この度、『沈黙−サイレンス−』のマーティン・スコセッシ監督が、世界的に顕著な業績を上げた芸術家に贈られる高松宮殿下記念世界文化賞を演劇・映像部門で受賞したことが発表されました。

高松宮殿下記念世界文化賞とは、日本美術協会によって1988年に創設された賞で、絵画、彫刻、建築、音楽、演劇・映像の各分野で、世界的に業績を残している芸術家に毎年授与される賞。過去にはフランシス・フォード・コッポラ監督、アッバス・キアロスタミ監督、ジャン=リュック・ゴダール監督、黒澤明監督などが受賞しています。第28回となる同賞では、絵画部門=シンディ・シャーマン、彫刻部門:アネット・メサジェ、建築=パウロ・メンデス・ダ・ホッシャ、音楽部門:ギドン・クレーメルが選出されており、授賞式典は10月18日(火)に東京・元赤坂の明治記念館で行われます。

マーティン・スコセッシ監督は、1968年『ドアをノックするのは誰?』で長編監督デビュー。1976年『タクシードライバー』でカンヌ国際映画祭パルム・ドールを受賞し、アメリカ映画界を牽引する存在となります。アカデミー賞では『ギャング・オブ・ニューヨーク』や『アビエイター』などで監督賞にノミネート。6度目のノミネートとなる『ディパーテッド』で第79回アカデミー賞監督賞・作品賞を受賞しています。近年では、映画の修復・保存活動を推進する「ザ・フィルム・ファンデーション」を設立。古いフィルムの保存や修復にも力を入れており、数々のヒット作を生み出してきた監督・プロデュースの実力だけではなく、その幅広い活動や功績が国際的に高く評価されています。

そんなスコセッシ監督の最新作として2017年に日本公開を控えているのが、遠藤周作の傑作小説「沈黙」(新潮文庫刊)を原作とした『沈黙−サイレンス−』。日本文化に造詣が深く、敬虔なカトリック信者でもあるスコセッシ監督が28年越しで実現した念願の企画で、江戸初期、激しいキリシタン弾圧の中で棄教したとされる師の真実を確かめるために日本にたどり着いた宣教師の目に映った日本を、壮大な映像で描いた歴史大作です。出演はアンドリュー・ガーフィールド(『アメイジング・スパイダーマン』)、リーアム・ニーソン(『シンドラーのリスト』)、アダム・ドライバー(『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』)、日本からも窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形など実力派俳優が多数出演しております。今年度の賞レースにおける有力作との呼び声も高い本作。今回の受賞は9月29日に迎える遠藤周作没後20年に花を添えるものとなりました。

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執筆者

Yasuhiro Togawa