも抱いてはいない目の前の男の命を容赦な<奪い去った。泣きしゃくりなが ら女は叫ぶ。「メリー・クリスマス、パパ!」  これまで数多くの映画で描かれてきた魔性の女たち。そのなかでもひときわミス テリアスな魅力を放つ冷酷なヒロインが誕生した。言い寄る男たちを次々にからめ とっては惨殺し、事もなげに次の街へと旅立っていく究極のファム・ファタール、 ジョアナ・エリス。彼女が求めるものは真実の愛、それとも血の匂い……。  ワシントンD.C.の英国大使館国際情報部で働く諜報部員”EYE<アイ>”は、或る
事件の捜査中、偶然ジョアナの犯行を目撃する。彼女との出会いに運命的なもの
を感じたEYEは、殺人を重ねながら全米を縦横に逃亡し続けるジョアナを追跡す
るうち、彼女の不思議な魅力の虜となり、彼女をひそかに危険から守る<守護大便>
となっていく。やがて、この決して顔を合わせることのない男と女のラブストー
リーは、最後の舞台、雪のアラスカで、思いもよらぬ結末を迎えることになる……。

 ジョアナを演じたのはピープル誌の”世界で最も美しい男女50人”に選ばれ、
全米NO.1ヒット作「評決のとき」や「ダブル・ジョパディー」といった話題作への
主演で注目度急上昇のアシュレイ・ジャット。自ら熱心な売り込みをかけてこの役
を獲得した彼女の圧倒的な悪女ぶりと、時にはノーメイクも辞さぬ熱演が目を奪う
。人知れずジョアナを守リ続けるEYEを透明感あふれる演技で演じるのは、「トレ
インスポッティング」「スター・ウォーズ エピソード1」で絶大な人気を誇るユ
アン・マクレガー。八年前に消えた娘へのEYEの思いが、この異色ラヴ&サスペン
ス・ストーリーに味わい深い陰影を与えている。
 「ビバリーヒルズ青春白書」「ラブ&デス」のジェイソン・プリーストリーは、
ジャンキーの青年ケアリー役で青春スターのイメージを見事に裏切ってみせる。ジ
ョアナのかつての師ブロート博士を演じるのは「1000日のアン」のベテラン演技派
ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド。ジョアナと婚約する盲目の富豪アレックスには「
愛がこわれるとき」「パトリオット・ゲーム」のパトリック・バージン。またカン
トリー/ウエスタン・シンガーのk.d.ラングがEYEの同僚ヒラリー役で出演している

 監督・脚本は、カンヌを始め各国映画祭で絶賛を浴びたオーストラリア映画のヒ
ット作「プリシラ」で知られるステファン・エリオット。本作ではラヴストーリー
の定石をはずれた斬新なストーリー・デリングと凝った映像表現を駆使し、シュー
ルなサスペンスに仕立ててみせた。
 撮影監督は「モントリオールのジーザス」などで知られるカナダ映画界の名手、
ギイ・デュフォー。プロダクション・テザインは「心の地図」のジャン=バプチス
ト・タール。衣装デザインはアカデミー衣装デザイン賞を受賞した「フリシラ」や
「バウンド」を手がけたリジー・ガーディナー。編集のスー・ブライニーは「プリ
シラ」に続いてこれが二度目のエリオット作品。音楽は「アベンジャーズ」で音楽
監修を務め、映画音楽作曲家としては本作が初の一本立ちとなるマウリス・ド・ヴ
リース。製作は「同居人 背中の微かな笑い声」”This ls My Father”のニコラ
ス・クラーモント他。製作総指揮は「ナインハーフ」「ネバー・エンディング・
ストーリー」のマーク・ダモン他が担当している。

<STORY>
−−−ワシントンD.C.−−−
 英国大使館国際調査部で働く英国諜報局の調査員”EYE<アイ>”(ユアン・マグレ
ガー)は、ヒューゴー局長の依頼で彼の息子ポールを調査していた。博物館で愛人
らしき女(アシュレイ・ジャット)と落ち合うポール。シャッターを切った瞬間、E
YEは一瞬、ファインダー越しに女と目が合ったような気がした。”私の写真も撮
ってよ”。EYEにしか見えない少女がねだる、少女は八年前に母親とともにEYEの元
を去っていった、彼の愛娘ルーシーの成長した姿らしい。

 女はポールの別宅に招き入れられる。金を受け取ると女は服を脱ぎ、ひざまづか
せたホールに目隠しをした。次の瞬間、EYEの目はモニターに釘づけになる。女は
手にしたナイフでホールの体を突き刺したのだ。何度も、激しく。そして死体の
傍らにうすくまった彼女は、泣きながら叫んだ”メリー・クリスマス、パパ!”
やがて女は死体を表にひきずり出し、自らのしなやかな肢体にまとわりついた返
り血を降りしきる雨で洗い流した……。

−−−ピッツバーク−−−
 女を追跡してピッツバーグ駅まで来たEYEは、事態を報告しようと本部のヒラリ
ー(k.d.ラング)に連絡をとる。だがその時、彼は博物館で撮った写真に、写るは
すのないルーシーの幻影か写っていることに気づく、顔を上げると女の隣にルー
シーかいる、「しゃべっちゃダメ。運命に従って」、EYEは通信を切り、女と同
じ列車に乗り込む。

−−−列車−−−
 宝石商ミッキー・アーゲイルは、車内で見かけた美しい女に声をかけた。女は、
彼の見せたオパールに心を奪われたようだ。ふたりはバスルームヘ姿を消す。宝石
商の遺体が見つかったのは、列車がニューヨークに着いた後である。

−−−ニューヨーク−−−
 EYEは女と同じ安ホテルに部屋をとり、監視を続けていた。ある夜、ニューヨー
ク市警の刑事が女の部屋に現れる。「ソルトレイクシティの事故現場から姿を消
したろ」。下着姿の女は刑事に”話し合い”をもちかける。笑みを浮かべ女の上
に体をかがめる刑事。その腰が軽くなる。女の手に彼の銃が握られている。

−−−空港−−−
 盲目の紳士アレックス・レナード(パトリック・バージン)の釣銭をごまかそう
としたウェイターのたくらみは、女のひと声で失敗に終わる。女は自己紹介し、
紳士の手を引いて同じ便に乗る。

−−−サンフランシスコ−−−
 女は富豪のアレックスと親しく交わるようになる。「妬いてるのね」。ルーシー
がEYEの心を見透かす。
 ホテルで採取した女の陰毛のDNA鑑定結果がヒラリーから送られてくる。彼女の
身元と本名が判明した、ジョアナ・エリス。EYEは彼女の過去を知るため、ポスト
ンヘ向かう。

−−−機上−−−
 EYEのモニターの中で、ジョアナがアレックスに父親の思い出を語っている。
9歳のクリスマスに父親に捨てられた辛い思い出を…。アレックスに抱かれて泣
きしゃくるジョアナ。EYEの胸が痛む。

−−−ボストン−−−
 EYEは孤児の指導をしているブロート博士(ジュヌヴィエーヴ・ピジョルド)を訪
ねる。彼女はかつて保護観察局長時代に更生プログラムに携わっていた。その時
の教え子がジョアナである。些細な罪で拘置され、すさんでいた彼女に生きる術
を教え、立ち直らせたのが博士だったのだ。

−−−再びサンフランシスコ−−−
 ジョアナがアレックスと結婚すると知ったEYEは、ふたりの乗った車に銃口を向
けた。事故を起こした車に駆け寄ったEYEが見たものは、アレックスの亡骸に手を
差し伸べて泣き叫ぶジョアナの悲痛な姿だった。やがてジョアナはひっそりと街
を出る。

−−−コロラド−−−
 砂漠のハイウェイでジョアナの車がガス欠を起こす。助けたのはジャンキーの
若者ゲアリー(ジェイソン・プリーストリー)。彼の下心は明らかだった。その夜
ジョアナとロッジに泊まった彼は、拒むジョアナを殴りつけ気絶させる。その時
、EYEがドアをノックした。ゲアリーを倒したEYEは、うわごとをつぶやくジョア
ナに「決して見捨てない」と誓う。だが翌朝、彼女はEYEが目を離した隙に旅立
ってしまう。ジョアナの行方を見失い、絶望にくれるEYE。その前にルーシーが
現れる。「答えは世界の果てに埋まっている…探し続けて。彼女が見つかれば
私も見つかるわ」。

−−−シカゴ−−−
 ヒラリーの協力で、ジョアナの入院先が判明する。EYEはベッドで眠る彼女の
指にそっと指輪をはめて去る。やがて流産したことが判明したジョアナは、深
い傷を心に負って退院する。街角でジョアナは警官に呼び止められる。彼女が
連行されようとした瞬間、物陰からEYEが発砲した。混乱に乗じて逃れるジョ
アナ。

−−−アラスカ−−−
 ジョアナの働く食堂のテーブルにつくEYE。ルーシーの言葉に従ってようやく
彼女の行方をつきとめたのだ。たが彼女の身には危険が迫っていた。ルーシー
がささやく。「警察が追ってきたわ。何とかして。パパはあの人の守護大使で
しょ?」。EYEは遂にジョアナに直接話しかける決意をする……。

<STAFF>
監督・脚本:ステファン・エリオット
製作:ニコラス・クラーモント トニー・スミス
製作総指揮:ヒラリー・ショー マーク・ダモン
共同製作:アル・クラーク
製作担当:マノン・ボーギー
撮影:ギイ・デュフォー
プロダクション・デザイン:ジャン=バプチスト・タール
編集:スー・ブライニー
衣裳:リジー・ガーディナー
音楽:マウリス・ド・ヴリース

<CAST>
アイ:ユアン・マクレガー
ジョアナ:アシュレイ・ジャッド
アレックス:パトリック・バージン
ヒラリー:k.d.ラング
ケアリー:ジェイソン・プリーストリー
プロート博士:ジュヌヴィエーヴ・ヒジョル