中国では、日本の小説の映画化が盛んで、西村寿行原作「君よ憤怒の河を渉れ」の映画化であるジョン・ウー監督の『マンハント』、夢枕獏原作「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」の映画化となったチェン・カイコー監督の『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』、そして東野圭吾原作「ナミヤ雑貨店の奇蹟」の映画化となる『ナミヤ雑貨店の奇蹟-再生-』と、2017-2018年にかけて立て続けに公開されています。

 その中でも、新本格推理の巨匠と呼ばれ、『探偵ミタライの事件簿 星籠の海』(2016)で映画化された「御手洗潔」シリーズで有名な島田荘司が、1985年に発表して直木賞候補にもなった青春ミステリー小説「夏、19歳の肖像」は、中国で日本小説の映画化の先陣を切った作品であります。

 中国での製作ながら、スタッフには、『光にふれる』(12)『共犯』(14)で注目された台湾の俊英チャン・ロンジー監督、「シャーロック」シリーズの撮影を担当する英国のスティーヴ・ロウス、音楽を『マッハ!弐』(08)のタイのテルサック・ヤンパンと、国際色豊かなスタッフ陣に、主演を韓国の人気ユニットEXOの元メンバーで『レイルロード・タイガー』のファン・ズータオ(タオ)が演じるなど、日本の原作小説が海外で映画化されるとどんな風に映像化されるか興味が大きいところですが、このたび、本作品を見ていただいた日本の推理ミステリー作家の第一人者から、本作品を鑑賞いただいた感想コメントをいただきました。

なお、8月25日のシネマート新宿での初日(午前9時30分・第一回上映後)には、原作者の島田荘司氏の登壇挨拶も開催されます。


1985年発表の島田荘司の名品を21世紀のいま映像化するにあたっての、制作陣の創意工夫には見るべきものがある。映画オリジナルの、非常に魅力的な謎を新たに組み込んで物語を膨らませながら、なおかつ決して原作の骨格を歪めたり味わいを損ねたりはしていない。とても素敵な達成だと思う。
                                     綾辻行人(ミステリー作家)

子供と大人の狭間でもがく青年が経験する、瑞々しい煌めきに溢れたひと夏の思い出。私たちが忘れてしまった淡い想いが、慟哭のミステリーとともに蘇ってくる。
                                     知念実希人(小説家、医師)

【STORY】
大学の夏休み。19歳のカン・チャオはバイク事故で脚を骨折して入院。女友達のジュー・リーと、彼女への秘めた恋心を抱えるジャオ・イーが面倒を見てくれることに。退屈な入院生活のなかで、カンは病室から見える邸宅の二階に佇む女性に一目ぼれをし、想いを寄せるようになっていく。そんなある夜、彼女が父親らしき男性と口論の末、ナイフを手に飛びかかる様子を目撃してしまう。男は倒れ、やがて隣の工事現場に現れた人影は、そこに“何か”を埋めていた。真実を確かめようと動き出したカンの携帯に届く、謎めいたメッセージ。自分を監視しているのは誰なのか?事件の泥沼から美しいあの人を救い出したいという気持ちに衝き動かされ、カンは彼女――シア・インインに近づくのだが…。

【STAFF】
監督:チャン・ロンジー『共犯』『光にふれる』  原作:島田荘司(「夏、19歳の肖像」文春文庫刊)
【CAST】
出演:ファン・ズータオ『レイルロード・タイガー』、ヤン・ツァイユー『芳華 Youth』
カルビン・トゥ、リー・モン『上海キング』、スタンリー・フォン、チュウ・チーイン
上映時間105分/2017年/中国映画/原題:夏天十九岁的肖像 EDGE OF INNOCENCE
配給:マクザム  配給協力・宣伝:フリーマン・オフィス  www.maxam.jp/19/
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8月25日(土)よりシネマート新宿ほか全国順次ロードショー