3月23日(土)より新宿K’s cinemaにて公開の、ベトナムの現在地を描き出す珠玉の2本『漂うがごとく』と『ベトナムを懐う』。今回は『漂うがごとく』の予告編と2作の場面写真が到着しました。
ベトナム映画市場は近年アジアのなかでも目を見張る急成長を遂げており、ハリウッド映画の他、国内産ジャンルムービーがどんどんクオリティを上げ、日本では2017年に公開された『草原に黄色い花を見つける』のような、海外で研鑽を積んだクリエイターがベトナムに戻り叙情的なドラマをヒットさせる例が増えてきている。今回予告が解禁された『漂うがごとく』は、社会主義国家ベトナムにおいて珍しい女性視点の“性”を美しい映像で描いた異色作。第66回ヴェネツィア国際映画祭で国際批評家賞を受賞するなど、海外でも評価が高い作品です。

今回解禁された予告編は主人公・ズエンとハイの結婚式の賑やかさから一転、親友の女性との物憂げな会話から始まる。夫との仲睦まじさを映しながらも、ある男との出会いを引き金にズエンの女性としての秘められた一面が花開いていく表情の変化が感じられる。ラストは、ポスタービジュアルにも使用されたよもぎ蒸しの布の中でズエンを見つめる親友の視線が印象的なシーンで締めくくられる。
17歳の時にトラン・アン・ユン監督「夏至」(2000)に出演し女優デビューしたドー・ハイ・イエンが、初々しい新妻から、情念を身にまとった女に徐々に変わっていく姿を見事に演じ、湿度の高い亜熱帯の空気の中で満たされない想いを抱えながら彷徨う現代ベトナム人達の姿が描かれる。

場面写真ではズエンと彼女の変化のきっかけとなる男・トーの悲しげに歪んだ表情や、ズエンの夫・ハイが大混雑の街中を運転するカットが解禁。
ズエンの女に目覚めたエロティックな表情も見る事ができる。

同時公開される『ベトナムを懐う』は祖国を離れ、ニューヨークで暮らす3世代のベトナム人たちを描いた戯曲が原作。長く戦争が続いたベトナムの歴史を背負いながら、異国で故郷をおもう各世代の心情を丁寧に描いている。監督は「サニー」ベトナムリメイク版『輝ける日々に』のグエン・クアン・ズン。世代や文化のギャップが生むユーモラスな衝突から、息子とその父親、そして孫娘が対峙することで、ベトナム移民の哀しい背景を描き出した一作。場面写真では、回想シーンで登場するオリエンタルな結婚式のカットやNYのグラフィティの前で故郷を懐う老いた主人公たちの姿が見られる。

『漂うがごとく』(原題:Choi voi/英題:Adrift)監督:ブイ・タク・チュエン 脚本:ファン・ダン・ジー 撮影:リー・タイ・ズン 音楽:ホアン・ゴク・ダイ
出演:ドー・ハイ・イエン リン・ダン・ファム ジョニー・グエン グエン・ズイ・コア 【2009年/ベトナム/106分】©Vietnam Feature Film Studio1,Acrobates Film
『ベトナムを懐う』(原題:Dạ cổ hoài lang/英題:Hello Vietnam)監督:グエン・クアン・ズン 出演:ホアイ・リン、チー・タイ【2017年/ベトナム/88分】 ©HKFilm