めちゃくちゃ面白くて、鳥肌の立つ感動。
これがロック版フルモンティだ!

『スティル・クレイジー/Still Crazy』
1998年/コロンビア映画/ソニー・ピクチャーズエンターテインメント配給
ビスタ/SDD、SRD、ドルビーSR/字幕翻訳:石田康子/1時間35分

・2000年お正月第3弾、シャンテ・シネにて公開

<INTRODUCTION>
続々と話題作をくり出す活気満々のイギリス映画界から、またまた新しいコメディ
が発信されました。グラムロックとロンドンブーツ全盛の時代から、以後まったく
音信不通だった連中が20年ぶりに再会、再びステージに上がるまでの過程を、辛辣
に笑いのめしつつ温かいまなざしで追ったこの映画はロック版『フル・モンティ』
そのもの。

重苦しい挫折感の底にどっこい埋もれてた“まだやってやるぜ精神…”“体は中年
でも少年の心を持った”男たちのなりふりかまわぬ奮闘ぶりは、あらゆる世代の共
感を呼ぶことでしょう。ぶざまだったり悲惨だったりもする現実をしっかり見すえ
た上で貫かれている前向きなメッセージは、70年代風ロックにのって流れてきます
が2000年を前にしたわれわれを元気にしてくれます。

監督は『陪審員』やティナ・ターナー、ショセフィン・ベイカーの伝記映画など、
音楽ものには定評のあるブライアン・ギブソン。脚本を書いたのは、イギリスきっ
てのコメディライター、デイック・クレメント&イアン・ラ・フレネ。テレビで数
々のすぐれたコメディを生んできたこのコンビは、アラン・パー力ー監督の『ザ・
コミットメンツ』で、すでに音楽業界の内幕ものを扱っています。美術は『フル・
モンティ』のマックス・ゴッドリープ、編集は『ポストマン』のピーター・ボイル、
衣装は『世にも憂麓なハムレットたち』のキャロライン・ハリス。

主人公はロックグループ、そしてロック・ミュージックそのものだ。70年代ロック
に捧げられたオマージュの数々もファンには見逃せないが、ここに使われている曲
はすべて“ストレンジ・フルーツ”のオリジナル。イギリス音楽シーンの一流メン
バーたちが結集し、郷愁を感じさせる新しいロックをつくりあげまし。核となるナ
ンバーを作曲したのは(クラッシュの)ミック・ジョーンズ、作詞は(スクィーズの)
クリス・ディフォード。プロデュースは、エルビス・コステロ、デイビッド・ボウ
イ等々過去20年を代表するアーティストの作品を手がけてきた神様的コンビ、クラ
イブ・ランガーとアラン・ウィンスタンリー、ランガーは映画全体の音楽も担当し
ている。演奏には一流のセッション・アーティストを集めているが、リードボーカ
ル、レイ役のビル・ナイ、べ一スギタリスト、レス役のジミー・ネイルが自ら歌っ
ています。また、元スパンドー・バレエのメンバーで俳優に転じたゲーリー・ケン
プがアドバイザーとして参加、キャストにロックスターのしぐさや癖などをコーチ
しました。
イギリス映画の大きな魅力は俳優の多彩さ。この映画にもベテラン俳優が味のある
顔をそろえています。『クライング・ゲーム』などニール・ジョーダン監督作品の
常連、スティーブン・レイ、イギリス随一のコミック芸人であるビル・コノリー、
『エビータ』のジミー・ネイル、『秘密と嘘』のティモシー・スポール、『フェア
リーテイル』のビル・ナイ、『鯨の中のヨナ』のジュリエット・オーブリー、ス
ウェーデンのトップ女優、ヘレナ・ベルクストロームらが主演。『キリング・
フィールド』の脚本でアカデミー賞候補となったプルース・ロビンソンが、伝説の
ギターの名手、ブライアンに扮し久々にスクリーンに登場しています。

<STORY>
1977年、いまでは伝説となっているウィズベックの野外ロック・コンサートで、ス
トレンジ・フルーツは燃えつきた。70年代初めに一世を風靡したものの、花形だっ
たボーカルのキースがロッカーお定まりの酒とドラッグで命を落とし、その兄でギ
ターの天才とうたわれたブライアンも薬づけ。キースの後釜にレイが入ってからは
がたがたになり、時代の風に欧き払われるように解散したのだ。
あれから20年、キーボード奏者だったトニー(スティーブン・レイ)は、イビサ島て
しがないコンドームのセールスマンをしている。ある日、ウィズベックのプロモー
ターだった人物の息子という男に声をかけられ、再結成してウィズベック20周年記
念フェスティバルに出てみないかと誘われる。トニーはバンドのマネージャーをし
ていたカレン(ジュリエット・オープリー)を訪ね、いっしょに昔の仲間を勧誘して
くれないかと頼む。かつてブライアンを愛していたカレンは人並みに結婚、出産、
離婚を経験、いまは退屈なホテルづとめの毎日。トニーの出現で一大決心をして、
ふたりで仲間探しを始める。べースギターのレス(ジミー・ネイル)は、いまは堅気
の屋根職人。当時からの妻との仲も続いていて、まずは平穏な毎日を送っている。
ドラマーのビーニー(ティモシー・スポール)はトレイラー住まい、いまも税務署に
追われるやばい生活を送っている。最後の2年間ボーカルだったレイ(ビル・ナイ)
だけは、何とか音楽業界に引っかかっている。しかしスウェーデン美人のアスト
リッド(ヘレナ・ベルクストローム)と豪邸暮しはしていても実は文無しのアル中、
身も心もぼろぼろだ。何とかこれだけのメンバーが集まったものの、カリスマ的な
リードギタリストのブライアンは、死んだという噂。カレンが穴埋めに若いギタリ
スト、ルーク(ハンス・マシソン)を連れてきて、ローディだったヒューイ(ビ
リー・コノリー)も一駆けつける。一同は再結成在めざし、カレンの娘クレア(レ
イチェル・スターリング)も伴って、まずはヨーロッバ・ツアーに出発!
ツアーといっても田舎のドサ回りだ。音楽的な勘もとり戻せず。女の子たちがなび
くのは若いルークばかり。メンバーはすっかり自信を失い、エゴを傷つけられる。
おまけに昔の恨みつらみだけはすぐによみがえってきて、いまにも噴出しかねない
勢い。とりわけレイは、キースとブライアンの音楽をなつかしむメンバーたちに、
かっこばかりつけやがってと敬遠され、ひとり浮いてる。それでも何とかツアーは
続き、ステージにも慣れてきたある日、インタビューで「ブライアンとキースのい
ないおれたちはただの抜け殻」といったビーノの発言に、必死でがんばってきたレ
イがキれ、去ってしまう。
これまでの努力も水の泡。ライブもやっと盛りあがるようになり、復刻版のCDも出
たのに…キースの墓参りをしたカレンは、ブライアンの花が捧げられているのに気
づく。彼は生きていた。ローディのヒューイは、精神を病んでいたブライアンをか
ばって隠していたのだ。レイを説得できるのはブライアンしかいない。カレンはト
ニーと、ブライアンに会いにいく。そこには少ししわが増えたけれど、昔のままの
繊細さを残したブライアン(ブルース・ロビンソン)がいた…
さてウィズベック’98に、メンバー全員が集結できるのか? ストレンジ・フルー
ツは生まれ変われるのか? 昔のようにロックできるのか?

<STAFF>
監督:ブライアン・ギブソン
脚本・製作総指揮:ディック・クレメント、イアン・ラ・フレネ
撮影:アシュリー・ロー
美術:マックス・ゴットリーブ
編集:ピーター・ボイル
衣装:キャロライン・ハリス

<CAST>
レイ:ビル・ナイ
レス:ジミー・ネイル
ビーノ:ティモシー・スポール
ルーク:ハンス・マシソン
トニー:スティーブン・レイ
ヒューイ:ビリー・コノリー
カレン:ジュリエット・オーブリー
アストリッド:ヘレナ・ベルクストローム
ブライアン:ブルース・ロビンソン