異才・柴田剛が放つエクスペリメンタル・ロードムービー「 ギ・あいうえおス」
音楽を演奏するバンドのように、映画を制作していく「ギ・あいうえおス」。
彼らが夏の夕暮れに遭遇した“浮遊する謎の発光体”とは―
『おそいひと』(2004年)などで注目を集め、前作『ギ・あいうえおス –ずばぬけたかえうた-』(2010年)で、その独特の世界観により多くの観客に衝撃を与えた柴田剛。映画制作クルーが映画を制作していく過程を、音楽を演奏するバンドと同等のものとして描く柴田剛のアイデアによって生まれた「ギ・あいうえおス」。作品の制作者(スタッフ)=登場人物(キャスト)であり、登場人物たちが語る内容を含む、映像上に記憶されたことは、全てその場で起きたことでもある。これはドキュメンタリーのように撮影され、フィクションとして編集をおこなった実験的ロードムービーである。
「ギ・あいうえおスは、おじさんたちの『スタンド・バイ・ミー』。『スタンド・バイ・ミー』では死体を探しに行ったが、「Gui」はUFOを探しに行く!」と、柴田監督が大まかなストーリーラインを設定し、「Gui」のメンバーを山口県に招集した。リサーチの過程で、次々と本作に強い影響を与える人物たちに巡り合っていく。そこで何が起きるのか、一体何が映画として残るのか、誰もわからないまま「己の玉を磨く」ために旅はスタートする―
自由を模索し、寄り道が出来る才能、柴田剛
本作は山口情報芸術センター[YCAM]の映画制作プロジェクト「YCAM FILM FACTORY」の一環で制作された初の長編映画。柴田剛はその第1弾招聘作家として、約1年間に渡り断続的に滞在、本作リサーチと撮影、編集、仕上げ作業をおこなった。<自由な映画制作を模索する>をテーマに掲げた本プロジェクトだが、「自由を模索するのは本当はとても難しいこと。それには色々と寄り道が必要になる。寄り道する才能、言い換れば「遊び」ができる作家、それは柴田剛だろうと思いついてから迷いはなかった」とYCAMキュレーター/本作プロデューサーの杉原永純氏は柴田監督の招聘の理由を語る。また「この映画には、不思議なことや、特徴的な人物が出てくるが、それらは実際にカメラの前で起きていること。特別な仕掛けはこの映画にはない、ただ「遊び」に、たまたまその場に出向いただけである。信じられないかもしれないけど」とも語っており、一体「ギ・あいうえおス」は何に遭遇したのか? 正に第六感を信じて映画制作に挑む柴田剛にしか作れない、本作の内容に期待が高まるところだ。
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監督/柴田剛(しばた・ごう)
1975年神奈川県生まれ。映画監督。代表作に、処女長編『NN-891102』(1999年)、『おそいひと』(2004年/第5回東京フィルメックスコンペティション部門出品)、『堀川中立売』(2009年/『映画芸術』誌 2010年邦画ベストテン第2位)、『ギ・あいうえおス -ずばぬけたかえうた-』(2010年/第3回恵比寿映像祭、Hors Pistes 2013、PUNTO DE VISTA 国際ドキュメンタリー映画祭コンペティション部門出品)
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監督のコメント
いま、みんなはどうやって映画を撮っているんだろう?
自分は、子供の頃から続けていることをそのままシンプルに提示した結果、こういう映画になった。
子供は、作り始める前にオチをつけたがり、それにむかって突き進んでいく(そのオチは「いきなり死ぬ」とか、強烈なものばかり……生命力が溢れている証なんだろう)。もし仮に、子供が映画を手にしてギを作ったらこうはいかないはずだ。子供の頃から続けていることのはずなのに、実に不思議だ。
今回は“浮遊する謎の発光体”を追いかける旅を記録撮影した。「夏時間の大人たち」とある人は言った。
ただただボーっと空を見上げながら各地を移動していくと、決まってその“発光体”は夕方の空に現れた。その日1日の撮影がおわりかける一瞬に。
贅沢な数日間の撮影の旅だった。これが映画というものだと噛み締めた。
映画を明るく照らし出す光源は、なにも映写機やプロジェクターの玉だけではないのだ!
見上げろ!なにか写ってるぞ自分の目玉に!