妻(おんな)から妻(つま)へ —— 。
黒谷友香を主演に迎え、新たな《極妻》伝説がここに始まる。

あの《極妻》が帰ってきた。
家田荘子渾身のルポルタージュ「極道の妻(つま)たち」を原作とし、映画『極道の妻(おんな)􀀁たち』は製作された。記念すべき第1作の主演は岩下志麻。五社英雄が監督を務め、1986年に公開されるや爆発的なヒットを記録。大きな話題を呼び、翌1987年には『極道の妻たちⅡ』1989年に『極道の妻たち 三代目姐』など次々と続編が製作されることになった。岩下志麻、十朱幸代、三田佳子、高島礼子といった大女優たちが主役を演じ、不動の人気シリーズに成長。ここまでのシリーズ累計製作本数、実に15本。累計観客動員数は670万人を突破。ビデオ・DVDなどのソフト販売本数も合計70万枚を突破している。過去最終作が作られた2005年から8年。満を持して新たな《極妻》伝説がここに始まる。

本作のタイトルの「妻」はこれまでの映画作品の「おんな」ではなく、原作通り「つま」と読む。ここからも家田荘子による原作への回帰を志していることが判る。描かれる「極道の妻」たちは、たとえ棘の道を歩むことになろうとも危険と隣り合わせの男たちから離れない。その理由はただ「夫を愛している」からだ。ほかの女と違うのはその夫が極道であることだけ。《極妻》もまた普通の女なのだ。

この物語を体現する主役・鬼場琴音を演じるのは黒谷友香。上品な容貌の下から《覚悟》がキラッと光り、ハマり役となった。つかこうへいの舞台「蒲田行進曲」などで培った堂々たる迫力が、役と共鳴した結果だろう。琴音に相対するもう一人の“極道の妻”加藤アザミに原田夏希。NHKの連続テレビ小説「わかば」の瑞々しさも印象的な原田が、愛を貫く凄絶な生き方を体当たりで演じている。琴音の夫・鬼場満に長嶋一茂。主人公が惚れぬく芯の通った強さを持つ男を、自然に、かつ圧倒的な存在感で演じている。また、大杉漣、石橋蓮司、今井雅之、袴田吉彦らの名優たちがいぶし銀のような演技で作品の風格を支えている。

本作の監督は『借王<シャッキング>Ⅱ 運命の報酬』『君が踊る、夏』などの話題作を手掛け、社会派の題材に定評のある香月秀之。脚本は幅広いジャンルで活躍する米村正二が担当した。

堂々として揺るがず、しかし同時に切ない女たちの生き方が、今スクリーンを熱く焦がす

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執筆者

Yasuhiro Togawa